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スマホと「背中合わせの家族」

野村総合研究所(NRI)代表取締役社長 此本 臣吾

2019/06/10

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スマートフォン(以下、スマホ)は社会生活にさまざまな影響を及ぼしている。野村総合研究所(NRI)が2018年7 月から8 月にかけて実施した「生活者1 万人アンケート調査」によれば、10〜40代まで男女共にスマホの所持率は9割以上となっている。仕事以外で1 日にインターネットを利用している時間は10代230分、20代227分、30代145分、40代111分となっている。09年との対比で見ると10代は2.5倍増、20代は2.7倍増、30代は2.4倍増、40代でも2.2倍増となっており、スマホの普及によりインターネット利用時間は大きく増加した。230分といえばほぼ4 時間であり、10代、20代の若者は、学校や職場で過ごす時間や睡眠時間を除くと、終日インターネットを見続けているような生活である。

スマホにより家族や消費のカタチが変化しつつある

インターネットで何をしているかというと、「無料動画の視聴」「SNSでの友人とのやり取り」「位置情報(地図)の利用」「他人のSNSの閲覧」の順に利用頻度が高い。とりわけ、最近では動画の視聴時間が伸びている。一方、テレビの視聴時間は若年層を中心に減少が続いている。同調査では平日1 日のテレビの平均視聴時間を尋ねているが、10代で見ると09年の140分から18年には104分と3 割弱も減っている。20代より上の世代でも、10代ほどではないがテレビ離れは着実に進んでいる。
10代から40代、50代までの家族がリビングに一堂に集まっていても、テレビ番組がバックで流れているかもしれないが、家族はそれぞれのスマホを見入っていて、動画を視聴したり友人とチャットをしたりと自分の世界に入っている。家族が時間や空間を共有する「お茶の間」は消失しており、リビングにいてもお互いに言葉も交わさない「背中合わせ」の状態になっている家庭が多いのではないか。
ネット上のコミュニティ空間で過ごす時間が長くなり、濃厚な情報交換を重ねると、関心事への「こだわり」がどんどん強まっていく。気がつくと店頭にはない、趣味の高価なレア物をネット通販でひそかに購入していることもある。このように嗜好的なこだわり消費が高まっている。
NRIの調査では、10〜20代のネット通販の年間利用回数は40〜50回であり、ほぼ毎週、何かをネット経由で買っている計算になる。50代、60代でも年間利用回数は30回を上回っている。ネット通販の利用が日常化してくるにつれて、マス媒体からの情報収集の意味は薄れていく。商品やサービスを購入する際の情報源については、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告を重視する割合が年々下がり続けており、逆にネット上の情報、評価サイトやブログでの評判を重視する割合は増加している。
ただし、リアル店舗からの情報収集の重要性も実は増しているのである。最終的にはネットで購入するケースもあるだろうが、情報収集のために消費者は店舗に足を運んでおり、店舗が素通りされているわけではない。買回り品の場合では、ショッピングモール、大型専門店、総合ディスカウントストアは利用回数が増えており、百貨店や家電量販店の利用回数も減ることはなく安定している。ネット通販にリアル店舗が押されているのは間違いないが、リアル店舗にも売り場での接客や「体験」の提供、特徴ある商品の品揃え次第で復活の可能性は十分ある。ネットはビジネスモデルの寿命が短い上に模倣されるリスクも高いが、競争力のあるリアル店舗はそう簡単に真似できるものではない。利便性やエンターテインメント性など、リアル店舗ならではの顧客誘引要素があれば消費者の購買機会は増やせるはずだ。

2019年度もめまぐるしい変化の一年となるであろう。消費者の動向をしっかり捉え、コンサルティングとITサービスの両面から戦略パートナーとして認識いただけるよう、お客様の成長戦略をご支援していきたい。

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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