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経済的価値と社会価値をどう両立させるか――長期的な観点で経営計画を再考する

コーポレートイノベーションコンサルティング部 プリンシパル 伊吹 英子、上級コンサルタント 羽生 竜平

2019/04/17

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企業経営において世界的な社会課題の解決やESG(環境、社会、ガバナンス)への対応が重視されるようになっていますが、従来の中期経営計画では、現業の成長と社会価値の実現がうまく結びつかないと感じる企業も多いようです。サステナビリティと経営管理の専門家である野村総合研究所(NRI)の伊吹英子と羽生竜平に、サステナブル(持続的)な視点をどのように経営に取り込むかについて聞きました。

従来型の中期経営計画では環境変化に対応できない

サステナブル経営を目指す際に、従来の中期経営計画のどこに課題があるのでしょうか。

現在、多くの企業における中期経営計画は、財務指標を中心に構成されています。経営理念などで社会価値が謳われていても、それが実際の経営計画にはうまく組み込まれず、日々の業務は財務的な管理サイクルを中心に回るという乖離が起こりやすくなっています。また、従来型の中期経営計画は3年程度のスパンを設定するケースが多く、企業がおかれた状況によっては環境変化にうまく対応できないこともあります。一例として、自動運転を取り上げてみましょう。公道での自動運転が本格化して2年近くになりますが、実用化にはもう少し時間が必要です。技術進化が速い分野とはいえ、2~3年では財務的な成果を出すことは難しいテーマなのです。もう少し長期的なスパンで考えないと、新しい技術を事業化したり、既存事業にうまく取り込むことは難しいのです。

他方で、長期で経営計画を考える場合、財務面のみでの目標設定には限界があります。変化が激しく不確実な環境下では、数値を正しく予測しきれないからです。そこで、社会価値のような視点も入れて、長期ビジョンや中期経営計画などを見直そうとする企業が増えています。

財務価値と社会価値を結び付ける戦略ストーリー

実際の見直し作業はどのように進めればよいのでしょうか。

私たちは通常、「出発点の明確化」「将来課題の先取り」「将来への道筋づくり」という3つのステップで検討していきます。まず、「自分たちは何者か」に立ち返るために経営の基本観を再確認・共有し、自社の歴史を振り返り、そこから何を変えるか、何を変えてはいけないかという「不易流行」を談義し、経営陣が大事にしている理念の洗い出しをするとともに、自社の抱えている課題も明らかにします。

次に、未来に関するディスカッションをします。10~15年スパンの将来を想定して事業展開の可能性について議論することもあります。その際には自らが属していると規定した業界だけではなく、広い視点を持つことが重要です。たとえば、スーパーマーケットが「中食」に力点を置くと、同業のスーパーだけでなく、町中の総菜屋や弁当屋と競合するようになります。事業領域を変えると、競合やパートナーの顔ぶれが変わってしまうのです。見るべき範囲、知らなくてはならない知識・ルールも変わります。時間軸と自らの強みや企業の体力を考慮したうえで、何をどこまでどう変えるかについて、徹底的に議論を重ねます。

その後、長期ビジョンのシナリオや骨格を策定します。経済的価値と社会価値の両面で成長や持続性につながるストーリーを作るために、自社にとって本当に重要な社会課題を掘り下げて議論し、財務面と非財務面の関係やバランスを検討する必要があります。特に、社会課題は自社単独では解決せず、時には競合やNPO/NGO、政府などとの連携が必要になるかもしれません。自分たちが何をするかだけでなく、周囲のステークホルダーも含めて考えることで多様な成長ストーリーを考え出せるのです。ここで明確なストーリーを描けると、ステークホルダーとのコミュニケーションや協業が容易になり、顧客の共感や支持も得やすくなります。

次世代経営層を巻き込み、思考プロセスを転換させる

一連のステップで注意すべきことはありますか。

まず、こうした議論には現在の役員だけではなく、次世代の経営を担う層も巻き込むことが重要です。どのような思いや背景でその長期ビジョンを構成しているか理解でき、そこで検討された内容に基づきストーリー性のある中期計画を策定することができます。それが現場の活動計画に落ちていくことで、その後の実行力・実現性に差が出てくるのです。

また、先の第2ステップでは、未来を描く作業には戸惑うかもしれません。未来予測と捉えると、統計書を集めて、確からしさの議論に終始しがちです。しかし、未来とは本来、自分たちで形作るものです。しかし、どうしても拠り所となるものがほしい場合には、代表的なものとして国連のSDGs(2030年までの国際目標)が挙げられます。SDGsは、議論の前提をそろえる共通言語になるほか、視野や視座を変え、思考の転換を促すツールにもなります。既存の技術や経営資源でどのような事業を展開できるかという発想だけではなく、目指すべき未来や社会課題に対して、自社の技術や製品がどのように寄与できるのかといったバックキャスティングの発想するきっかけになります。

長期的視点で自社が目指す方向性を再定義し、従来と異なる思考プロセスで財務面と非財務面を結びつけたストーリー性の高い戦略を構築する。企業の持続的成長につながる活動をNRIも支えていきたいと考えています。

左からNRIの羽生竜平と伊吹英子

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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