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クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

社会課題の解決を成長ドライバーに

野村総合研究所(NRI)執行役員 事業戦略部長 桧原 猛

#DX

#サステナビリティ

2019/11/19

「わかってるよ。今やろうと思っていたのに」わが家の中学生の息子の返事だ。「宿題しなさい」とか「早くしなさい」と言うと、いつもこういう答えになる。分かっているのだが、親はつい言いたくなる。言われた方もしぶしぶ取り掛かるが、どうも身が入らないようだ。
人は、他人から先に言われると、つい「やらされ仕事」になってしまいがちだ。企業活動も同様である。ルールや規制を押し付けられたという意識が先に立つと、とりあえず表面だけ取り繕っておこうとなってしまう。しかし、それでは本末転倒だ。ここは一つ、未来志向のストーリーに発想を変えていきたい。

社会課題に前向きに取り組む理念とデジタルの融合が成長へのドライバーとなる

企業は現在、さまざまな社会課題への対応を求められる存在になっている。対応が不十分であれば、持続的成長が望めない企業として株主や消費者の信頼を一気に失ってしまうだろう。企業活動を行うに当たって、今やESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(国連が採択した2030年までの持続可能な開発目標)への配慮は必須だ。企業の負担はますます大きくなってきているが、「後からできた決まりごとになぜ今さら」と愚痴るのではなく、ここは「社会課題の解決を持続的な成長のドライバーにしよう」と改めて考え直したい。

かつての近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」とする「三方よし」を標榜し、明治期の実業家、渋沢栄一は経済活動が公的な利益にもつながるという「道徳経済合一説」を説いた。また戦後の日本企業の多くは公害対策にもいち早く取り組んだ。ESGやCSR(企業の社会的責任)などと言われなくとも、創業の精神や理念には社会とのかかわりが織り込まれており、実際に取り組み続けてきたという自負もある。1970年代、米国で排ガス規制が強化される中、本田技研工業はCVCCエンジンで当時としては画期的な低公害・低燃費を実現し、その後の北米市場での躍進につながった。これが日本企業の代表的なイメージである。
成長ドライバーの重要な要素は、今や「デジタル」であろう。デジタル技術の急速な進歩によって、ひと昔前に比べ社会課題の解決が容易な状況にある。ドイツのインダストリー4.0では、製造業のデジタル化だけでなくサプライチェーン全体の高度化や社会インフラとの連携が始まっている。日本でもトヨタ自動車とソフトバンクが提携し、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に取り組んでいる。これらは、リソースの有効活用や移動の利便性アップなどを通じて、社会課題の解決をも目指すものである。デジタル時代のビジネスモデル変革では、より最終顧客に近い視点で、さまざまなサービスや機能が業界を超えて再編されていく。
こうした中、生活者が本当に困っていることに寄り添い、社会課題の解決のために知恵を絞れば、豊かな社会に少しでも近づけるはずだ。これは、企業がその強みを活かして社会課題の解決に応え、社会的な価値と自社の成長が一体となるというCSV(価値共創)の考え方に通じる。課題先進国の日本企業は、今こそ社会貢献を自社の成長戦略に織り込み、それをイノベーションのドライバーにしていくべきだろう。

NRIはデジタルを活用し「社会価値」を創出し続けていく

野村総合研究所(NRI)は、1965年に日本初の民間総合シンクタンクとして誕生した。その設立趣意書に「産業経済の振興と一般社会への奉仕」を掲げるとともに、あえて株式会社組織を採用することで経済合理性も標榜した。そこから50余年を経た2019年4月、中期経営計画2022がスタートした。その中では財務目標やESGに関する重要課題に加えて、どのような社会課題に応えて価値を創出していくのか、といった非財務目標も設定している。それが、次に述べるNRIらしい「3つの社会価値」だ。
第一に、「新たな価値創造を通じた活力ある未来社会の共創」である。新たな価値が次々と生み出され、それらを生活者すべてが享受できる、豊かで快適な社会を目指す。そのためにNRIはお客様のDX(デジタル変革)パートナーとして、ビジネスモデル変革や社会提言、情報発信などを推進する。
第二に、「社会資源の有効活用を通じた最適社会の共創」である。業務改革やCO2削減効果のある共同利用型のビジネスプラットフォームなどを通じて、大切な社会資源を有効活用し、暮らしやすい社会の実現に貢献する。
そして第三に、「社会インフラの高度化を通じた安全安心社会の共創」だ。クラウドやセキュリティなどITの側面から社会インフラの守りを固め、サイバー攻撃や災害などにも強い、安全安心な社会を目指す。また、防災・減災のための政策提言や復興支援も推進していく。NRIは、これら3つの目標設定を通じて、お客様とともに社会価値を創出し続けていきたい。

さて、冒頭に登場したわが家の息子。今度のホームステイ先のカナダの様子を調べたり、自分の進路のことも口にし始めたりしている。目先の宿題だけでなく、少しは先のことも考え出したようだ。机に向かう背中も頼もしい。将来の姿に期待しよう。

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特集:インダストリー4.0の深化

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株式会社野村総合研究所
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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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