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デジタル時代の人材マネジメント

コーポレートイノベーションコンサルティング部 内藤 琢磨

#経営

#DX

2020/11/13

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、デジタル人材の拡充について問題意識を持つ企業が増えています。しかし最大の鍵は、日本企業がこれまでやり残してきた人材・組織マネジメントの変革にあると、野村総合研究所(NRI)の内藤琢磨は考えています。デジタル時代に求められる人材・組織マネジメントについて聞きました。

グローバル化もデジタル化も構造的に変わらない

――コロナ禍でリモートワークが増えた結果、人事や組織に関する課題が顕在化してきているように感じます。

そうですね。単にデジタルを活用して業務環境を整えるだけでは不十分で、仕事のやり方や人材マネジメントを見直さなくてはならないと実感した企業が多いと思います。DXを進める中で、デジタル人材の不足がよく指摘されますが、これもデジタル化の問題だけでなく、過去に踏み込めなかった人材・組織マネジメントの課題のように見えます。

たとえば近年、グローバル化の文脈の中で、グローバル人材の確保が課題だと言われてきました。しかし、単に英語のできる人材を揃えるだけでは不十分で、グローバル・ビジネスを熟知したリーダーの確保、海外拠点と日本本社とのスムーズな連携、外国籍の優秀な人材を本社で活かす仕組みなど、全体的かつ抜本的な改革が求められました。

デジタル人材の議論もそれと構造的に変わりません。DXを成功させるためには、デジタル人材の獲得や育成だけでなく、既存の社内秩序を建設的に破壊できる経営人材や、デジタルとビジネスをつなげるブリッジパーソンの確保、さらにDXの下地づくり、つまりデジタルリテラシー向上のための教育システム、デジタル人材を適切に処遇する人事制度の整備などが必要です。

DXの最大の課題はリーダーシップ

――トップ、ミドル、ボトムという三層構造で見たときに、最も大きな課題を抱えているのはどこでしょうか。

トップ層です。昨年、NRIでデジタル化に関する組織・人事課題を調査したのですが、デジタル人材の獲得や処遇以上に、「デジタル化で何を目指すかというビジョンが明確ではない」「経営層のDXの経験値(知識、スキル)が乏しい」など、リーダーシップ課題に関する回答が6割以上にのぼりました。

とはいえ、デジタル化に対応した経営人材の育成は一朝一夕にできません。短期的には、デジタル化を推進する専門組織をつくり、DX経験の豊富な外部人材をチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)として外部から招聘するのも1つのやり方です。同時に、キャリアパスも含めて、従来の仕組みを全面的に見直す必要があります。若い頃からデジタル系の人材や組織を束ねたり、デジタルとビジネスを実際につなぐ組織で仕事をしたりする経験を積めれば、強いミドルリーダー層、デジタルに明るい経営層が育つはずです。効果が出るまでに5年や10年はかかりますが、今始めなければ、先行企業との差はさらに広がるでしょう。

「デジタル人材」をめぐる誤解

――デジタル人材が働きやすい環境づくりに関しては、何を考えるべきですか。

NRIが今年行った調査で、仕事をする上でのモチベーションの源泉は、デジタル人材と非デジタル人材とで違いがあるだけでなく、デジタル人材の間でも、職種、立場、役割によって異なることが確認されました。「デジタル人材」には、デジタルテクノロジーで事業を構想する人、デジタルデータを活用・分析して経営課題の解決策を提案する人、デジタルでお客様とのコミュニケーション接点を強化する情報システムを構築する人、セキュリティ面からデジタル・プラットフォームを保守・管理する人など、様々な職種や役割が含まれます。一括りにするのではなく、個別のニーズを見ながら対応していく必要があります。

実は報酬に関しては、デジタル人材よりも非デジタル人材のほうがその感度が高いこともわかりました。デジタル人材はどちらかというと、その企業にどのような存在意義があるのか、企業や世の中を変えるために自分がどう貢献できるかなど、仕事の意味づけや価値観への関心が強かったのです。報酬額を高くすればデジタル人材が来てくれるというのは誤解であり、それよりも、自社や組織の経営理念やビジョン・価値観を明確に打ち出し、適切にコミュニケーションしていくことが大切です。

DXのうち、「D(デジタル化)」は外部パートナーを起用するなどして対応できたとしても、「X(トランスフォーメーション)」には意識や風土の改革が求められ、一筋縄ではいきません。自社がデジタル化で何を実現させたいのかというビジョンを明確にするとともに、経営層が自らデジタルについて勉強し、苦労しながら向き合う姿を社員に見せて、デジタル化に対する不安を払拭することが重要です。そうしたトップ層の率先垂範が「X」の実現に向けた最初の一歩になると思います。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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