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アジャイル・エンタープライズの実現へ向けて――アジャイル開発によるDXの促進と「2025年の崖」の打開

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 プリンシパル 木下 貴史

2020/03/17

デジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される中、先進企業が採用しているアジャイル開発に挑んでみたものの、期待したような成果やスピード感を出せずに諦めてしまうIT企業も少なくありません。アジャイル開発をアジャイル(機敏)に行うためには、その概念や働き方について全社レベルで理解を深め、浸透させる必要があります。技術系戦略のコンサルティングに長年携わってきた野村総合研究所(NRI)の木下貴史に聞きました。

閉塞感のある開発現場を変える

アジャイル開発は20年以上前からある概念で、ものの考え方としてのアジャイルと、手法やアプローチとしてのアジャイルという、2つの側面で見ることが大事です。前者について端的にいえば、常により良い方向を目指して働き方を変えようというものです。ITの開発現場といえば、かつては残業や休日出勤が当たり前。トップの意向や社内規定にがんじがらめで、現場に決定権はなく、エンジニアは疲弊しがちでした。そこで形骸的なルールを守ることよりも、純粋にビジネスや個人の目標の達成に向けて、現場で臨機応変に判断しながらシステム開発やビジネス開発を進めていく考え方が登場したのです。

手法やアプロ―チについていえば、アジャイル開発では通常、10人以下の少人数でチーム(スクラム:Scrum)を組みます。そして、細かい仕様書に書かれたとおりに機能をつくっていくやり方ではなく、ユーザーが求める価値の理解を土台とし、ユーザーが欲することを全員で合意したら、その実現に向けて開発を進める、というやり方をします。人の時間を貴重なものとして捉え、1日の働き方を厳密に決めるのも特徴です。例えば、毎朝15分間、全員の会合(デイリースクラム)で必要な情報を共有し、分担や進捗状況を確認した後、30分単位で切り分けられた仕事(バックログ)にチャレンジします。その際、一定の投入量(時間、コスト)の中で、ユーザーの求める価値を実現するために、最低限必要な機能に絞られた「Minimum Viable Product(MVP)」の開発に注力することが特徴です。そこが、ウォーターフォール型の開発との大きな違いです。余計な作業を省くため、開発期間の短縮にもつながります。

トップからボトムまで総合的に変革する

アジャイル開発では、そのような手法、アプローチを取りますが、その形だけをまねて進めてしまうと失敗してしまいます。よく見受けられるのが、メンバーが全員兼務のケースです。その体制では、時間を区切って一斉に作業を進められないばかりか、所属部門の上司への報告といったチーム活動以外の業務(アジャイル開発においては余計な業務)も発生し、動きが遅くなるといった状況が起こります。

アジャイルの手法や働き方をうまく機能させるには、IT企業の経営層がアジャイル開発の特徴や必要性を理解し、デジタル化(DX)のビジョンの中にそれを明確に位置付けることが重要です。その後も後見人として、アジャイルチームの活動の重要性などを社内に発信し、情報共有の場を設置することも求められます。

チームメンバーについては、各自のタスクやバックログの設計、スケジュールの組み方などを自らが設定できるようになることが重要です。また、ミドル層ともいえるアジャイルの管理職には、チームメンバーが最高のスピードで動ける環境を整える、人材育成に心を砕くなど、「サーバントリーダーシップ」が求められます。従来の数値目標の達成に向けた管理とは勝手が全く異なるので、この点でミドル層の変革が一番難しいかもしれません。また、チームの中で重要な役割を担うのが「プロダクト・オーナー(PO)」です。POは、エンジニアではなく、発注者側(事業部)の担当者が担うケースが多く、ユーザー価値とビジネス価値を自ら定め、チーム全体の方向性を明確にし、エンジニアを巻き込んでいくことが求められるきわめて重要なメンバーです。

日本企業にアジャイル開発は向いているのか

アジャイル開発の概念自体が、トヨタの生産方式に由来します。問題の生じた工程に対して、関係者で話し合い、原因を追究し、短期間で改善するといったことは、日本の工場ではよく見られた光景です。いつしか、工程が高度化・複雑化し、組織も官僚的になってきたことから、そうした対応は「もうできないだろう」と諦めてしまう人が増えてきたのではないでしょうか。
それゆえ、近年では、アジャイル開発を丸ごと外注するケースもあるようですが、私はお勧めしません。ノウハウを社内に蓄積し、人材を育てていくことが大事だと考えるからです。とはいえ、アジャイル開発を内製化することは容易ではないので、NRIとしては、その側面支援をさせていただいています。具体的には、経営者に対する啓蒙活動から、ビジョンづくりの支援、蓄積されたノウハウを整理し普及させるためのCoE(センターオブエクセレンス)組織の構築等を行っています。また、アジャイル開発チームに対しては、各人の果たすべき役割、ユーザー価値起点での考え方、アジャイル開発の行動原則への理解を醸成するための研修やコーチング、さらにNRIエンジニアのチームへの参画も行っています。

これからの時代を考えると、さまざまなメディアでも指摘されているように、DXに伴う新技術への対応や、「2025年の崖」の克服は、多くのIT企業にとって喫緊の課題です。それらを解決するための切り口として、ユーザー志向の考え方(デザイン思考)や、システム設計思想の変革(保守・運用を見据えたシステムの見える化)、自社内でのノウハウ蓄積などが注目されていますが、これらはアジャイル開発に共通することです。
アジャイル開発は、そうした課題を解決する可能性を秘めています。IT企業の経営トップ層からアジャイル開発チームまで、アジャイル(機敏)な動き方のできる人材が増えれば、DXの進め方や結果の見えてくるタイミングが早まるはずです。アジャイル・エンタープライズの実現に向けた取り組みを、NRIは今後もさまざまな面から支援していきます。

NRIのプリンシパルとは

特定の業界やソリューションで高い専門性を備え、コンサルタントの第一人者として、社会やクライアントの変革をリードする役割を担っています。

新たなビジネスを作り出し、プロジェクトにも深くコミットし、課題解決に導く責任も有しています。


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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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