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クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

第二段階に向かうデジタルの発想対実装

研究理事 未来創発センター長 桑津 浩太郎

DX

桑津 浩太郎

2020/08/17

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療分野だけでなく、安心・安全、働き方、学び方など多方面にわたって変化が起きている。とりわけデジタル技術の利用面において顕著である。これまで一部の人や企業が利用してきたテレワーク、テレカンファレンスや遠隔教育などについて、多くの人が使わざるを得ない状況に身を置かれることとなっている。その結果、全く予期しない形ではあったが、デジタル体験・利用の促進が、日本全体で大幅に前進することとなった。
デジタルの利便性や生産性の高さ、柔軟性に対する認識が社会に広く共有されたことで、デジタル化という視点では、今回の新型コロナウイルスの流行を前向きに捉える必要がある。今回の世界的流行が終息したとしても、もはや新たな変化としてのデジタル利用が打ち捨てられることは考えにくく、その意味で今回の新型コロナウイルス流行は、デジタル化社会への歴史的な転換点でもあると思われる。

新型コロナウイルス感染拡大を受けた世界のデジタル化の潮流

しかしながら、本来は全世界の国々で同じ効果をもたらすはずのデジタル技術も、今回の件では国によって、その取り組み、効果、迅速さには大きな差異が見られた。マスク不足対応における台湾の素早いスマートフォン活用、シンガポールなどで実用化された移動に伴う接触管理・警戒のためのスマートフォンシステム、人の移動を可視化したGoogleなどが新型コロナウイルス対策としてデジタルを利活用した代表例として挙げられるが、注目されるのが、アジア圏に特別な対応、素早い対応を実現した国々が複数あることである。中でも遠隔学習、感染関連の情報提供、要監視者追跡の自動化など、中国の先進的な取り組みが規模、速度、「思い切り」の点で注目される。
中国の取り組みについては、電子マネーや個人信用情報、スマートシティと無人店舗、5Gの先行的な導入と同じコンテクストで説明できるという声が多い。国が強い指導力を発揮すること、導入する速度が早いこと、不足点はあっても思い切った割り切りで導入し問題点を後からつぶしていくこと、などが特徴と言える。国情の違いを考えると、日本だけでなく欧米先進国においては、中国と同様の形での社会へのデジタル導入には難がある。しかしEUでは目下、新型コロナウイルスに関する位置情報ガイドライン策定において、従来よりも踏み込んだデータ収集を前提とする方向にあるなど、緊急事態における新たなプロトコルを平時のプロトコルと並んで必要と考える人が増えつつある。そして、これらの緊急時の新たなプロトコルは、新型コロナウイルスの流行が終息したとしても、経済的、社会的な平時の施策として残される可能性も無視できない。

日本におけるデジタル化の進展に向けて

所得などの各種補償におけるマイナンバー活用、給付金における電子マネーの利用(現金給付を自治体が個別に業務することの無駄、時間的なロスなどはさすがに無視できない)、異論は多くあるものの感染者との接触ルートに関する携帯電話などを利用した位置情報把握、学校教育における補完的な遠隔教育システムの導入といったことは、「アフターコロナ」においても必要性は高いと考えられる。これらはいずれも技術的な課題解決というより、利用者側のデジタルリテラシー向上、デバイド層への対処などが優先されるものである。
そして、今回の新型コロナウイルス感染防止対策における日本の取り組み全体を通じてあらためて確認できたのが、「実装」の重視、踏み込んで表現すると「蛮勇」の必要性であろう。「一人も取り残さない」と言ってレアケースを取り上げて延々と検討を続ける、「高齢者はスマートフォンを持っていない」と言って電子マネーなどの採用を遅らせる、「なんとなく怖い」と言ってマイナンバーカードをあえて持たないなど、こうした出来事の積み重ねが、少子高齢化で人手不足でありながら外国人労働力の受け入れにも出遅れている日本社会全体の前進、危機対応後の各種復興を妨げている。
もし、日本社会が高齢化によってデジタルリテラシーの高まりにくい構造になっているとしたら、スマートフォンを日常的に活用している若年層世代だけでも、マイナンバーの即時交付、税金や各種公共料金の電子マネー対応、各種公的申請などのスマートフォン対応などを進めて、生産性の向上分を優遇税制などに反映させてはどうだろうか。並行して、従来の手作業や非効率性に固執する人々には、非経済性に伴う各種ロスを負担してもらう。
社会の分断を恐れず、蛮勇をもって日本のデジタル化を進める必要がある。同様のことは、感染者との接触をスマートフォンのGPS、ブルートゥースなどで測定するようなプライバシーセンシティブなサービスにおいても進めるべきであり、医療費負担の軽減などで、社会的貢献に報いるといった仕組み、いわばデジタルに対応して社会の安心・安全に貢献した人々に、正しく報いる制度が望ましいと考えられる。

知的資産創造6月号 MESSAGE

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