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コロナ禍により求められるリーダー像

常務執行役員 コンサルティング事業本部長 立松 博史

#DX

#立松 博史

#新型コロナ

2020/10/19

コロナ禍を機に、経済・社会が大きく変わりつつある。この変化の多くは、過去からのトレンドが早送りされているものと、新たに変化の萌芽として出現してきたものとが混在していると感じる。
まず、非連続的ではなく加速化してきたものとして、デジタル技術を活用した多様なコミュニケーション手段の確立、在宅勤務や居住地近接型のワークスタイルの実現、遠隔医療やオンライン診療など多数存在している。ただし、これらの中には、古くからコンセプトが提示されてきたものの、これまで世の中のメインストリームにはならなかったものも少なくない。たとえば居住地近接型ワークスタイルは、バブル期にはサテライトオフィスの有効性が議論され、1991年には現在の日本テレワーク協会の前身で ある日本サテライトオフィス協会が設立されるなど大いに盛り上がったものの、その後、都心部に大規模オフィス供給が進み、業務機能の都心への一極集中が進展したため、当初想定していたような変化が実現しなかったことは周知のことである。

スパイラルアップ的に加速化するデジタル化

これまで、革新的な技術や製品・サービスが出現したとき、まずはイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる先駆的な企業や新しもの好きな消費者が活用し、徐々に社会に普及してマジョリティとなることにより、最終的に新しい文化や制度が形成されていくというプロセスをたどることが一般的であった。
一方、今回のコロナ禍では、突然、生活や働き方、移動が制限されたため、企業や個人の嗜好にかかわらず強制的にデジタルを活用した生活や働き方にならざるを得なくなり、それに伴って文化や人々のマインドが変化した。これまでの変革進展の順番が変わり、スパイラルアップ的にデジタル化が加速化する現象が生み出されていることが特徴である。
ただ、新しいデジタル技術が急速に普及したため、より効果的に機能させる上では社会や企業のルールが追いついておらず、技術に対してもさらなる投資が求められるようになってきている点に留意する必要がある。コロナ禍で多くの経済・社会活動がネット空間にシフトし、5Gなどの技術進歩と重なり合ってデジタル革命が不可逆的に進んでいるが、これがどのようなメリットを人間社会にもたらしてくれるのかは、まだ見えていない。

これからの時代に求められるリーダーとは

このような時代の中でリーダーはどうあるべきか。「加速化する過去からの変化」と「デジタル化による新たな変化」という二つの変化の波が重なり合って押し寄せてきたこと、さらに突如やってきたパンデミックが人類の力の限界を突きつけたことで、将来に対する不確実性と不安感が高まっている。
3密を前提に運営されていた事業モデルが崩れ、3 密の代替を提供可能とする新しいサービスが脚光を浴び、バリューチェーンの主役に浮上してくることが、さまざまな産業分野で起き始めている。このような波が自社に与えるインパクトを分析するとともに、事業機会を逃さないように能動的に働きかけていくことが求められる。
アフターコロナの将来の世界に対して、どうなるかを予測する議論が多くなされているが、起こり得る将来に対して受動的に対応するのではなく、この大きな変革期の課題にどうやって対応し、望ましい将来を構築するか、自ら能動的に働きかけていくことがリーダーの役割であろう。
テレワークの進展とそれに伴うさまざまな働き方の改革、雇用形態の変革などは既に始まっている。また、今回のパンデミックで明らかとなった教育や医療などデジタル化が遅れた公的サービス領域でのデジタル活用とそれに伴うルールの変更などは、規制緩和とさまざまな社会実験を繰り返しながら進展していくであろう。一方で、混乱や困難を生じる可能性が高いものとしては、経済困窮対策に対する支出の限界、自国優先主義などからくる地政学リスクの高まりなど、社会不安を増大させる将来も想定される。
このような蓋然性の高い将来に対しては、幾つかのシナリオを用意して、ヒステリックな対応に陥らないように周到に準備をしておく必要があるだろう。その上で、選択したシナリオに対して、その効果を最大化するために、どのような組織変革やメンバーの行動変化が必要となるかを提示し、障害となり得るものを見つけて対処することが求められる。

今回の危機であらわになったデジタル化の遅れをどう取り戻すか。不確実な将来に対して、良質な意思決定のための各種インフラや、それを推進していくための人材育成への投資を思い切って進めていくことがアフターコロナの成長基盤となる。リーダーの質が社会や組織の将来を大きく左右する時代となってきている。今こそリーダーシップの重要性があらためて浮かび上がっている。

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