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ポストコロナ時代の社会・経済のあり方とは――NRI未来創発フォーラム2020を開催

DX

2020/12/23

2020年10月5日、野村総合研究所(NRI)は「NRI未来創発フォーラム2020」を開催しました。新型コロナウイルスによって世界が未曾有の危機にさらされた本年は「新型コロナウイルスと経済社会のパラダイムシフト」をテーマに設定し、デジタル化の急進展が我々の生活や仕事、価値観に及ぼす影響を分析するとともに、ポストコロナ時代のビジネスのあり方、デジタル社会資本整備の重要性について提言を行いました。
また、有識者を招いた特別講演や対談を通じて、ポストコロナ時代に向けた社会・経済のあり方を考察しました。

時間と空間を超越した「生活の豊かさ」が重視される時代へ

はじめに、NRI代表取締役会長兼社長此本臣吾が登壇し、「ポストコロナ時代に向けたデジタル社会資本の整備」と題して基調講演を行いました。

世界の四半期GDPを見ると、コロナ禍によって先進国も新興国も軒並み大きなダメージを受けています。また日本経済の回復力については欧米より弱いという予測が出ているなど、コロナ禍の影響は今後も長引くと考えられます。
コロナ禍は経済活動を停滞させると同時に、「時間の解放」と「空間の解放」という2つのパラダイムシフトを生み出しました。此本は、「テレワークによって通勤や移動の時間が激減し、個人のいわば“可処分時間”が大幅に増加した。また、移動自粛という劇的な行動変容によるオンライン化(非対面)の促進が生んだ空間の解放は、オンラインストア事業の売上増加やエンタメビジネスの集客力拡大などにその影響を見てとることができる」と分析。
NRIの概算では、テレワークで解放された通勤時間は日本全体で1日あたり373万時間、この可処分時間増によって年間2.2兆円の追加消費が生み出される可能性があります。

2020年7月にNRIが行った調査によると、日本では従業員1,000人以上の大企業のほぼ半数、日本全体では約3割の従業員がテレワークを経験しています。
テレワークに金銭的な価値を見出している人も一定数います。「在宅勤務を選択・継続できるなら、収入が下がってもよいか」との質問には、子育て世代を中心に約25%が減ってもよいと回答し、その平均額は12,758円/月でした。これは日本企業の1人あたりの法定外福利費25,369円/月の約半額に相当します。

テレワークによる生産性の低下がしばしば指摘されますが、NRI社内での実証実験ではテレワークによる生産性低下の影響は限定的で、むしろワークライフバランスが改善することで生産性向上に結びつくという側面も見られました。此本は、「コミュニケーションの劣化を防ぐための現場レベルでの創意工夫や、テレワークと適度な出社とを組み合わせた新しい働き方の模索が重要だ」と強調します。

米国では、オンライン化という「空間の解放」によってオンラインビジネスが急拡大し、D2C(Direct to Consumer)ブランドが多数登場しています。「Shopify」のようなD2Cビジネスを支えるプラットフォームが出現したことで、アパレル、食品など、様々なカテゴリー特化型D2Cビジネスが急速に台頭していることに対して、此本は「“ここにしかない体験価値”を演出することで濃密なカルチャーやコミュニティを形成し、次々と価値を付加して新たな需要を喚起するビジネスモデルが、ポストコロナ時代の新しい潮流となるだろう」と分析します。

日本では、政権によるデジタル政策の強力な推進が期待されていますが、マイナンバーカードの普及状況は2,469万枚(2020年9月現在)と、めどとしている普及率30%(約4,000万枚)には及んでいません。国民のデジタルID整備の壁を突破しなければ、国や地方自治体のデジタル化が進みません。
NRIが昨年提案したデジタル経済社会度の評価指標「DCI」(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)の最新数値では、東京都と他県で最も開きがあるのはIT関連の「人的資本」という結果が出ました。地方圏のデジタル人的資本の底上げには、大都市圏の企業や中央官庁からの人材派遣などが重要施策であり、新たな財源措置が必要だと考えられます。

20世紀までの産業社会資本とは、時間距離を短縮するためのインフラ投資であり、これが企業の大量生産技術と組み合わされて、量的な経済拡大が進みました。21世紀のデジタル社会資本が目指すものは時間や空間の超越です。人々が時間や空間にとらわれずに経済社会活動に従事し、身体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態(ウェルビーイング)を維持向上させる、「生活の豊かさ」が重視されます。
此本は「今の日本に重要なのは、コロナ禍をきっかけにした新しい社会はどういう方向性を持つのかという大きな構想を整理することだ」と強調し、講演を締めくくりました。

