2019/04/24
お客さま一人ひとりのサービス利用状況を集約・分析することで、ニーズに合った接客・提案をタイムリーに行うことができる昭和シェル石油の「Shell CONNECT」。デジタル技術の活用で、お客さまとサービスステーション(SS)の新たな信頼関係構築に挑戦する昭和シェル石油、野村総合研究所(NRI)、ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン(Brierley Japan)、の担当者に聞きました。
もう一度、このサービスステーションを利用したいと思える顧客体験を
これまでSSは、クレジットカードやポイントカードを通じた会員化を基本に、顧客との関係構築を行ってきました。しかし、POSデータで購買履歴は把握できるものの、お客さまとのコミュニケーション内容や履歴が蓄積できていなかったため、中長期的な信頼関係を築くには限界がありました。また昨今のSSの減少により、1店舗に年間数万人のお客さまが来店されるようになり、お客さまに対して何度も同じ提案をしてしまうなど、スタッフがお客さま一人ひとりの顔や名前を把握して、最適な接客を行うことが難しくなっています。
こうした課題の解決に向け、購買、接客、車両整備データを集約・分析し、スマートフォンアプリや店頭接客タブレットを通じてタイムリーなコミュニケーションを行う、新たなデジタルマーケティング基盤を整備することにしました。昭和シェルSSへの来店前、来店時、来店後のカスタマージャーニー全体を通じてお客さまとの接点を強化し、揺るぎない信頼関係の構築を目指したのです。
こうして誕生したのが、Shell CONNECT(シェルコネクト)です。
システムを作るのではなくマインドを変革する
NRIのシステムコンサルティングチームが、ビジネスサイドに立ち、Shell CONNECTの企画から現場展開まで、ビジネスITの実現をトータルサポート。そして、 CRM/ロイヤリティマーケティングの専門家であるNRIグループのBrierley Japanが、CRMシナリオの設計から特約店・SSへの落とし込み、そしてPDCAの実行、社内外へのプロモーションを支援することで、お客さまの来店時と来店前後におけるOne to Oneコミュニケーションの実現に貢献しました。
「コモディティ化し、価格競争になりがちなガソリンという商品に対して、接客、コミュニケーションといった、顧客体験で差をつける新しい取り組みでした。単なるシステム作りではなく、SSや特約店、昭和シェル石油の支店、本社というさまざまなレイヤーの人たちに、Shell CONNECTの意義を理解してもらい、マインドを変えていただくことが必要でした。理論だけでは達成困難な課題に対して、NRIさん、Brierley Japanさんには、専門性からの支援や、われわれが普段SSと接している感覚などを取り入れながら進めていただきました」と、プロジェクトを主導してきた昭和シェル石油の大村雄一朗さんは振り返ります。
お客さまへの最適な声がけで質の高い接客を実現
来店したお客さまがスマートフォンアプリ「Shell Pass」でチェックインすると、SS内のタブレット端末、「ConnecPad」にお客さまの情報が表示されます。
「サービスの企画においては、顧客体験価値提供のアンカーとなるSSスタッフを強く意識しました。忙しい業務の傍ら、タブレットの表示を見て一瞬で最適なアプローチをするにはどんな情報が必要なのか、どういう画面にすればわかりやすいのか、大村さんをはじめ昭和シェルの方々や開発ベンダの方々を交えて突き詰めて考えました」とNRIの赤松勇弥は語ります。
「Shell CONNECTの展開にあたり、CRMやロイヤルカスタマーを作るための理論的なアプローチに加えて、データ分析を通じ綿密なコミュニケーションシナリオを設計しました。しかし、SSや特約店のスタッフにとってはデータに基づいてお客さまを囲い込むという発想は新しい概念であり、こうした考え方をいかに現場に根付かせて展開していくかがポイントでした。納得いく指標を作り、そこに実績を裏付け、発信することで現場を動かしていく。理論だけではうまくまわらない点に工夫を凝らしました」とBrierley Japanの村瀬馨人は振り返りました。
大村さんは導入後の変化を次のように実感しています「システムやマーケティングに関する専門性の発揮だけでなく、想定どおりに行かない場面に直面しても、臨機応変に自分事として支援していただきました。実際にShell CONNECTを導入したSSでは、オイル交換の時期が迫ったお客さまへのタイムリーなご提案や、まだあまりサービスを利用されていないお客さまにはきっかけづくりに空気圧点検をおすすめするなど、お客さまごとに最適な接客ができるようになりました」
Shell CONNECTが真の価値を発揮するのはこれから
村瀬は「現在は、企画から導入のフェーズが終了したところです。現場で生まれた変革を変わらぬものとするために、仕組みとして作り込むことが大切です。Shell CONNECTを育てるためにも、これからも積極的に支援していきます」と、思いを語ります。
赤松は、「今回の取り組みはデジタルトランスフォーメーション(DX)のきっかけであると理解しています。Shell CONNECTの真価を発揮するために、NRIの総合力でサポートしていきます」と意気込みました。
Shell CONNECTの運用が始まると、昭和シェル石油の内部にも、特約店やSSにもデジタルに対応した組織づくりや、お客さまのためにこれまで以上に何ができるか、という意識の変化が起きはじめていると大村さんは語ります。「こうした動きを昭和シェル石油のバリューチェーン全体に広げていくことが次の目標です」と今後の展望を描いています。
前列左から昭和シェル石油 森さん、大村さん、岡村さん、後列左からNRI赤松、Brierley Japan村瀬
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