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国・地方自治体のデジタル化で創造するポストコロナ時代のより良い未来

社会システムコンサルティング部 水石 仁

DX

政策提言

2020/12/01

新型コロナウイルス感染症に対し、世界各国・地域は、さまざまな判断と施策を短時間のうちに行うことを求められました。そこで明らかになったのは、緊急時の対応スピードの重要性です。今後、感染対策と経済対策の両立に向けた難しい舵取りが求められる中、日本の国や地方自治体のデジタル化は急務であると、野村総合研究所の水石仁は考えています。公共政策に長年たずさわってきた水石に話を聞きました。

新型コロナウイルス感染症への対応における最大の教訓は緊急時の対応スピード

新型コロナウイルス感染症への世界各国・地域の対応状況を見ると、有効な対策を早期に実行した国・地域では感染者増の抑制に成功していることが分かります。

例えば台湾は、2003年にSARSの流行を経験していることもあり、2019年の年末の時点から検疫を開始し、1月下旬からは入国制限を開始。2月中旬には外出自粛を要請し、2月下旬にはPCR検査体制を構築しました。その結果、台湾がコロナウイルス感染症の抑え込みに大きな成功を収めたことは、よく知られています。

韓国もMERSの教訓を活かして、2020年2月初めから検査体制や接触者の追跡、隔離なども徹底し、感染抑制に成功しました。さらに、3月初旬から外出自粛要請も行いました。

感染拡大国の実質GDPの成長率は、対前年同期比で大幅にマイナスとなっていますが、感染抑制に成功した台湾や韓国は、経済への影響を小幅なものに抑えています。

新型コロナウイルスへの対応において、日本の国や地方自治体は、未曾有の事態の中で感染対策と経済対策を両立する難しい舵取りを求められてきました。その中で得られた最大の教訓は、対応スピードの重要性だと考えられます。

求められるのはスピーディな意思決定と臨機応変な方策変更の両立

NRIでは、国内における新型コロナ関連施策に対する市民の声を把握するため、2020年8月に「新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査」を行い、ソーシャルリスニング※1の手法で分析しました。

これによると、「布マスクの配布」については、政府発表から配布が10%完了するまでの1カ月半の間に「遅い」「不要」の声が急増するなど、スピードに関するネガティブな反応が特に大きかったことが分かりました。さらに「10万円給付」についても対応スピードに対する不満が最も多く、大都市を中心とした給付の遅れによりスピードや手続きに関しての負の感情が増加したことが判明しました。

一方で、都道府県による「外出自粛要請」については、正の感情と負の感情が同程度を占め、独自基準で素早く対応した北海道・大阪では、外出自粛要請に対してポジティブな反応がネガティブな反応を上回りました。

ここから分かるのは、国や地方自治体は、今起きている事象を的確に読み解き、最善と考えられる意思決定を可能な限り速く行うとともに、初期の仮説や判断にこだわらず、状況に応じて臨機応変に方策を変えていくことが重要だということです。

  • 1 ソーシャルリスニング:インターネット上のメディアで人々の日常的な会話や自然な行動に関するデータを自動的・機械的に収集し、その分析結果によって業界動向把握やトレンド予測、自社・ブランド・商品に対する評価・評判の理解や改善に活かす手法

政策決定や事業執行のスピードを高める上で求められるデジタル化の推進

ポストコロナ時代に向けて、国や地方自治体には、従来の公共的役割を維持しつつ、政策決定や事業執行のスピードを高めるために、デジタル化の推進が求められます。方向性としては、①即時性の高い継続的なデジタルモニタリングによる「エビデンスベース」の政策決定、②デジタル技術の活用により市民が政策決定に主体的に参画する「シビックテック」の推進、③ビッグデータやIoT、AI等を活用し価値を共創する「新しい官民連携」の模索、④デジタル領域における実験的・挑戦的な仕掛けを可能とする「政策ポートフォリオ」策定、の4つです。

①について、すでに政府は、「統計改革推進会議最終取りまとめ」等を踏まえ、EBPM(Evidence-based Policy Making、エビデンスに基づく政策立案)を推進中ですが、これにIoT機器やSNS、POSデータなどから得られる「オルタナティブデータ」を活用すれば、さらなるEBPMの加速が可能です。

②の「シビックテック」については、Code for Japan※2が企業や行政・自治体と連携し、「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」を短期間で構築したことはよく知られるところです。

また、③「新しい官民連携」では、厚生労働省がLINEと連携してクラスター対策のための情報収集・提供を実施し、わずか2日間で2,000~2,500万人の実態を把握しています。

さらに、今後の不確実で変化の激しい社会においては、変化の予兆を捉えて④「政策ポートフォリオ」を構築し、継続的な実験・実証の中で有望なものをさらに拡大展開することが求められます。研究開発やスタートアップの支援では成功を100%担保することは不可能であることから、一定程度の失敗を折り込んだ「政策ポートフォリオ」を定めることが重要です。

  • 2 Code for Japan:市民が主体となり、「ITを使って創造的に社会をアップデートする」ことを働きかけるシビックテックの団体

3つのデジタル基盤整備による新しい成長戦略

以上4つの方向性に共通するのは、デジタル技術の重要性です。コロナ禍での政策事業推進において、デジタル技術の活用は不可欠でしょう。このような中、3つのデジタル基盤整備が期待されます。第1は、共通デジタルIDであるマイナンバーカードの普及で、これには「マイナポイント事業」によるマイナンバーカード交付の後押しと、運転免許証、国家資格証等との一体化による利便性向上が求められます。

第2は、デジタルガバメント(電子政府)の推進です。市民の生活満足度や企業の生産性向上の視点を踏まえたグランドデザインのもと、あらゆる行政手続きを完全電子化することで、迅速な事業執行が可能になります。

第3は、地方におけるデジタル化の推進です。例えば、都心部ではテレワークが一気に進みましたが、地方での実施率は2~3割程度。企業側のデジタル活用度の向上によるデジタルケイパビリティの向上が期待されます。

NRIの調査研究では、デジタル活用度合いの高い生活者ほど生活の満足度が高いことが分かっており、デジタル技術の活用による施策の迅速な実行は、市民のさらなる満足度向上にもつながると考えています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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