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NRI トップ NRI JOURNAL TRAINAを支える自然言語処理技術と可能性――AIによって変わるコンタクトセンター(後編)

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TRAINAを支える自然言語処理技術と可能性――AIによって変わるコンタクトセンター(後編)

AIソリューション事業部 北村 雄騎 岡田 智靖

#DX

#AI

2020/03/11

人手不足が深刻なコンタクトセンターの業務負荷の削減や効率化を支援する野村総合研究所(NRI)のAI(人工知能)搭載システム「TRAINA(トレイナ)」。音声を聞き取って読解し、必要な情報を検索、助言、記録を残す、といった機能はどのように実現しているのでしょうか。AIによって変わるコンタクトセンターの現状と今後の可能性を3回に分けてご紹介するシリーズの最終回では、TRAINAの技術面の特徴や開発にかける思いを、長年開発に携わってきたNRIの北村雄騎と岡田智靖に聞きました。

前のページ:AIによって変わるコンタクトセンター(中編)

20年以上かけて培った言語処理技術

――TRAINAはどのようなプロダクトでしょうか。

北村:TRAINAシリーズは幾つかのプロダクトで構成されています。テキスト化された文章を解析する「テキストマイニング」。電話を切った後で内容の要約を作成する「VOICEダイジェスト」。また頻出する質問を検索したり、分析する「FAQナレッジ」などがあります。必要な機能に応じて各プロダクトを組み合わせて利用できます。

――TRAINAで一番反響がある機能はどのようなものでしょうか。

北村:通話内容の要約を作成する機能です。最近ではスマートフォンに話しかけると文字がタイプ打ちされる機能なども普及し、「音声を認識してテキスト化する」ことにそれほど目新しさはありません。TRAINAの「VOICEダイジェスト」は、お客様とコミュニケーターの対話の中から、履歴に残す必要がある内容に要約した文章を作成することができます。

――なぜそのようなことが可能なのでしょうか。

岡田:私たちが日常的に使っている言語(自然言語)を処理するために、文章を単語に区切る技術は一般的に普及しています。TRAINAはそれだけではなく、お客様とコミュニケーターの通話の中で、「ここは質問」「ここは同意の相槌」とラベリングを自動付与するなど、高度な自然言語処理を用いて文章の構造や意味を解析しているからです。TRAINAの前身は2001年に発売されたテキストマイニングツール「TRUE TELLER(トゥルーテラー)」で、20年以上前から蓄積してきた日本語処理技術をコアとしています。そこに、近年急速に発展してきた機械学習やディープラーニング(深層学習)などの統計的なAI技術を組み合わせて、さまざまな機能を実現させています。

最先端の知識をビジネスに活かす総合力

――他の言語よりも日本語の処理は難しいのでしょうか。

岡田:難しいと思います。たとえば、「はい」という言葉1つとっても、挨拶なのか、相槌なのか、質問の回答なのかが、前後の文脈で変わってきます。構文も厄介で、「警官が自転車で走る泥棒を追いかけた」という字面だけでは、自転車に乗っているのが警官なのか泥棒なのかが曖昧です。人間でも解釈に迷うことはどの言語でもありますが、日本語は特にその傾向が強いのです。

――研究開発でこだわっている点はありますか。

岡田:私自身は、新しいプロダクトや機能を企画し、それが技術的に実現可能かどうかを検証する役割を担っています。特にAI分野は学術分野での進展が著しいので、最先端の技術をキャッチアップするために、国内外の学会に多く参加し、学術研究のトップ論文や実装技術の習得を常に行っています。そのうえで、技術ありきではなく、それをいかにお客様のビジネスや業務に適用できるかを総合的に考えるようにしています。

顧客価値を起点に、利用シーンを広げる

――TRAINAの開発で留意していることはありますか。

北村:TRAINAは、業種や取扱商品を問わず、コンタクトセンターの業務に活用できる汎用的なプロダクトとして作っています。このため、お客様が欲しい機能が欲しいと言われた時に、直ちにその機能を開発するのではなく、「なぜその機能を開発する必要があるか」「利用者が困っていることを、どのように解決できるか」という前提条件をしっかりと整理します。そのうえで、誰にどういう価値を提供するかというWHYを考え抜き、使いやすい機能をつくるよう心がけています。ここは、指定された仕様通りにつくる従来のITシステム開発とは少し違うところです。

――TRIANAはコンタクトセンター以外の業務にも利用できますか。

岡田:ベースとなっている自然言語処理や機械学習などの技術は、いろいろな業務に活用できます。たとえば、オフィスワーカー向けの業務サポート、社内ヘルプデスクなどで問い合わせに対応する利用シーン、営業支援やコンプライアンス対応など、適用範囲を広げています。

北村:私たちは普段の仕事の中で、質問したり、探しものをしたり、予定を調整したりしますが、人手や時間をかけて行うよりも、自動化したほうが便利に速くこなせることはたくさんあります。TRAINAを「ここに聞けばだいたいの情報が見つかる」窓口として、幅広い場面で、もっと賢く便利に使えるプロダクトに育てていきたいと思います。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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