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デジタル時代に国や企業の進むべき方向性とは――NRI未来創発フォーラム2019を開催

2019/12/09

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2019年10月2日、野村総合研究所(NRI)は「NRI未来創発フォーラム2019」を開催しました。2017年から3カ年シリーズで「デジタルが拓く近未来」をテーマに、デジタルトランスフォーメーション(DX)が革新的に進展する時代における、日本および世界のあるべき姿や企業経営の方向性を議論してきました。
今年は3年間の総集編として、デジタル時代の経済社会像を展望し、企業経営課題の解決の方向性を提言しました。また、NRIの多彩な専門家による議論を通じて、国や企業の進むべき方向性を提示しました。

デジタル時代に対応した新経済指標「GDP+i」

フォーラムの冒頭で、NRI代表取締役会長兼社長此本臣吾が、「社会・産業のデジタル化宣言」と題して基調講演を行いました。

日本では1990年代以降、実質GDP成長率や所定内賃金水準などが低迷する一方で、生活者の主観的な生活実感は2006年頃を境に向上していること、また、デジタルサービスの活用度が高い消費者ほど生活満足度が高いという結果が、NRIが実施した「生活者1万人アンケート調査」から得られました。無料のデジタルサービスやデジタルを介して提供される体験価値など、デジタルプラットフォームが生み出す「消費者余剰」が拡大していることが読み取れます。

NRIによる試算では、有料・無料問わずデジタルサービスから生まれる日本の消費者余剰の合計は2016年に161兆円となり、これは同年の日本の実質GDP520兆円の約30%に相当します。主要SNS(LINE・Facebook・Twitter・Instagram)だけで、日本で年間20兆円の消費者余剰が生まれているという試算も得られ、此本は「消費者余剰は経済活動として無視できない規模になっている」と指摘します。

消費者余剰は実際に動きのある金額としては発現しないため、NRIは「虚数=i」のような概念上の存在と捉え、これとGDPを組み合わせた指数を「GDP+i(GDPプラスアイ)」と名付け、デジタル時代の経済活動をより実態に即して表す新指標として提案しました。
此本は、「GDPは物質的充足度を表し、消費者余剰は精神的充足度を表しているという見方もできる。精神的充足度は、リアルの世界では体験できない新たな価値を通じて生活満足度を生み出すことと捉えられ、先進国では1人当たりGDPよりも、社会のデジタル化の進展度の方が生活満足度との相関が高い傾向がある。国民の豊かさ実現のために、より『虚数=i』に注目する必要がある」と強調しました。

また、EUには、加盟国の経済・社会のデジタル化の進展度合いを示す指標「DESI」(デジタル経済社会指標)があり、この指標と国民の生活満足度の相関が高いことが、NRIの調べでわかりました。生活満足度「虚数=i」を高め、国としてのデジタル戦略を強力に推進するために、NRIがDESIを参考に開発したのが、市民がデジタルを活用して生活満足度を高める潜在能力を表す指標、「DCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)」です。NRIが31都道府県を対象に行った推計で、都道府県別の生活満足度は、平均所得よりDCIとの相関が高いとの結果が得られました。

生活満足度を向上させる手段の一つに、行政サービスをデジタル化し、一人ひとりに適切なサービスの提供を可能とする「デジタル・ガバメント」の構築があげられます。
地方創生の面からも、市民、行政、企業、学術機関が揃う人口10万人前後の都市は、デジタル化により都市の生産性や市民の豊かさが実現できる可能性を有しています。実際、山形県鶴岡市をはじめとするいくつかの都市(圏)で、デジタル化に向けた取り組みの萌芽が見られます。

現在、世界のデータトラフィック量は右肩上がりで増加していますが、消費者が提供するデータが生み出す現在価値を推計しても、データ量の増加に見合うだけの消費者余剰を生み出せていないという結果が出ています。多くの企業がDXを推進し、ビジネスモデルの転換に取り組んでいますが、成果はまだ道半ばです。経営者のリーダーシップの下、顧客体験価値を生み出し続けるマーケティングにさらに磨きをかける必要もあると考えられます。

