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『ITロードマップ2019年版』――最近のIT動向と今後の予測

2019/04/26

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野村総合研究所(NRI)では毎年、ITの最新動向と5年先までの動向を予測した書籍「ITロードマップ」を出版しています。最新刊の2019年版から、「5G(第五世代移動通信システム)」と「情報銀行と信用スコアリングビジネス」についての最新動向と今後の見通しを紹介します。

第五世代移動通信システム(5G)について―IT基盤技術戦略室 藤吉 栄二

日本では2020年に本サービス開始する5G

5Gは、移動通信事業者にとって約10年ぶりとなる通信システムの刷新であり、その影響は情報通信に関わるさまざまな産業に影響が及ぶものと見込まれています。
5Gには、通信速度が10~20Gbpsとなる「高速大容量」、端末と基地局の間のデータ送受信時のタイムラグを1msまで短縮した「低遅延」、1つの基地局に多数のデバイスが接続可能となる「多接続」の3つの特長があります。
海外では、2018年に米国で5Gを用いた固定通信サービスが始まり、2019年4月には韓国と米国で携帯電話向けの5Gサービスが始まりました。日本では2019年夏にプレサービス、2020年春に本サービスの提供がスタートする予定です。

ビジネス面における5Gのインパクト

ところで、上記の5Gのセールスポイントである3つの主要機能は、無線通信部分に特化したものであるため、政府と移動通信事業者にとってインフラの刷新という意味でのインパクトは大きいのですが、企業が事業に活用する面での魅力は限定的と言えます。もちろん、企業は5Gを利用することによって、有線ネットワーク並みの高速通信をケーブルにつなぐことなく享受できるメリットを有します。しかし、インターネットを使ったサービスとは異なり、低遅延や多接続の機能を自由に使えるかどうかは通信事業者次第です。たとえば、低遅延の場合、通信事業者が保有する環境内にサーバーなどを設置する必要があるなど、システム構築での自由度が少ないからです。さらに、最近はLPWA(低消費電力広域)通信や低消費電力PAN(パーソナルエリアネットワーク)など、5G以外の新しいワイヤレス技術が登場しています。企業にとって、無線通信の選択肢は広がっています。
そのため移動通信事業者にとっては、大容量・低遅延・多接続によりユーザーが魅力に感じるサービスとは何か、5Gをうまく活用したサービスを生み出すことが求められます。例えば、従来は人に依存していた知見を5Gの大容量通信を活用し、AIと組み合わせて業務の効率化を目指す、といった視点です。
こうしたアプローチの一つとして、NRIはKDDIや会津アクティベートアソシエーションとともに、「醸造産業における5GやRFID、ドローン活用実験」を行っています。醸造所内で画像、動画、温度センサーにより醸造工程を遠隔監視したり、蓄積した画像にAIを活用し、工程管理や新商品開発、職人の知見の形式知化や技能伝承などの価値を創出することを目指すものです。

5Gを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるために

2020年の段階では、4Gを改良したeLTEと新たに設定された無線周波数を用いる5G‐NR(NewRadio)の2つの通信方式が、5Gサービスとして提供されます。また利用可能なエリアは、都市部やオリンピック会場をはじめとしたイベント会場周辺など、高速データ通信のニーズがあるところがメインです。全国レベルで5Gのサービスを享受できるようになるには、数年を要すると予想されます。
現時点では5Gの可能性は未知数です。しかし、移動通信ネットワークが刷新されて、スマホ向けのサービスのみならず、スマート社会の実現を支える能力を備えるという、進化のロードマップは変わりません。企業は、5Gで得られるデータや人工知能といった基盤技術などのネットワーク以外の部分の活用にも着目しながら、DXの取り組みにおける5Gの活用を考えるべきです。

情報銀行と信用スコアリングビジネスの展望―IT基盤技術戦略室長 城田 真琴

個人と企業間のパーソナルデータの取引を仲介する情報銀行

情報銀行とは、消費者が自分の行動履歴や購買履歴などのデータを企業に提供する代わりに、何かしらの対価を受け取る仕組みです。この仕組み作りは、政府が主導し積極的に進めてきました。GAFAに代表される米国の巨大IT企業が、インターネットを通じて収集した膨大なパーソナルデータを広告や販売などに活用して巨額の利益を生み出している反面、日本企業のデータ活用は進まなかったためです。情報銀行は、2018年の実証実験フェーズを経て、2019年以降に本格化する見込みです。
2019年度中のサービス開始を目指している情報銀行の1つが、三菱UFJ信託銀行の「DPRIME」(仮称)です。「DPRIME」は、スタートアップ企業数社と提携し、資産・行動履歴・歩行など、消費者のさまざまなパーソナルデータを活用したサービスの提供を計画しています。
情報銀行の普及に向けた課題としては、まず、消費者からの同意の取得方法やデータの価値に見合った対価の設定が挙げられます。次に、いかに多くのデータを消費者から集め、データを購入するスポンサー企業を集められるかといったデータの仕入れ・販売ルートの確保が重要になります。また、使いやすいデータコントロール機能の実装も求められるでしょう。

個人の信用力を数値化する信用スコア

信用スコアとは、さまざまなパーソナルデータをAIで分析し、個人の信用力を数値化するサービスです。消費者はその数値によって、融資の際の金利の優遇など各種の優待を受けられるようになります。
中国のスマートフォン決済アプリ「支付宝(アリペイ)」に搭載されている信用スコア「芝麻信用(ゴマ信用)」は、2015年1月にサービスを開始しました。中国ではクレジットカードの普及が遅れ、信用力の測定手段がなかったからです。
芝麻信用のスコアリングでは、アリペイを使った決済履歴やアリペイ上で提供されるサービスの利用履歴、学歴や職歴、マイカーや住宅などの資産の保有状況などから、消費者ごとに信用スコアを算出しています。
一定以上のスコアになると、特定の国のビザ取得が簡単になったり、ホテル予約時のデポジットが不要になったりするなどの優待を受けられるため、中国の消費者はスコアの引き上げに熱心になっています。
一方、日本では、みずほ銀行とソフトバンクの共同出資による合弁子会社であるJ.Scoreが、日本初の信用スコアサービス「AIスコア・リワード」を2018年10月から開始しています。個人の信用スコアは、会員登録を行い、趣味や学歴、職業、収入や支出、資産状況など各種の質問に回答していくことによって算出されます。また、みずほ銀行やソフトバンク、Yahoo! JAPANなどとの取引情報を連携させることによって、スコアはさらに上がります。

もっとも、日本で信用スコアが浸透するのかは未知数ですが、将来的に社会インフラ化すると仮定した場合、スコアの信頼性確保や不当な手段でスコアを上げようとする者への対処、「格差」や「差別」の助長に対する懸念の払しょくなどの課題があります。

今後、情報銀行も信用スコアも、収集するデータ範囲や提携先の拡大を目指していくと思われますが、両サービスには「消費者のパーソナルデータの収集」という共通点があるため、将来的には両者が融合する可能性もあるでしょう。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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