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NRI トップ NRI JOURNAL なぜシリコンバレーでイノベーション活動がつまずくのか――開発支援と人財育成の仕組み「CAMPS」

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なぜシリコンバレーでイノベーション活動がつまずくのか――開発支援と人財育成の仕組み「CAMPS」

NRIアメリカ Financial and Technology Research Division 宮原 由香理

#DX

#イノベーション

2019/12/04

シリコンバレーに人員を派遣しているものの、イノベーション活動が十分にできていないと感じている企業は少なくありません。その障壁となっているのは、よく言われている現地でのスタートアップ探索や協業に関する部分だけではないと、NRIアメリカの宮原由香理は指摘します。NRIがそうした企業を支援するために取り組んでいる「CAMPS(サークル・アズ・モバイル・フォン・サンドボックス)」について聞きました。

シリコンバレーではPoCを推進する上で、リソース不足が深刻

――シリコンバレーでのイノベーション活動に悩んでいる企業は、どのような課題を抱えていますか。

一番感じるのは人手不足です。多くの企業は現地駐在員が1~2名という体制のため日々の業務に忙殺され、イノベーション活動に十分なリソースを割くことができません。また、駐在員がIT系でないため開発テーマは明確でも適したスタートアップを見つけられない、また、本社への説明やPoCの前の概念検証段階で止まってしまう事例もあります。日本側の決裁や意思決定など社内手続きに時間がかかることも多く、シリコンバレー側とのスピード感が異なることも問題です。

さらに、スタートアップとの協業では、コミュニケーションの壁に直面します。言葉の問題はもちろん、「できない」と言わないスタートアップ側の実力を見定め、ともに活動できる相手かを判断しなくてはなりません。直接会って信頼関係を築くことはもちろん、現地の専門家の支援を受けたり、他の日本企業から情報収集する必要がありますが、そこまで手が回らない日本企業も少なくありません。

加えて、現地では開発以外にも、契約関係や知的財産権の調査など、日本にいれば専門家のサポートが受けられる業務も駐在員本人が主体で対応しなくてはならず、現地に派遣されるのは一人で一通りの仕事がこなせる中堅社員となりがちです。新たな刺激に敏感に反応しやすい若手社員が派遣されにくい環境であるとも感じます。

イノベーション活動を支援するCAMPS

――そうした企業を支援するために、CAMPSという仕組みを考えたそうですね。

私たちのミッションは日系企業のイノベーション活動、それに伴うPoCを推進することです。そこで、開発テーマに適したスタートアップの探索、協業の橋渡し、現地のスタートアップでは対応しきれない箇所の作り込みなど、顧客企業が必要としている工程を柔軟に支援しようと考えました。また、NRIの若手社員にシリコンバレーで本件に関われるような仕組みにできないか検討をすすめ、現在では、パートナー企業や顧客企業の社員にも参加いただける取組みへと発展しました。

CAMPSでは現在、四半期に1度、顧客企業、パートナー企業、NRIから参加者を募り、シリコンバレーで2カ月間、スタートアップを絡めてPoCを実施しています。NRIアメリカは、アクセラレーターであるプラグアンドプレイと提携してスタートアップの探索や調査し、契約関係などの実務をすることに加え、現地の滞在先や作業場など必要なリソースを用意し、参加者が開発に専念できる環境をつくっています。NRIとしては人財育成の目的も兼ねており、シリコンバレーでのPoCへの参加のハードルを下げることができるのも特徴です。

シリコンバレーのアプリ活用に注目

――CAMPSの名前に「モバイル」とありますが、開発テーマは絞っているのでしょうか。

保険本部が中心となり始めた取り組みなので、保険や金融分野を中心としたアプリ開発の実験場と位置付けており、期間も限られているので、開発しやすいモバイル・アプリが適していると考えています。

シリコンバレーで感じるのは、ペーパーレスでスマートフォン生活が浸透していることです。たとえば、住居の手配も、保険加入も、カンファレンスの入場手続きや資料配布も、すべてアプリで完結し、多様な年代の人が使いこなしています。イベント参加時に一定の情報を入力しておくと、あちこちから「会って話をしましょう」と声がかかり、そこからネットワークが広がり、ビジネスチャンスに結び付いたりすることもあります。開発者の立場で見ると、シリコンバレーのアプリが技術的にそこまで尖っているとは感じません。ですが、アイデアや技術の組み合わせ、情報提示のタイミングなどは一日の長があります。

――CAMPSの反響はいかがですか。

顧客企業からは停滞していたPoCを実現できた、現地拠点のないパートナー企業からは開発者の育成に役立っているという声をいただいています。NRIの若手も、スタートアップや顧客との協業や現地イベントへの参加などで、大いに刺激を受けているようです。まだ手探りの状況で、周囲の協力なしにはできないことも多く、同僚やチームには感謝しています。今後は、シリコンバレーならではの体験ができるように内容を充実させ、CAMPSの活動を拡大させたいと思っています。


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