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シニア市場におけるビジネス展開に何が必要か――前編 シニアのニーズを細かく捉えて訴求する

グローバル製造業コンサルティング部 高橋 麻理恵、下松 未季、滝口 麻衣子
DXコンサルティング部 角尾 怜美

2020/04/22

高齢化に伴って拡大するシニア市場。その一方で、対象やニーズを絞り込めずにいる企業も多いのではないでしょうか。『NRI Management Review』42号で、各自の専門性や経験を活かして、シニア市場におけるビジネス展開について論じた野村総合研究所(NRI)の高橋麻理恵、下松未季、滝口麻衣子、角尾怜美が集まり、企業が苦戦する背景や必要な視点について話し合いました。

なぜシニア市場は捉えにくいのか

滝口:これまでシニア層をターゲットとしてこなかった企業は、高齢者を一括りにする考え方でしか市場を見られないケースが多いと感じます。しかし健康状態ひとつをとっても、同じシニアでも人によりさまざまです。もう少し細かく見ないと実態がつかめません。例えば、年代を10年ずつで区切ってみるだけでも、それぞれのシニア像の特徴はだいぶ異なります。

下松:これまで分解能が低かった背景として、シニアについて、消費活動を引っ張る主力ではなく、「一線を退いた層」「身体の衰えが顕著になる層」といったネガティブな捉え方をしていたことがあると思います。そこを深く追及するのはタブー視されていたのです。それから、介護保険制度など規制の影響も考えられます。介護保険点数を取得することやルールに合わせることが第一目標となり、高齢者のニーズの検討がおざなりになりがちでした。

角尾:昔のシニアは、時間とお金に余裕がある人が多かったかもしれませんが、今は定年が伸びて、自由な時間は意外にないのかもしれません。同じ60歳、65歳でも、仕事をしているかどうかで日常生活は違うので、それぞれに合った商品やサービスを提案する必要があります。年代だけでなく、その人がアクティブかどうかもひとつの視点になります。

高橋:同じ年代でも、世代ごとに違いがあることも注目したい点です。例えばNRIが1997年から定期的に実施している「NRI生活者1万人アンケート調査」から見えてくるのは、10年前の50代(現在の60代)と比べて、現在の50代(プレシニア)はバブル世代だったので、ブランド志向が強いことです。男性の場合、住宅ローンの完済比率が前の世代に比べ低くなっており、自由に使えるお金が少ないため、熱心に情報収集をしながら消費を楽しんでいます。この層をターゲットとする場合、情報発信をしてブランド力を向上させる必要がありますが、訴求に使うツールにも留意が必要です。上の世代にはテレビ広告が有効でも、現在のプレシニアはスマートフォンで口コミサイトやSNSをよく活用しています。

シニアに効果的な訴求方法とは

高橋:プロモーション戦略で苦労している企業も多いと感じます。「シニア向け商品」という打ち出し方では、シニアの人は買ってくれませんから。

角尾:まだ元気で活動的なシニアには、「今後、身体が動かなくなるので、予防のために介護体操をしましょう」ではなく、例えば「シニアヨガをしませんか」と呼びかけたほうが楽しめるし、尊厳が守られ、受け入れられやすいはずです。

滝口:シニアに対して「日常の負の部分を克服します」という伝え方ではなく、普段の生活シーンの中でどうメリットがあるかを訴求することが大事です。とはいえ、シニア市場とは縁の薄かった企業では、シニアのニーズを把握することは容易ではありません。このことについて私の論文では、ニーズマップを作成する手法を紹介していますが、「このような状態の人にはどのような生活シーンが合うのか」などと考えながら、シニア像を描いてみることをお勧めしたいと思います。

下松:私が取り上げた介護予防の領域では、法制度が見直されたり、新たな政策が打ち出されたりと、民間のビジネスチャンスは急速に拡大しています。そうした制度・政策に関する情報を把握しつつ、それらを上手く活用してシニア市場に参入することも重要だと思います。

「キーワード」を活用したマーケティングの可能性

下松:介護予防の観点では、要介護になると健康な状態に戻すのが難しいのですが、その手前の虚弱状態である「フレイル」の段階であれば、適切な介入をすることで健康な状態に戻したり、要介護ではない状態を維持したりできます。フレイルは身体的な衰えのみならず、社会的な参加が少なくなることも要因の一つです。例えば美容の分野では、外見を気にかけなくなったところから「フレイル」が始まります。そこに着目すると、おしゃれをしてもっと外出したくなるよう促すメイクセラピーなど、少し違った切り口の新サービスが考えられるようになります。

高橋:食品などでも、漠然と「健康に良い」と訴求するよりも、「フレイル状態の高齢者に効果がある」とセグメントを明確にするほうが、マーケティング活動がしやすくなります。「フレイル」というセグメントを抽出することで、これまで介護領域で成果を挙げられなかった企業でも、成果を挙げやすくなるということも考えられます。

角尾:身体的にも、精神的にも、また社会的にも健康であることを意味する「ウェルネス」も注目のキーワードです。「ウェルネス」は、多くの場合、ビジネスパーソンやミレニアル世代など、新しいものへの感度が高い人が対象とされていますが、これにシニア市場を含めることも可能と考えます。例えば、ビーガン(完全菜食主義)思想の拡大や環境問題に対する配慮等から、植物を使った代替肉や代替マヨネーズなどが登場していますが、これは糖尿病等で食事制限のあるシニアでも安心しておいしく食べられます。

滝口:「ウェルネス」は働き方改革の一環として使いたいキーワードですし、今後10~20年で拡大する市場だと思います。シニアにもうまく展開できる余地があります。

シニア市場におけるビジネス展開に何が必要か 後編はこちら

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株式会社野村総合研究所
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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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