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成功する「aaS(アズ・ア・サービス)」とは

アナリティクス事業部長 石綿 昌平
グローバル製造業コンサルティング部 重田 幸生
グローバルインフラコンサルティング部 村岡 洋成
REシステム事業部/NRIデジタル DX企画ユニット 吉田 純一

2019/08/08

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ソフトウエアの「SaaS(Software as a Service)」、モビリティの「MaaS(Mobility as a Service)」など、「aaS(アズ・ア・サービス)」という言葉に注目が集まり、モノの提供からサービスの提供へとビジネスモデルの転換が進んでいます。これらを「XaaS(Everything as a service)」と総称していますが、2018年に開催した「NRI未来創発フォーラム」ではさまざまな業界でどのような「aaS化」が起きているかをお伝えしました。今回、本フォーラムに登壇した石綿昌平、重田幸生、村岡洋成、吉田純一が再び集まり、「XaaS」について語りました。

定期券とXaaSは何が違うのか

石綿 昌平 

XaaSの特徴の一つは、継続的な課金モデルである「サブスクリプション方式」であること、という見方があります。たとえばフィンランドでは、MaaSの試みとして、月額数万円程度を支払うことで、ヘルシンキ市内のバス、電車、タクシーが乗り放題になる「Whim(ウィム)」というサービスが実施されています。
しかし考えてみれば、昔からあるバスや電車の定期券も定額で使い放題のサービスなので、形態だけを見ると定期券サービスもaaSと言えるかもしれません。それでは、両者の違いはどこにあるのでしょうか。

XaaSであるかを判断するための視点の一つは、お客様との接点を「定常的に」持っているかどうかです。たとえば、観光地の周遊キップでは、利用者は購入後、利用時に改札や施設の入り口で提示するだけで、鉄道やバスを自由に乗れたり、観光施設の入場料の割引を得られます。しかし、発行側はパスを何枚販売したかは把握していますが、それを実際に何人が利用したのか、どのようなルートで移動したのか、どのくらいの頻度で乗車しているかなどは把握できません。Whimは使うたびにアプリ乗降範囲を登録するので、毎回データが取得できます。
もちろん、今では定期券も電子化され、利用履歴が取得可能になっています。しかし、単にIT化すればよいという問題でもありません。サービスとして提供するのが「利用」だけでなく「価値」という視点が出てきます。定期券は、A駅からB駅までの「移動(利用)」を売っているだけです。一方、MaaSの場合は、雨が降っている際には外を歩く距離が短いルートを提案する、目的の場所に1時間後に用事がある時にカフェなどの場所を経由したルートを提案する、といったサービス提供が可能になります。実際に、Whimは、都市内を自由に移動する「効用(価値)」を売ろうとしています。

XaaSを実現させるためにはどのようなデータが必要か?

 

次に、XaaSを実現させる条件を考えてみます。まず、企業にとって非常に重要になるのが、どれだけ顧客を深く理解できるかです。たとえば水を提供する場合、飲むという利用はみんな同じでも、喉が潤った、気持ちが落ち着いたなどの価値は人によって様々です。そこまで踏み込んで、本当にその人の価値を理解しようとする場合、定常的につながり、様々なデータが必要になってきます。

これまでの経験からの感覚で言うと、「単発売切り」「定期的」「定常的」という観点でビジネスに必要なデータ量の違いは、1対10対1000くらいです。顧客が「モノ」と「効用・成果」に感じる価値の差という観点では、モノを1とすると、効用・成果が生み出す価値は100くらいです。この価値を生み出せるようなXaaSやDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指せば、従来とは桁違いのインパクトを出せる、と私たちは考えています。

ただし、どの程度データを集めるかは、実施するビジネスに合わせて考える必要があります。技術的には1分1回の頻度でデータが取得できるとしても、耐用年数が十数年、メンテナンスも半年か四半期に1回という機械や設備を扱う場合、そこまで細かくデータを取る必要はないかもしれません。

 

たとえばマンション事業者が、定常的に利用者と接点が持てるからといって、水道や電気の利用状況を監視して、引っ越しの有無や家族が増えたなど居住者の変化を把握することは可能であるにしても、そこまでする必要性があるのか、という議論が必要です。玄関に設置したカメラの画像分析や、年1回の居住者アンケートなどの代替手段でも、居住者の変化を容易に把握することができるからです。

XaaSは目的ではなく実現したいビジネスを明確にすることが必要

 

アリババやグーグルのように、大規模投資をして定常的にあらゆるデータを取得することも1つのビジネス戦略ですが、多くの日本企業には同じ方法をとれません。それよりも、何を実現したいかという目的に沿って、必要なデータや取得方法を考えてみることが大切です。単にデジタル化したり、従来のモノ売りや課金体系を変えるという考え方ではなく、自分たちの提供価値を真剣に問い直し、ビジネスを再定義してみる。それが、本質的なXaaSになるかどうかの違いになる、と私たちは考えています。

価値を測定し、高めることが重要

これまで多くの日本企業は、製造コストに利益を乗せるプライシングに慣れてきました。しかし、それが必ずしもXaaSで実現される価値に見合っているとは限りません。価値や効用を訴求するために不可欠なのが、顧客の感じている価値を数値化し測定することです。従来のCS(顧客満足度)アンケートのような実績データと、利用ログや利用パターンの分析結果や、企業・ブランドへの愛着・信頼度を計測するNPS(ネット・プロモーター・スコア)などの指標を組み合わせることで、サービスに対する効用や価値が測定でき、顧客価値を高める施策も打てるようになります。テクノロジーをうまく使って顧客の感じる価値を測定し、それを高めていくことができれば、DX2.0への移行がもっと促進する、と私たちは考えています。

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