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転換期としての5G(第5世代移動通信)

研究理事 未来創発センター長 桑津 浩太郎

2019/08/06

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2019年に一部都市で、20年からは本格的に5G(第5世代移動通信)のサービス提供が計画されている。現在の4G(第4世代移動通信システム)の100倍を超える速度を最終的には想定しつつ、低遅延によるリアルタイム通信サービスを実現するという新たな通信方式群の登場であり、これを契機に新たなデジタル化、社会実装が日本においても強く推進されることになる。スマートフォン(スマホ)に代表される人と人とのコミュニケーションだけでなく、IoTをさらに発展させたモノとモノとのコミュニケーション、さらには都市での活用(いわゆるスーパーシティ)や社会全体の取り組みが視野に入る。
既に、これまで取り組まれてきた多様なPoC(実証実験)などで眼を見張る成果が現れている反面、5Gに対する取り組みや視点は技術先行で、不十分な状況も指摘されつつある。

5Gの特性を生かすためには、4Gの活用とは異なる発想が求められる

スマホに代表される現在の第4世代携帯電話(LTE)は、人々の生活を劇的に変えた。カメラ、音楽、書籍に代表されるコンテンツを電子化して取り込んだだけでなく、決済機能やSNSを通じて生活様式までも変化させるに至った。
その成果による影響は強く、当然、われわれは5Gを、4Gの発展形、あるいは延長と捉えがちである。しかし一方で、人間の認識、記憶などの能力は、4Gから5Gの発展に十分に追従することは難しいという見方もできる。たとえば、動画視聴などにおける人間の処理能力はHD程度の画質で相応であり、5Gが前提としている4K、さらには次の段階である8Kなどは過剰ではないだろうか。逆にいうと、それだけの高画質動画を移動通信で見せられても、人間では処理し切れるのかという疑問が湧く。
そうなるとむしろ、5Gは「人がスマホを使って動画を見る」という4Gまでの見方を脱して、「AIがカメラを通して人を見る」ことを前提としたシステム、ネットワークになると考えた方が妥当とも思える。

5Gの整備は通信事業者だけでなく、オール日本の取り組みが必要となる

5Gは、導入初期段階(フェーズ1)では、4Gと同じ、もしくは一段階高い周波数利用が想定されている。より広い範囲に効率的に電波を届ける仕組みを短期間に構築し、既存システムとの親和性を考えると当然の選択といえる。
しかし5Gがスマホだけでなく、クルマや都市レベルで多くのIoT、自動機械などで利用されるようになると、ネットワークの爆発的な容量拡大が予想される。そのため、2025年頃と目される5Gのフェーズ2においては、これまで携帯電話では利用してこなかった高い帯域(ミリ波など)の本格利用が求められる。ただし高い周波数の採用は、電波が届く距離をより短くする。すると携帯電話事業者は、基地局の数を増やさざるを得ない事態となる。基地局関連投資は携帯電話事業者の設備投資の70%近くを占めているという推定もあり、高い周波数の利用=設備投資増大となることが予想される。その結果、大都市部以外での5G展開が後回しにされることも懸念せざるを得ない。
人口を前提に考えれば、都市部優先となってもやむを得ないとされがちであるが、ここで5Gの特質、人だけでなくモノや社会への実装が関連してくると、にわかに様相が変わってくる。5Gにおいては、人がいないところであっても、自動機械やIoT、防災や監視などの需要が強く期待されており、むしろ少子高齢化で人の数が減る地方部こそ、5GとAI、自動機械による「人を見守る、人にやさしい」環境、ソリューションが追求されるべきといえる。
5G技術による高速かつ多数の端末利用環境は、これまでの人を中心としたネットワーク整備を、無人化システムも含めた「人を見守る、人にやさしい」環境整備へと転換させていくが、そうなると、これまでのビジネスモデルに対する軌道修正も求められることになる。
現在、携帯電話のビジネスモデルは、人の料金支払(いわゆるARPU)月額5000円相当を前提として構築、最適化されてきた。一方、車のIoT対応ネットワークコストは、月額300円相当と目されており、その他のさまざまな自動化、無人化環境におけるARPUはさらに低い水準であり、これまでのスマホを前提とした料金体系、マーケティングアプローチでは十分にカバーし切れない可能性がある。
その結果、料金設定を通信事業者のみに委ねると、彼らの既存ビジネスモデルの制約から、5Gの地方展開の遅れ、もしくは人×スマホ視点への偏りが発生する懸念が指摘されている。

今後、日本が進むべき方向には、AI、自動機械、IoTなどが多くの役割を果たすことになり、その基盤としての5G整備は極めて重要な位置にある。その意味で、5Gの整備は、これまでの4Gにおける通信事業者のみへの依存ではなく、社会実装、都市視点での公的関与の強化など、オール日本での取り組みが必要となる。
5Gは民主導への通信規制緩和から、一歩進めた形(後退ではなく)としての社会実装に視点、ビジネスモデルなどを転換することが求められる。

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特集:5G元年 その革新性と可能性

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