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テレワークとペルソナ

執行役員 NRIデジタル 取締役 清水 康次

働き方改革

2020/11/20

新型コロナウィルスの影響は社会の隅々にまで及び、本来はオリンピックイヤーであるはずの2020年は、違う意味で日本社会の分岐点として記憶される可能性が高い。今回、筆者は働き方改革の一つである「テレワーク」を取り上げたい。

テレワークの浸透とストレス

2017年の夏から政府は、東京オリンピック開催時の首都混雑回避のためにテレワークを推奨してきており、これまでもテレワーク・デイズのようなキャンペーン期間中にテレワークを何日間か実施したという人もいることだろう。しかし、今回思わぬ形で大多数の企業人が長期間、半ば強制的に、人によってはほぼ毎日テレワークを実施することになった。
企業の管理職の中には、Web会議で朝から夕方までパソコンの前で会議をしている、という方もいただろう。そういった方々は多くの場合、「家」で「本来オフィス(あるいは顧客先)にいるはず」の「複数の人物」と会話をすることになる。コロナ禍までのテレワークは機会が限定的であったが、ほぼすべてのコミュニケーションをWeb会議越しにこなすことになったわけだ。そういったケースで起こり得るストレスとして「ペルソナの切り替え」がある。
「ペルソナ」とはユングによって提唱された概念で、いわゆる「仮面」である。人は誰しも複数の仮面(ペルソナ)を使い分けて生活している。外界と協調して生活していく上では必須のものと言われ、外界(物理的な空間、周囲にいる人の種類、周囲にいる人の関係性)の変化によって意識しなくとも切り替えられるケースも多い。
ユングは舞台(特定のシーン)を離れても仮面を外せないこと、つまりペルソナの切り替えがうまくできないことはストレスになると唱えた。極端な例は、会社のペルソナを家庭に持ち込み、会社での言動パターンを変えられないなどである。
既に「テレワークうつ」という言葉も生まれ、そこまでいかなくとも多くのストレスを抱えている方もいるだろう。今回のコロナ禍で、長期にわたるテレワークを否応なしに実施してきた人々が経験したストレスとして、物理的な移動と同時に切り替えてきたペルソナを同一空間でうまく切り替えられないケース(舞台とペルソナのアンマッチ)と、その相手が感じるストレスが多いのではないだろうか。

「ペルソナの切り替え」による円滑なコミュニケーション

ほかにもテレワークに起因するストレスはあるだろうが、われわれのペルソナの切り替えは思った以上に舞台、つまり物理的な空間に依存してきたことを実感した方もいるだろう。これらを解消するためには、切り替えスイッチの種類を増やすことが一つの策となる。平日に「家庭」と「オフィス」との物理的な移動をせず、複数のペルソナをマネジメントしなければならない。
適切なペルソナの使い分けは、人間の心身の健康に役立っているともいう。つまり、スムーズにペルソナを切り替えられれば、本人とその相手はストレスを減らすことができるのである。今後は物理空間に依存せずに「必要に応じてペルソナを切り替える」ことが円滑なコミュニケーションをする上での一つのスキルになるであろう。

複数ペルソナの切り替えに関する良い意味での副産物の可能性に触れておきたい。
現代のビジネス社会では、世代間、あるいは個人の環境に配慮した複雑なコミュニケーションが要求されるようになっている。ペルソナの数は物理的な空間どころではなく、相対する人物ごとに切り替えが必要な勢いである。さらに同一の相手でもシーンによっても使い分けが必要となるであろう。
相対する人によって態度や言い方が異なるというのは通常、悪い意味でつかわれることが多いが、丁寧なコミュニケーションにはこの「相手とシーンによって切り替えること」はむしろ必須である。
自己の中に積極的に複数のペルソナを出現させ、それを成長させ、さらにこれを自在に操ることができれば、自身だけでなく、周囲のペルソナの切り替えを促す可能性もあり、より外界との摩擦を減少させられるのではないか。決して特別なことではなく、誰もが気づくと切り替えている。これをより意識的に行うスキルを身につけ、やがてそれが意識下に沈み、自然体でできるようになる。
コロナ禍が去った後も、テレワークの多くのメリットに気づいた企業人は元の姿に戻ることはないだろう。そして、企業もそのことに気づいている。2020年を境として、社会はテレワークという勤務形態と共存していくことになるだろう。
テレワークでのコミュニケーションは難しい面があることは否めないが、それを逆手に取り、適切にペルソナを切り替えるスキルを磨き、むしろ丁寧で一人一人に対応した円滑なコミュニケーションスキルの向上につながる、と 考えるのは楽観的過ぎるだろうか。

知的資産創造9月号 MESSAGE

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