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NRI トップ NRI JOURNAL XR技術とアートで魅力的な街をつくる――ヨコハマトリエンナーレ2020で次世代の価値伝達体験

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XR技術とアートで魅力的な街をつくる――ヨコハマトリエンナーレ2020で次世代の価値伝達体験

ビジネスIT推進部 入江 眞
ビジネスIT基盤推進部 石田 晴海

オープンイノベーション

スマートシティ

DX

2020/09/15

現実世界とミラーワールド(現実世界のすべてがデジタル化された世界)を融合させた、新しいユーザーエクスペリエンス(UX)を創出する試みが各国で始まっています。野村総合研究所(NRI)は1つのユースケース(活用事例)として、2020年開催の現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2020」でXR技術を用いた新しいアート体験づくりに挑みました。参加メンバーの入江眞と石田晴海に、意図や成果について聞きます。

  • AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)などの総称

技術的な一つの結束点として、時空を超えて立体情報を伝えられるメディア

――なぜアート作品にXR技術を使ってみようと思ったのですか。

入江:活版印刷の発明以降、情報は大衆化し、紙媒体、パソコン、スマートフォンなどのインターフェースが利用されてきました。しかし、現実世界の物・出来事を表現するとき、2次元に落とすので情報が劣化します。一方、3次元表現が可能なXR技術は、時間と空間を飛び越えてリアルな体験や価値情報を伝えられるメディアです。アート作品の中には何百年もの時空を越えて伝わってきたものもあり、XRとの親和性が高いと思いました。

第5世代移動通信技術(5G)、スマートグラスなどのXRデバイス、人工知能(AI)、インフラとなるAIクラウドなどの要素技術が揃い、空間コンピューティングによってミラーワールドと現実世界を重ね合わせる体験が可能になっているので、視覚だけでなく他の感覚も使った新しいアート体験を目指しました。

アニメーションや音声で新たな体験価値をつくる

――ヨコハマトリエンナーレでは具体的にどんな取り組みをしたのでしょうか。

石田:横浜市みなとみらいにある横浜美術館とプロット48という2会場で展示が行われたのですが、来訪者が行き来するには少し距離がありました。また、みなとみらいでは建築物を新設する際にアート作品を設置することになっていて、街中にパブリックアートが点在しています。そこで、最寄り駅から会場までの道案内をしながら、途中でもパブリックアートを楽しめるように企画しました。

入江:ポストカード上のQRコードを読み取るとアプリに接続し、みなとみらいの地図が出てきます。初めてみなとみらいを訪れた親子でも、楽しく街歩きしながら会場まで行けるように、日産自動車、京急電鉄、資生堂など民間企業が保有するアート作品をめぐるルート、カラフルなアートが楽しめるルートなど、会場まで何通りかの行き方が示されます。アーティストや所有者、作品の背景ストーリーといった作品解説だけでなく、「ARで見る」を選ぶと、ポストカード上に忠実に再現されたAR作品が浮かび上がる仕掛けも入れました。XR技術ならではの、現実には起こり得ない演出として、錨のオブジェが海の底に落ちる様子をアニメーションで再現したり、金属音を入れて臨場感を出すなど、子ども連れの家族にも楽しんでもらうことを意識しました。

石田:大きな作品は上から見たり、360度回転させることもできます。現地で楽しむほか、行く前に予習して気分を高めたり、好きなアートを家に持ち帰った気持ちになって、ポストカード上で鑑賞できるのも面白いところです。コロナ禍で開催が危ぶまれましたが、デジタルでの鑑賞体験を提供する試みは関係者の方々にも好評でした。

XR界隈のフラグシップの街をつくりたい

――開催決定が遅れたことで、開発に影響は出ませんでしたか。

入江:ヨコハマトリエンナーレ2020に関係する横浜美術館の方や、横浜市の方にヒアリングをした上で、ペルソナを設定し、エスノグラフィーやユーザインタビューを実施するなど、人間中心設計のアプローチでプロダクトのMVP(Minimum Viable Product)を定めた上で、関係者を巻き込むために事前にプロトタイプを作っていました。そのため、大まかな方向感はつかめていましたが、本格的な作り込みとして実質2カ月間で開発をすることになりました。開発手法としてはアジャイル/スクラムを採用し、動くモノをベースとしてアプリの評価、関係者調整を行うことで、短期間でのリリースが可能となりました。とはいえ、アート作品を3D化し、精度を高めて忠実に再現する部分(フォトグラメトリー)は難しかったです。開催日に間に合わせつつ、来場者への負担が少ない工夫としてPWA(プログレッシブ・ウェブ・アプリ)という仕組みを用いるのも初めてでした。

石田:従来のシステム開発はお客様のニーズや問題からはじまりますが、今回は「XRで何かできないか」というシーズ発想で、ゼロから創り出し、実装までやり遂げる経験ができました。XR技術で新しいものをつくりたい、他社連携を実現させたい、新しいビジネス創出の実地訓練の場としたい、純粋にアートが好きなど、いろいろな目的や動機を持ったメンバーが集まって自発的に取り組みました。外部企業との連携も含めて、多様なタレントの力が結集したからこそ実現した活動であり、「共創」の重要性と手ごたえを実感しました。

――今回の体験を今後にどう生かそうと考えていますか。

入江:3次元で立体感のあるメッセージを伝える媒体として、XRが1つ解になることが期待されています。横浜トリエンナーレの次回開催は3年後。横浜美術館も近々大規模改修工事のため休館するので、その空白期間にXR技術を使った価値提供ができればと思っています。また、今回の対象は9作品でしたが、街中のアート作品にも広げて、歴史や文化を知ってもらう機会を作ることで、街の魅力が再発見され、人々の行動様式や意識が変わるかもしれません。アプリで取得したデータを活用して商業施設のサービスを向上させるなど、XRというメディアを用いたデジタルマーケティングで良い循環を生み出し、みなとみらい地区の民間企業がうまいこと連携してXR界隈のフラグシップの街にできれば、カッコいいですよね。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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