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企業を跨るデジタル革新の成功モデル

執行役員 システムコンサルティング事業本部副本部長 中島 久雄

DX

2020/01/15

デジタル革新の実現には、自社単独ではなく、企業間での連携が必要と感じている日本の経営者が多い。JUAS(日本情報システムユーザー協会)の調査(出所:企業IT動向調査2018)によると「デジタル化への取り組みには、他社との連携が必要」と考えている企業が、何と88.5%にも及んでいる。その理由は何であろう。
企業の経営者と話すと、その最大の理由として日本市場の成熟化を挙げる。企業単体での効率化はもう限界に達しており、企業を跨る課題や業界全体の課題を解決しないと、今以上の生産性向上、言い換えるとデジタル投資に見合うだけのリターンを期待できないということだ。別の経営者は、アマゾンやグーグルに代表されるメガプラットフォーマーの台頭に対する危機感を理由に挙げる。企業間で連携して業界の課題を解決するような業界プラットフォームを先んじて創り上げないと、自社単独では米系のメガプラットフォーマーに飲み込まれてしまうのではないかと話す。

デジタル革新の成功モデルとして近年、中国企業が出現してきている

企業を跨るデジタル革新の成功モデルはどこにあるか。これまで、日本企業はデジタル領域において、欧米企業のベストプラクティスをベンチマークすることが多かった。しかし近年、中国企業がデジタル技術を活用して企業間連携を進めるという成功事例も出現してきている。アリババやテンセントのような中国版アマゾンの成功例を述べるつもりはない。また、個人情報保護が緩やかな、特殊な中国市場ならではの成功例という話でもない。ここで述べたいのは、中国企業が規制の厳しいグローバル市場においても、デジタル技術を活用して企業を跨るデータ連携を進めたり、業界プラットフォームを構築したりして、欧米企業の市場シェアを切り崩している事例があるということだ。
たとえば、中国・深セン起業の業務用無線機メーカーのハイテラは、欧州市場に参入する際、法人顧客向けのWebサイトを、デジタル技術を駆使した最先端のものにした。それによって多くの法人顧客を自社サイトに魅きつけ、さらには、オンラインでの顧客の動きを詳細にトレースして分析することを可能にした。
これらのデータ分析結果を基に、販売代理店に対して、Webサイトを訪れた各々の顧客のニーズ、購買意向の強さ、予想される訪問タイミングを伝え、さらには個別の顧客向けにカスタマイズした提案書まで、代理店の営業担当者に提供した。その結果、新規参入から短期間で、業界トップのモトローラから代理店内シェアを奪い取るとともに、経営を圧迫していた代理店向けの奨励金を40%も削減したのである。従来の中国企業が欧州参入の際に行っていた安売りによるシェア拡大とは異なる、企業を跨るデジタル革新アプローチの成功モデルといえよう。
中国・広州起業のリー&フォン社(現在は香港に本社を置く)は、元はアパレル業界の生地卸商で、アパレル服を企画・製造・販売するというバリューチェーンの中ではごく一部を担当していた企業であった。近年、デジタル投資を積極的に行い、アパレル業界全体の課題と言われ続けていた、パターン〜サンプル作成の工程に着目して、そのリードタイムを8カ月から4カ月にまで短縮できるサービスを業界企業向けに提供した。
具体的には、3Dデザインや自動パターン作成システム、バーチャルサンプル品の作成システムなどを利用量見合いでクラウドサービスとして提供することで、企業間での仕様確認の時間とコストを大幅に削減したのである。業界プラットフォームを提供して業界全体の生産性を上げると同時に、利用企業向けに提供できるサービス領域を徐々に広げていった。現在では、50カ国1万の縫製工場をネットワーク化して、完成品の配送などもサービス提供するなど、アパレルの後行程でも大きな事業成長を遂げている。
このように、中国企業の中には、最新のデジタル技術を活用することで、グローバルの業界課題を解決するサービスを提供することで、ある業界に特化したプラットフォーマーに転身した成功例が存在する。

日本企業は「共創」でデジタル革新を

日本企業も、過去、アナログ技術ではあるが、カンバン方式やカイゼン活動など、日本国内で生み出した驚異的な生産性革新をもって、グローバル市場を席巻した時代があった。成功体験はあるのだ。冒頭で述べたように、今、必要とされているのは、デジタルを活用した業界全体の課題へのチャレンジであることは、経営者共通の認識となっている。成熟市場、高齢化、人手不足、稼働率の低い資産など、日本には業界課題が山積みであり、待ったなしの状態にある。中国企業のデジタル革新成功モデルも参考にしながら、「競争」だけでなく企業を超えた「共創」で、これらの業界課題を解決するプラットフォームを創り出してほしい。そして、メガプラットフォーマーとは異なる、業界特化型のプラットフォームを強みにグローバルに提供することで、日本企業の成長につなげてほしい。

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特集:デジタル時代における新たな企業間連携の価値創造

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