ポストコロナのニューノーマルを展望する

続いて、ニューヨーク大学スターンビジネス・スクール教授のアルン・スンドララジャン氏による特別講演「ポストコロナ時代のニューノーマル」がビデオ上映されました。

「コロナ危機による様々な社会変化は、ポストコロナ時代の“ニューノーマル”を指し示している」と指摘する教授は、それを理解するために必要なこととして、技術の変化、テクノミック(技術変化を促進する経済的な要因)、制度の変化(労働市場や政治的な要因)に加え、「最も重要なのはすでに起きている行動変容だ。食事をネット注文したり、オンラインで会議や授業を行ったりしてみると、コロナ危機が去った後もそれが普通のこととして生活に根付いていくだろう」と述べました。

デジタルによるニューノーマルは、小売業、飲食業、観光業、ヘルスケア産業、教育産業など、様々なビジネス分野で見ることができます。ニューノーマルを定義するキーワードとして、「デジタル」「適応力」「レジリエンス(強靭性)」「多角化」の4つを挙げました。
「デジタル空間を介した人と人との触れ合いが、デジタルの重要なテーマとなるだろう。企業は予期せぬ経済状況や新たなビジネス環境への適応が求められ、コストの最小化、経済効率最大化のための投資は減り、レジリエンス強化のための投資が増えると考えられる。ビジネスモデルを再構築する動きが強まり、経済の不確実性に対するレジリエンス強化のために、業態の多角化を目指す必要が強まるだろう」。

人と人が触れ合う空間が加速度的にデジタルに移行するのに伴い、デジタル世界のしくみを再設計する必要性にも言及し、「私たちは数百年かけて政治や経済のしくみを慎重に設計してきたにも関わらず、デジタル世界の制度設計には全く時間をかけてきていない。私たちが望むデジタル世界を、意識的にデザインしていくことが必要だ」と強調しました。

ビジネスに求められる長期的価値の視点と柔軟で新しい働き方

最後に、世界経済フォーラム※1日本代表の江田麻季子氏と此本が、ポストコロナ時代のビジネスのあり方や働き方について特別対談を行いました。

世界経済フォーラムの創設者クラウス・シュワブ博士がコロナ後の世界を読み解いた近著『グレート・リセット』について、「世界を危機に陥れたコロナ禍を、私たちが世界について再考し、リセットするための貴重な機会でもあると捉え、より豊かで明るい未来を創造していこうと訴えている」と江田氏。

此本は「日本企業にとってESG※2やSDGs※3はいまや大きな経営テーマだが、まず本来あるべき社会の姿を描き、そこからバックキャストして自分たちは何ができるか議論する姿勢が弱いと感じる。グローバルな視点から様々な刺激を取り込んでいく必要がある」と指摘。江田氏は賛意を示し、「地球規模の課題を包括的に良い方向にもっていくためには、企業の役割にも短期的な利益だけではなく長期的価値の視点が必要。この過渡期をいかにかじ取りするか、世界中の経営者が活発に議論しているので、日本企業も声をあげてほしい」と述べました。

「日本がテレワークを取り入れた新しい働き方を定着させていくには、どんなことが必要だと思うか」と意見を求めた此本に対し、「女性と男性が家事や教育、介護などを共有すること」と語った江田氏は、「実際に仕事と家庭のバランスをとる中で、柔軟な新しい働き方の必要性が認識されていくだろう。他社もやっているからという同調圧力ではいずれ元に戻ってしまう。従業員やその家族がより幸せになる働き方に変えていくには、経営者の判断が肝心だ」と続けました。
これを受けて此本は、「テレワークでなければできなかったこと、テレワークであったからこそできたことの価値を、皆が認識することが必要だ」と締めくくり、フォーラムは幕を閉じました。

***

今回の未来創発フォーラムは、新型コロナウイルスの影響によりこれまでの開催方式を変更し、会場とオンラインのハイブリッド開催としました。会場では入念な感染症予防対策を実施し、ソーシャルディスタンスを確保するため聴講人数を制限した一方で、オンラインによるライブ配信では多数の方にご視聴いただきました。来場者にも検温、消毒、マスク着用にご協力いただき、無事に開催することができました。

  • 1 世界経済フォーラム:1971年に創設され、政府・民間企業・市民(国際機関、学術機関、NGOなどを含む)の三者が集まり、アジェンダ(行動計画)に基づいて地球規模の課題を解決しようとする、非営利の国際機関。
  • 2 ESG:企業または企業への投資の持続可能性と社会的影響を測定する3つの中心的な要素環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のこと。
  • 3 SDGs:2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。

未来創発フォーラム動画

ダイジェスト(2:46)

基調講演(1:07:13)

特別対談(44:55)

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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