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デジタル時代とIT人材不足

野村総合研究所(NRI)経営役 関西支社長兼中部支社長 小暮 典靖

2019/07/08

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日本は人口減少社会となり、どの業界でも人材不足、労働力不足が深刻な問題となっている。ドライバー不足による物流コストの上昇、建設作業員不足による建設コストの上昇などは、人々の順調な社会生活の営みを脅かすようなレベルにまで来ている。
IT業界も例外ではなく、人材不足の話をよく耳にする。経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT人材は2015年時点で既に17万人程度不足しており、20年には37万人程度、30年には79万人程度不足すると試算されている。もちろん、労働生産性の向上でこれらの数値は大きく変化する可能性はあるが、いずれにせよIT人材不足が深刻な状況になっていることは事実である。
今後のデジタル化の進展によって、ITの活用範囲は飛躍的に拡大していくことが想定されている。このままではIT人材不足のせいで、日本はグローバルでのデジタル化に取り残されてしまう。

電子化は進んでいる日本だが、ビジネスを生み出す「デジタル化」は他国が先行している

この2 、3 年、デジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった言葉を聞かない日はない。デジタル化を進めないと、ディスラプター(破壊者)によって既存ビジネスが毀損されてしまうと考えている経営者も多く、デジタル化の遅れに対する危機感は募る一方である。
ところで以前、米国の方から「日本人はデジタル化が遅れていると二言目には言うが、日本は昔からデジタル化を進めてきているではないか」といわれたことがある。米国人はデジタル化=電子化(デジタルデータ化)と捉えている節があり、そう考えると確かに、経理伝票の電子化から始まり、決済、物販とさまざまな仕組みが日本ではいち早く電子化されている。特に携帯電話を活用したモバイルデータ通信や電子マネーなどは、グローバルにおいても先駆者であったといえる。
しかし、日本では電子化とデジタル化を明確に使い分けている。デジタル化とは、モノの動きや状態をデジタルデータ化することである。それによりモノ(資産)の状態をリアルタイムに把握し、モノ(資産)を有効活用することが可能となる。その意味では確かに、電子化の世界では日本は先駆者的な位置づけにあったが、デジタル化の世界では有効なサービス、ビジネスを生み出せていない。ここが米中と大きな違 いである。
デジタル化によるモノ(資産)の有効活用の代表例といえば、シェアリングエコノミーである。UberやAirbnbなどがよく取り上げられているが、やはりデジタル化の歩みはAmazonなしでは語れないと思う。Amazonはご存じのように、最初は「本」を電子化することでディスラプターとなった。その後、物販を開始し、その産物として最初のシェアリングビジネスが開始された。クラウドサービスである。
ITで最も悩ましいのは資産の有効活用である。特にコンピューターリソースは高価な上に有事に備えが必要である。Amazonでいえば、1 年に一度のブラックフライデーたった1 日のために、普段は全く使わない膨大な数のサーバーを所有しなくてはならない。そこでサーバーを使っていないときは貸し出すサービスとして、クラウドサービスを開始したのである。そういった意味で、シェアリングビジネスにおける最大の成功企業であるといえる。
次にAmazonが取った戦略は、ネットの世界からリアルの世界への進出である。Amazon GoやAmazon Echoなどである。これにより、リアル店舗や家の中がデジタル化され、リアルの世界とネットの世界、その両方で利用者の行動をすべて把握することができるようになる。AmazonはITを巧みに用いて、今もその事業領域を広げつつある。

デジタル人材の確保は経営上の重要な課題となってきている

上記のような新しいビジネスに挑戦するためにはITが大きな役割を果たしており、それを支えるIT人材の確保が重要であるといえよう。既に米国では、既存の枠組みにとらわれない報酬体系と、かなり自由度の高い勤務体系を整備することでIT人材(特にDX人材)の確保に動いている。
日本の大手企業もIT人材の重要性に気がつきIT人材の採用を強化しているが、なかなかうまくいっていない。優秀なIT人材は限られており、今後ますますIT人材の獲得競争は激しさを増していくであろう。
ITサービス企業側も貴重なIT人材を有効活用するため、より採算性の高い案件、今後、自社の成長に寄与すると思われる案件など、受注する案件の取捨選別をし始めている。こうした動きは今後も広がっていくだろう。
最早、事業はITなしでは成り立たなくなっている。今までITといえばコスト削減の対象でしかなかったが、デジタル化を契機に経営者もITに対する考え方を根本的に見直していく必要があるのではないだろうか。
IT人材の確保は企業にとって重要な経営課題と捉えるべきであろう。

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