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シニア人材に関する人事施策の再考を――稼ぐシニアを生み出す仕組みが求められている

コーポレートイノベーションコンサルティング部 ソリューションプリンシパル 細川 幸稔

2019/12/23

急速に進む少子高齢化、年金問題などの社会課題を背景に、企業に対して65歳までの継続雇用確保措置が法的義務化されるなど、シニア人材の雇用を取り巻く環境は大きく変わってきました。シニア人材の雇用を負担と感じる企業も少なくありませんが、捉え方を変えることで、収益貢献する戦力として活かせると、企業の人事制度改革に携わってきた野村総合研究所(NRI)の細川幸稔は考えています。細川に、シニア人材を生かす施策のポイントを聞きました。

活躍を期待しているシニア人材は限定的?

――シニア人材の雇用の現状について教えてください。

定年は60歳、再雇用を65歳まで、という企業が約8割にのぼります。シニア人材の雇用目的は、人手不足対応、専門能力の活用、後進育成など、いくつか挙げられています。しかし実際にシニア人材を受け入れる現場の声を聴くと、それほどシニア人材は求められていない実情が見えてきます。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などデジタル技術で省力化・省人化を進めたほうが効率がよい、シニア人材の専門性や経験・ノウハウを生かせる分野は限定的で陳腐化も懸念される、といった声もあります。後進育成や技能伝承は多くの企業で必要と考えられていますが、活躍を期待しているシニア人材は限定的であると考えられています。

――再雇用という仕組みにしている企業が多いのは、なぜでしょうか。

定年を延長すると、コスト面の負担増加や、組織の新陳代謝が進まないといった問題が生じます。再雇用制度であれば、再雇用時の新たな人事制度にもとづいて、再雇用後の給与を改めて設定できます。一方、高齢者雇用に対する社会的要請に積極的に応えつつ、シニア人材がモチベーションを高め、安心して活躍できることを重視して、定年延長や再雇用の上限年齢の引き上げを採り入れている企業も一定数存在しています。

能力を発揮できる環境やサポート体制を重視

――シニア人材の活用で先進的な企業はどんな仕組みを導入していますか。

ある企業では、定年は60歳ですが、再雇用には年齢の上限はなく、会社と本人が合意すれば働けるようにしています。さらに、その会社では第3者のメンターを交えて、50代前半くらいから、60歳以降も現場で働くうえでの本人の改善点や上司のマネジメントにおける留意点についてすり合わせをするほか、必要に応じて配置転換するなど、定年後も活躍しやすい環境を整えるためのサポート体制を整備しています。

65歳定年制を導入する一方で、60歳までとそれ以降とで適用する人事制度を分けている企業もあります。60歳以降で担う業務や会社から期待される役割に応じて、異なる給与体系・給与水準を設けるとともに、個人の成果に応じて処遇が変動する仕組みを導入しています。全員一律ではなく、60歳以降に会社が求める役割に応じて処遇を変えるため、一定の柔軟性を持たせられる点が特徴です。

このほか、65歳定年制を導入している企業の中には、年齢で制度を分けるのではなく、60歳以降も、現役世代と同様、職務の大きさに応じて給与が決まる職務等級制度を運用している企業もあります。

いずれも共通するのは、会社側のサポートが、シニア人材としての役割を用意することではなく、シニア人材が蓄積してきた経験・ノウハウを生かして、能力を発揮しやすくなるように、仕事と人材をマッチングさせることに注力することが中心になっている点です。義務だから雇用せざるを得ないと捉えるのではなく、60歳以降も現役と変わらず、最前線で活躍し、収益貢献してもらうには、どうすべきかを考えていることだと思います。

シニアを戦力として捉える目線が大切

――シニア活用について、企業にどのような提言をされますか。

2019年は、政府で70歳までの雇用確保の努力規定について、議論が進められるなど、人生100年時代を見据えたシニア人材の捉え直しが求められる機運が一段と高まったと感じています。そのため、本当に今のままのシニア人材の人事施策を継続して良いのか、何を変えていくべきか、改めて自社の状況を鑑み、既存の人事施策を検討し直すタイミングに来ていると思います。

また、社員個々人については、市場価値の高い突出した専門性を有する人材でもない限り、限られた業務や役割に固執し過ぎたキャリアを形成していては、自ら活躍の機会を狭めることになってしまいます。個々人が、自分はいつまで働き、50代、60代でどのような仕事に携わり、会社および社会にどのように貢献・還元していきたいかを意識し、行動していかなければならない時代になっています。そのため、会社側も、社内複業や副業を通じて、社員本人の意思でさまざまな機会を獲得し、多くの経験を積めるようにするためや、自らの状況や環境に対してより柔軟に適応して能力を発揮できる人材を増やすための人事施策を講じて、個々人に意識変革を促す必要があるでしょう。このような取り組みを行う企業が増えていけば、いち企業の枠を超えた人材交流が進み、シニア人材が活躍する機会も広がっていくと考えます。

今後も新卒者の獲得が難しい状況が続いていくことが予想され、中途採用が不可欠となってきます。中途採用では、シニア人材は対象外となっているケースがほとんどですが、豊富な経験、ノウハウ、スキルを活用できる可能性があることに加え、コスト面でのメリットもあることから、自社のシニア人材の活用にとどまらず、シニア人材を積極的に採用するという目線も必要になると思います。NRIとしても、企業のシニア人材の活用をさまざまな面から支援していきたいと考えています。

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。


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お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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