此本は、「NRIとしても、デジタルを介し、地方創生の取り組みや企業を支援していきたい。3年間の研究を通じて、デジタル化は、国民一人ひとりの生活の豊かさを高めるためのものであるという視点が大切であるとの思いを強くした」と語り、講演を締めくくりました。

日本企業が「デジタルマスター」になるために

続いて、MIT Sloan School of Management(マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院)Senior Lecturerのジョージ・ウェスターマン氏が、特別講演「日本企業を『デジタルマスター』に変える」に登壇しました。

企業のデジタル化の進捗状況は、デジタル技術を使って顧客体験(カスタマーエクスペリエンス:CX)や業務プロセス、ビジネスモデルなどを改善する『デジタル能力』と、変革を導くビジョン、従業員の巻き込み、ガバナンス、ITとビジネスの連携などの『リーダーシップ能力』の2軸ではかることができると解説。「この2軸の両方に優れ、デジタル変革を遂げた企業である『デジタルマスター』は、競合他社と比較して従業員1人あたりの売上も収益性も高い」と分析しました。

MITとNRIが日本企業165社を調査し、世界の企業900社以上に行った調査と比較し、「日本のリーダーは自社への評価として、リーダーシップ能力は世界と同等だが、デジタル能力、特にCXに関する評価が低いという結果が得られた」と報告。「CXの改善は、試行錯誤の積み重ねが重要。デジタルマスターになるために必要なのは、DXを自社のコア能力(ケイパビリティ)にすることだ」と強調し、日本企業のデジタル化に期待を寄せました。

専門家の視点から国や企業のとるべき進路を示唆

最後に、経済キャスターの小谷真生子氏をモデレーターとして招き、「デジタルトランスフォーメーション時代において日本がとるべき進路は」をテーマに、NRIの3名の専門家がパネルディスカッションを行いました。

先端技術・先端ビジネスの動向調査を行う城田真琴は、「特にデジタル化のスピードが速く、変化も大きいのは銀行・小売業界で、何もしなければ淘汰される可能性が高い」と分析。「日本企業では、これまでコスト扱いだったデジタル関連の費用を、投資と捉えるべき時期が来ている。今後はCXを重視したビジネスモデルへの転換が必要となるがそのためには自社のデジタル・チャネルの利用者数やデジタルを介した売上などの『デジタルKPI』を設定し、経営者を巻き込んで議論を進めることが重要だ」と提言しました。

製造業に対して経営戦略の策定や実行支援を行う松尾未亜は、「日本企業の多くはデジタル化への取り組みが欧米より遅れていると感じ、現業を伸ばしつつデジタル化を進めたいと考えているが、社内での提案機会や提案の質など根本的なところでつまずくケースが多い」と指摘。「デジタル化においては、意思決定キーマンのマインドセットが課題となる。デジタル化で先行するには、人・金のリソースを動かすことができる取締役クラスがオーナーシップをとり、デジタル化の施策デザインをしっかり行うこと、問題発見能力に優れた人材をデジタル施策の専任にすることがポイントだ」と述べました。

都市・地域戦略、公共政策を専門とする神尾文彦は、「日本のデジタル発展度は欧米先進国に比べてまだ低い。デジタル化が効果を発揮するには、国民・市民の信頼感をベースに、データを蓄積してデジタル共通基盤を構築し、それをサービス・ビジネスに結び付けていくプロセスが重要」と強調。さらに、「基礎自治体こそデジタル化のポテンシャルが高い。特に人口10万人規模の都市は、市民からの信頼も、経済性や行政効率も比較的大きく、デジタル化に適している。都市の特徴を反映した市民起点のデジタル・ガバメントが構築され、共通の特性をもった都市拠点がネットワーク化することで日本のデジタル化は進むだろう」と示唆しました。

セッションの最後に、モデレーターの小谷氏は「ご来場いただいた皆様には、本日の講演や議論から得られた発見を持ち帰っていただき、デジタル化に向けた改革の一助にしていただければ幸いです」と総括し、フォーラムは幕を閉じました。

  • 基礎自治体: 国の行政区画の最小単位。日本における市区町村。

未来創発フォーラム動画


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