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日本の金融機関の「顧客本位の業務運営」の推進・定着を支援するCX指標とCX管理手法とは

金融DXビジネスデザイン部 田中 達雄

2019/12/17

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野村総合研究所(NRI)は、一橋大学の一條和生教授とともに、顧客本位の業務運営に取り組む日本の金融機関向けに、CX(カスタマー・エクスペリエンス)指標とCX管理手法(NRI CXMM:NRI CX Management Methodology)を開発し提供を開始しました。開発の背景、それによってもたらされる金融機関でのメリットについて、多くの企業のCX戦略について調査してきた田中達雄に聞きました。

顧客の感情的価値をいかに高めるかを優先するCX戦略

CX管理手法開発の背景には、2017年3月に金融庁から顧客本位の業務運営に関する原則が公表されたことがあります。これに伴いNRIは、欧米では成功を収めた企業ほどCX戦略に積極的に取り組んでおり、そこで培われたノウハウを業務運営に取り入れていけば、自ずと顧客本位の業務運営になることを発表しました。CX管理手法もこの考えに基づいています。
CXは「顧客経験価値」や「顧客体験価値」と言われ、機能や価格などの「合理的な価値」だけでなく、お客様が商品やサービスの購入・利用・フォローアップを受ける過程で経験する「感情的な価値」を訴求する考え方です。この価値をいかに高めるかがCX戦略においては非常に重要です。

金融機関では機能や性能、価格などの合理的な価値での差別化は困難

近年、商品やサービスの合理的な価値、つまり機能・性能や価格で他社と大きく差別化することが難しくなってきています。特に金融機関は、株・投信などの商品ラインナップや金利や手数料では、他社と差別化しづらい状況です。だからこそ感情的な価値を上乗せして、お客様が受け取る価値全体をいかに上げていけるのかが重要になります。

顧客の受取価値とは、米国のマーケティング研究の第一人者、フィリップ・コトラーによると、「総顧客価値から総顧客コスト引いたもの」と定義されています。総顧客価値には、機能やデザインなどの製品価値、保守・メンテナンスなどのサービス価値、接客などの従業員価値、ブランドイメージなどのイメージ価値も含まれています。また、総顧客コストには単に金銭的コストだけではなく、労力的コストや心理的コストも含まれています。
こうした観点から、CX戦略は感情的な価値を高めたり、感情的な価値でコストとなる部分をいかに下げていくかに着目した考え方と言えます。
総顧客価値を高める例としては、ディズニーリゾートにあるアンバサダーホテルの「シェフ・ミッキー」があります。食事をするだけではなく、ディズニーのキャラクターとコミュニケーションがとれる体験価値があり、家族連れなどの場合、子供が笑顔を見せれば親にも嬉しい感情が生まれます。

日本の金融機関の顧客ロイヤルティ指標をNPSだけで測定することは困難

CXの先進企業では、顧客満足度ではなく、「顧客ロイヤルティ指標」を重視しています。顧客ロイヤルティとは、「顧客の企業に対する感情的な満足や愛着」を意味します。そしてCX先進企業では、収益と強い相関がある顧客ロイヤルティ指標を、経営指標や役員・社員の業績評価に採用しています。これは、社員が契約数や手数料収入といった目先の収益を高める行動だけを推進することを抑制し、顧客ロイヤルティ指標を高める行動へ向かわせる意図があります。
顧客ロイヤルティを測定する指標としてはNPS※1が有名であり、グローバルなデファクトスタンダードになっているのですが、日本の金融機関で活用する場合にはノイズが多く含まれてしまうことが、NRIの調査で分かりました。ノイズとは、顧客ロイヤルティとは直接関係がない理由によって、顧客ロイヤルティの測定を妨げる「人の考え方」です。「受けたサービスを人に勧める可能性」を聞くことで顧客ロイヤルティを測定しようとするNPSにおいては、「そもそも金融機関は人に勧めるものではない」という考え方がノイズとなります。
NRIの調査では、「金融機関は、人に勧めるものではない」と考えている人が全回答者の約80%を占めており、「全回答者」と「ノイズとなる考え方を持つ人を除いた回答者」の間で、NPSの値に大きな開きが出たのです。

CX戦略実現に向けた日本の金融機関にふさわしいCX指標、CX管理手法を開発

そこで一條教授とNRIは、日本の金融機関のロイヤルティ指標を測定する場合に、NPSと同じ行動的ロイヤルティ指標に分類される、「継続意向」と「購入意向」、そして「推奨意向(=NPS)」を組み合わせると、日本の金融機関特有のノイズなどの問題が互いに緩和しあうことを発見し、その3つを組み合わせた「CX指標」を定義しました。CX指標は、多くのビジネス指標と強い相関が見られるため、金融機関がCX指標を高める方向の行動をとれば、顧客ロイヤルティが高まり、結果として収益も上がるという健全な業務運営の確立が可能になると考えられます。

また、顧客本位の業務運営では、顧客の受取価値の持続的な向上と、企業としての収益向上の両立が求められます。NRIでは、その両立を可能にする「CX管理手法(CXMM)」を開発しました。CXMMでは、まず行動的ロイヤルティであるCX指標に影響を与える感情的ロイヤルティを示す指標として、「信頼性」「利便性」「経済合理性」を取り上げました。さらに、その感情的ロイヤルティを生み出す、現状の金融機関からの受取価値を、期待不確認理論※2で評価する方法を取り入れました。
そのため、金融機関側では他社と差別化すべきポイントや自社の弱点を特定でき、期待と評価のギャップの数値とCX指標との相関関係を分析することで、優先して取り組むべき課題を特定できます。
CX指標とCXMMを活用することで、日本の金融機関が「顧客本位の業務運営」の推進・定着に向けた「顧客ロイヤルティ測定のためのアンケート設計」や、「CX指標を向上させるポイント」「他社との差別化ポイント」の分析と改善施策の立案が可能となります。

  • 1 NPS(Net Promoter Score):定量的に測定することが困難であった「顧客ロイヤルティ」を数値化した指標で、2003年に米国のコンサルティング会社Bain & Company社のフレドリック・F・ライクヘルド氏がHBR(ハーバード・ビジネス・レビュー)誌上で発表。
  • 2 期待不確認理論とは、米国の経済学者リチャード・オリバーが提唱した「Expectation(事前期待)」と「Performance(結果の評価/効用)」を測定して比較する理論で、「期待」と「評価」の両方を数値化することで、顧客がその金融機関に期待することとその評価の度合いが分かる。

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