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アフターコロナの先に豊かな社会を

執行役員 金融ソリューション事業本部 副本部長 小池 裕

#時事解説

#DX

#政策提言

#新型コロナ

#価値共創

2021/02/19

新型コロナウイルスの世界的流行により、私たちの生活様式は一変し、多くの社会的課題が浮き彫りになっている。これからの私たちに求められるのは、この世界規模の大転換期に、コロナ前の価値観や思考、そしてルールを見直し、アフターコロナの先にある持続可能で豊かな社会をどう実現するかを考えることではないだろうか。

デジタル技術の活用によりBuild Back Betterを推進

日本は現在、東京一極集中、人口減少、少子高齢化、エネルギー問題などといった先進国特有の課題から地政学的な課題、自然災害に至るまで、多くの課題が山積し、長期化している。そうした状況下にある日本においても、コロナ禍での移動自粛によりテレワークが急速に進んだ。重要なことは、テレワークの進展を可能としたデジタルインフラとデジタル技術が東京一極集中や労働力不足などの社会的課題の解決だけでなく、事業継続性の確保やワークライフバランスの実現など、企業や個人レベルの課題までも解決する可能性が見えてきたことだ。
数カ月間の緊急事態宣言下に起きた、数年分のデジタル化の進展や、ステイホームやマスク着用率に見られる自主性に基づく新たな行動様式といった日本らしい適応力をもってすれば、コロナ前の経済状態に復興するだけでなく、社会的課題を能動的に解決し、持続可能な社会を実現するBuild Back Betterを目指せるのではないだろうか。

その目指すべき社会をより具体化したもの が、SDGs(持続可能な開発目標)の実現のため、2016年に閣議決定されたSociety5.0である。経済発展と社会的課題の解決を両立するというビジョンの下、「データ駆動型社会」そして 「人間中心の社会」の実現を目指すものである。
データ駆動型社会とは、現実空間で起きた出来事をIoTデバイス・センサーからデータ化して、仮想空間に持ち込み、人工知能(AI)による分析を通じて、その結果を情報や知識という形で現実空間に戻して活用していくというサイクルを持った社会である。これまで人間だけでは解決できなかった社会的課題が、現実空間と仮想空間を高度に融合させたシステムにより解決されることが期待できる。
たとえば、自動運転技術とIoTによる道路状況のデータ化の組み合わせによる渋滞やCO2排出問題の解消、医師による遠隔医療やロボットによる高齢者ケアにより医療現場における人手不足解消や医療コスト削減を実現することが可能となる。そして、人間中心の社会とは、デジタル技術はあくまでも手段であり、人々がデジタル技術を道具として活用することにより誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる社会を目指すということである。この人間中心の社会を合わせて掲げているところが、重要なポイントである。

Society5.0実現に向けた課題と乗り越えるための二つのチェンジ

Society5.0の実現に向けたデジタル技術活用の動きは、さまざまな分野で始まりつつあるが、Society5.0を現実のものとするためには、乗り越えるべき課題が幾つもある。諸外国との比較で言えば、Society5.0実現の鍵となるデジタル技術を生み出すための教育や研究開発の遅れやGAFAのようなデータ駆動型のビジネスモデルで大きく先行するプラットフォーマーによるデータの囲い込み、内に目を転じれば、個人情報・プライバシー、AIと倫理、サイバーセキュリティ、雇用といった課題だ。
こういったさまざまな課題を乗り越えていくためには、二つの大きなチェンジが必要であると考える。
一つは、よりよいパラダイムシフトを起こすために、多種多様な人材や課題解決のアプローチを受け入れることができる、より柔軟な思考を私たちが持つことである。既に産業分野のみ ならず、医療、教育、行政でも従来のやり方にとらわれず、デジタルシフトへ創意工夫で踏み出しており、一過性ではない、継続した取り組みが期待される。
二つ目は、データ利活用とプライバシー保護に配慮したデータの民主的な利用の推進である。強力な政府によってデータ監視される社会とは異なり、自主的にステイホームやテレワー クを進めることができた私たちには、データを民主的に利用できる能力が備わっているのではないだろうか。データ駆動型社会では私たちの行動や思考がすべての起点となり、それがデー タとして蓄積され、その分析結果を社会的課題の解決や私たちの豊かな生活につなげることができる。こういった未来社会においてデータの民主的な利用をどう進めるかを決めるのは、そ の中心にいる私たちなのである。

新型コロナウイルスによる未曽有の危機に直面している今だからこそ、SDGsやSociety5.0の意義を再認識し、アフターコロナの先にある豊かな社会の実現に向けてBuild Back Betterができるのではないか。そして課題先進国である日本が、そこで生まれた技術やサービスにより世界に大きく貢献することを切に願う。

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