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NRI トップ NRI JOURNAL 『ITナビゲーター2021年版』――2026年度までの市場トレンド予測

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『ITナビゲーター2021年版』――2026年度までの市場トレンド予測

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部長 三宅 洋一郎
ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 木村 賢次、土橋 和成、夛屋 早百合、田中 曜子
監修:コンサルティング事業本部 パートナー 北 俊一

#DX

2021/02/12

野村総合研究所(NRI)では毎年、IT市場を展望し、これからのビジネスモデルの可能性を洞察する『ITナビゲーター』を出版しています。2021年版では、29分野の市場規模予測に加え、ニューノーマルに関連する6つのトピックを解説しました。今回、特に注目される分野の最新動向と今後の見通しについて、コンサルティング事業本部の三宅洋一郎、木村賢次、土橋和成、夛屋早百合、田中曜子が紹介します。

IT産業にとって新型コロナウイルスの感染拡大は追い風となった面も――三宅 洋一郎

NRIは、2000年からIT市場の動向を分析・予測する『ITナビゲーター』を制作しており、2020年12月17日に発刊した『ITナビゲーター2021年版』で20冊目となりました。

2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、その影響はまだ続いています。人びとがコロナウイルス対策のために行動を大きく変化させ、オンラインで済む買い物や手続きはオンラインで行うようになりました。そういった意味で、IT産業にとってコロナ禍は追い風となった側面もあります。

業種別では不動産テックが一番伸びています。ITの導入が遅れていた不動産業界ですが、コロナ禍をきっかけに積極的にITの活用を進めました。

次に伸びたのが高機能テレビで、オリンピックへの期待もあり4K、8Kテレビが普及しました。また、動画配信市場も伸びており、巣ごもり消費を背景に映画や音楽の動画配信サービスの利用が増えました。

つまり、コロナ禍により人びとはデジタルサービスを利用せざるを得なくなり、各サービスやそれを支えるインフラが普及したと言えます。

中容量プランと低料金プランで二極化する「通信市場」――木村 賢次

通信市場は直近では、携帯電話料金の値下げによって、メインブランドとサブブランドの違いはあるものの、中容量プランが主戦場になり、通信品質を重視する消費者と価格コンシャスな消費者との二極化が進んでいることが話題となりました。

一般の企業や自治体が自ら構築・運用可能で局所的な5Gネットワークであるローカル5Gの分野では、開局申請が2019年度後半に開始され、2020年度本格的に始動しました。しかし、使用する周波数帯の関係でネットワークの設計・運用に技術的課題があり、Wi-Fi等でも回線として対応可能であるため、ローカル5Gの通信インフラ市場規模は、2020年度には各地域の開発実証等による約60億円、2026年度で180億円にとどまると予測しています。

5Gが社会・産業基盤として花開くのは2030年代になると予想されますが、2020年代はその助走となるでしょう。5Gがあらゆる分野・地域において浸透した後は、通信市場において「Beyond 5G」への期待が高まっていくと考えられます。「Beyond5G Ready」を旗印に、6Gに向けて産官学一体で「グローバル・ファースト」「イノベーション」「集中配分」で取り組み、ICTインフラの整備を含む社会全体のデジタル化が集中的に推進される見込みです。

追い風だけではなく、向かい風の影響もあった「EC市場」――土橋 和成

コロナ禍においては、家計の防衛意識の高まりもあって財布の紐が堅くなり、消費支出は縮小する傾向にあります。

リアルの小売市場においては、休業などを余儀なくされたものの、ホームセンターではDIY関連用品やキャンプ用品の需要が拡大したことに加え、密を避けられる郊外型立地のため客足を維持できました。一方、百貨店やショッピングセンターは、商品が嗜好品主軸であることから消費引き締めの影響が大きく現れた上に、人が密になりやすい都市型の立地も回復を遅らせる要因になりました。

こうした中、リアルな接触を避けることのできるEC市場は、消費支出自体が縮小する状況でもオンラインシフトが進み、物販系が拡大しましたが、一方で、オンラインでの航空券販売、リアルイベントのチケット販売などは需要そのものが縮小するなど、追い風と向かい風の両側面がありました。

巣ごもり消費により大きく市場が拡大した「動画配信市場」と、変革を促される「放送市場」――田中 曜子

有料動画配信市場は、在宅で楽しめる「巣ごもり消費」の1つとして人気が高まり、大きく拡大しました。

オンラインでのコンテンツ視聴形態は、「個人視聴」から「家族視聴」へと変化し、この傾向は一度緊急事態宣言が解除された2020年7月時点でも続いていました。また、「リアルからネット配信へ」という支出意識の変化は続いており、特に若年層で支出意向が高く、これからの市場拡大が期待できます。支出のネットシフトは30代以降でも定着しています。

強力なコンテンツを持つディズニーは、自前で配信プラットフォームを提供し、コンテンツを消費者に直接届けるD2Cを本格化しました。2020年に劇場公開予定だった「ムーラン」に続き、アニメ映画「ソウル(邦題はソウルフル・ワールド)」も直営の動画配信サービス「ディズニープラス」で先行公開しています。

今後は、動画配信事業者にはオンライン配信「ならでは」の付加価値となる機能の磨き上げが、放送局には配信だからこそできる視聴者のニーズ変化への対応や視聴者との接点拡大が求められます。

コロナ禍に対応できず、早急に実現が求められる「自治体DX」――夛屋 早百合

緊急事態宣言発出中も、行政サービスの問い合わせや手続き、行政文書の取得・提出のために役所に行かなければいけない人がいました。2020年は、まさに行政手続きのオンライン化に係る課題が露呈した1年と言えます。

自治体DXを「デジタル技術を用いた自治体業務の効率化、高度化の取り組み」として捉えた場合、マイナンバー法の制限がかからない業務や、住民とのインターフェースにおける自治体DXはすでに多くの自治体で取り組まれています。しかし、各自治体がそれぞれシステムを開発して所有している状況にあります。新設されるデジタル庁が、地方自治の裁量を認めつつ、自治体の情報システムの標準化に向けた司令塔となれるかどうかが、自治体DXのカギを握ると考えられます。

自治体DXの本丸ともいえるマイナンバー制度も、コロナの影響を受けて大きく変わろうとしています。マイナンバーカードの交付は前年度比で約2倍のペースで進んでいます。また、令和2年12月には、政府から今後5年間を集中期間とした、マイナンバー制度の見直しに向けた工程表が示されました。行政を含むあらゆる分野において、マイナンバー制度を基盤としたシステムヘの変革が進み、公共サービスに近接した、医療・金融分野では、新たなビジネス機会が創出される可能性があります。

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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