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「ニトリパブリック×NRI」 DXの活用で見えてきた中国人旅行客の「旅ナカ」――行動履歴を北海道の観光マーケティングにつなげる

株式会社ニトリパブリック 代表取締役社長 荒井 功氏
株式会社ニトリパブリック 札幌営業部長 野中 毅氏
野村総合研究所 産業システム事業推進部 綿貫 智文
NRIデジタル プラットフォームアーキテクトユニット 倉澤 孝明

2019/07/18

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毎年多くの中国人旅行客が訪れる北海道。中国展開を進めるニトリグループの強みを生かしながら北海道の観光事業をより活性化させたいという思いを持つニトリパブリックと、野村総合研究所(NRI)が共同で、2019年の「さっぽろ雪まつり」と「小樽雪あかりの路」の期間中に中国人旅行客の行動履歴を収集する施策を行いました。中国で圧倒的なシェアを誇るソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)アプリ「WeChat」※1を活用した新たな取り組みと、今後の観光マーケティングに生かせるポイントを両社に聞きました。

中国人観光客は増えているが――

日本を訪れる外国人は2018年に過去最高の約3,119万人となり、年々増加しています。その中で中国人旅行客は約838万人、北海道には約72万人が訪れました。国別で最多人数(全体の24%)、1人当たり支出が最大という中国人旅行客は、大きなビジネスチャンスを秘めています。

荒井 功氏

「北海道はニトリグループ発祥の地です。中国などへの展開で蓄積してきた知見を活かしながら、北海道と結びつけたビジネス展開を考える上で、観光分野は大きく成長する軸だと思っていました。そのような中で、NRIからWeChatを使った中国人旅行客の行動分析について提案を受け、一緒に取り組むことにしました」と、ニトリパブリック荒井功社長は今回のプロジェクトの経緯を語ります。

野中 毅氏

「中国人の旅行スタイルは、団体旅行から個人旅行へ、モノ消費からコト消費へと変化しています。それぞれの興味、関心に基づいて行動する個人旅行客の北海道内における足取りがつかめず、何に満足しているか、どのような不満があるのか把握できていませんでした」ニトリパブリックの野中毅部長は中国人旅行客に対する観光マーケティングに課題を感じていました。

「中国人のデジタル利活用を調査していたNRIの山本真吾から、約10億人の中国人ユーザーがいるWeChatのミニプログラム※2は操作ログに位置情報を取得できるとアイデアを貰い、時系列で分析すれば行動実態を可視化できると考えました」と、NRI綿貫智文は振り返ります。ここからWeChatミニプログラム「完全攻略北海道」を開設し、行動履歴を集積し分析するという具体策が浮かんできました。

WeChatのミニプログラムを活用

その後、中国人旅行客が年間最多の「さっぽろ雪まつり」、「小樽雪あかりの路」に合わせての実施が決定し、ニトリパブリックのメンバーが地元の観光協会や関係当局、店舗などにプロジェクトへの参加を呼びかけました。そして、広告宣伝より口コミの信用度が高い中国人に周知するためのインフルエンサーの起用、関心度や利用率を高めるためにスタンプラリー、景品提供といった仕掛けも用意しました。

「技術面で難しかったのは、アクセス数の見通しが立たなかったことです。時間帯によってはサーバへのアクセスが集中する可能性がありましたが、膨大なデータ量を処理できるサーバの構築には費用がかかるため、どのようなシステムを構築するのがよいか検討を重ねました」。NRIデジタルの倉澤孝明はプロジェクトの課題を説明します。今回は、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)中国※3のクラウド環境に、アクセス数の増減に柔軟に対応できるサーバレスアーキテクチャで設計開発しました。また、データ管理やシステム運用は中国側のNRI北京で実施する連携体制を取っています。

「WeChatのミニプログラムを使うことでアプリのダウンロードは不要となり、観光スポットや店舗に配布したQRコードを読み込むだけで、北海道の観光情報にアクセスできるようになりました。利用のハードルが低かったので、雪まつり会場に立ち寄った中国人旅行客に紹介すると、その場ですぐに試してくれました」。野中部長は今回のプロジェクトの手ごたえを感じています。

デジタル利活用では目的意識を見失わないことが重要

収集したデータを分析すると、札幌と小樽の間に太い導線があることや、立ち寄り先の傾向などが確認できました。「興味深かったのは、日本人があまり行かない朝里という場所の訪問者が多かったことです。調べてみると、中国で昨年公開された映画のロケ地でした。我々があまり評価していない場所にも、太い導線ができることもあるのだということを発見しました」と、野中部長。「今後は、導線中にある、立ち寄ってもらいたい施設を紹介するなど、より満足度を高める内容を作り込み、旅行客と観光事業者の双方に役立つプラットフォームにしていきたいと考えています」。

綿貫 智文

「今回のプロジェクトを通して、インフルエンサーの有効活用やユーザー認知の向上、今後拡大する都市の選定など、新たな課題も見えてきました。ニトリパブリック様と一緒に課題を解決しながら、北海道にとって価値あるサービスをつくり上げたい」と、綿貫も語ります。

倉澤 孝明 

倉澤は、今回の試みの収穫を「短期間で設計や開発を行うのは大変でしたが、やりがいもありました。お客様とディスカッションしながら、アジャイルに、変化に対応したモノづくりを経験できました」と述べます。

「デジタルと聞くと、やりたいことが魔法のようにできると思ってしまいがちですが、何を実現したいのか考えながら、丁寧に組み立てることが不可欠なのだと感じました。
今回、膨大な量のデータが収集されるのを知り、ついあれもこれもと欲が出ましたが、機能を詰め込むと寧ろ使い勝手の悪いシステムになってしまうことが分かりました。
デジタルを活用して成果を出すには、本当に大切なものが何かを突き詰めて考える必要があります。今後も地道に活動を続けていきたいと考えています」荒井社長はこれからのプロジェクトへの思いを語りました。

  • 1 WeChat:
    中国の大手IT企業テンセントが作った無料インスタントメッセンジャーアプリ。
  • 2 WeChatのミニプログラム:
    WeChat内で利用できるアプリ。AppStoreからダウンロードする必要がないため、手軽に利用できる。
  • 3 AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)中国:
    AWSにより提供されているクラウドコンピューティングサービスの中国向け製品
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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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