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人手不足解消とビジネスチャンス拡大の切り札、小売業ロボット~店舗をまるごと自動販売機化~

AIソリューション開発部 廣戸 健一郎、嶋田 晴貴、加藤 康史郎

#AI

#イノベーション

#ビジネスモデル変革

#消費財・流通

#価値共創

2021/02/26

少子高齢化が世界一速いスピードで進む日本では、労働力不足が大きな社会問題となることが確実視されています。野村総合研究所(NRI)では、この問題を解決するソリューション開発の一環として、小売店を無人化するためのロボットの研究を続けています。その具体的な内容について、2~3年後の実用化を目指して研究開発を続けているAIソリューション開発部の廣戸健一郎、嶋田晴貴、加藤康史郎に話を聞きました。

深刻な労働力不足が心配される今後の日本における小売業ロボットの有用性

新型コロナウイルス流行の第3波、それに伴う2度目の緊急事態宣言などの影響で、2021年に入ってから休業者や失業者が増加しているとみられます。しかし、感染が小康状態でGoToトラベルが実施されていた2020年11月頃の休業者と失業者の数は、コロナ禍以前の2019年12月比で39万人増のところまで戻っていました。生産年齢人口が毎年50万人近く減少している日本では、今後、感染が小康状態になるとそれだけで労働市場がタイトになることが予想され、コロナ禍が終息した後は深刻な人手不足となることが懸念されます。
NRIは、人手不足が顕在化していた小売業をターゲットに、夜間など人手をかけられない時間帯の店舗を大きな自動販売機にするというコンセプトで、ロボットの研究開発を続けてきました。買い物客が店舗内を歩いて商品をピックアップする行為を、ロボットが代わりに行って買い物客に渡すことで、既存の店舗の改修を最小限に抑えながら無人化を実現しようとするものです。
現在は実用化に向けて細かな技術的課題の解決に取り組んでいる段階ですが、このロボットは人手不足解消だけではなく、ビジネスチャンス拡大にも大きく貢献できる可能性があるものと考えています。

小売業ロボットの利用イメージと、そのアドバンテージ

小売業ロボットの利用イメージはシンプルです。買い物客がスマートフォンのアプリで商品を注文すると、店舗にいるロボットが商品のピックアップを開始し、集めた商品を受渡しボックスに納めます。買い物客は事前にスマートフォンで、もしくは店頭で支払いを済ませたら受渡しボックスから商品を取り出して持ち帰るだけ。店舗に来る前に注文しておけば、待ち時間もありません。
無人型店舗というとレジがなく、買い物客が棚から商品をピックアップして帰るだけで自動的に支払いが完了するamazon goのような店舗をイメージする人が多いかもしれません。しかし、amazon go型の店舗の場合、天井や棚などに大量のカメラやセンサーを配置しなくてはならず、一足飛びにamazon go型の店舗が普及することは難しいと考えられます。一方、小売業ロボットであれば、買い物客が多い時間帯にはこれまで同様に店員が接客を行い、マンパワーが不足する深夜には防犯のために出入口を閉めて販売はロボットが対応し、店員は翌朝に向けた品出しや清掃作業に従事するなど、臨機応変な運用が可能です。
また、ドラッグストアやスーパーなどで現在は夜間に店を閉めている店舗でも、小売業ロボットを導入することで、最小限のコストで営業時間を拡大させることが可能になります。これまではバックヤードの作業しか行えなかった時間帯を収益のチャンスに変える可能性が広がることも、小売業ロボットのアドバンテージといえるでしょう。

ロボットの構成

  • ①  

    AGV(Automated Guided Vehicle):自律的に店内を動き回る台車部分。ピックアップされた商品を背中に乗せて受渡しボックスまで運ぶ

  • ②  

    イメージセンサー:注文された商品の正確な位置を割り出すセンサー部分

  • ③  

    ロボットアーム:商品をつかむアーム。先端にある2本の吸着パッドがつくる空気圧の力で商品をピックアップする

課題をAIで解決して小売業を支える

小売店で販売される商品は種類が多いだけでなく、例えば、同じスナック菓子のA味とB味のパッケージデザインにはわずかな差しかない、消費者を飽きさせないためにデザイン自体が頻繁に変わる、パッケージの形・大きさ・重さがさまざまである、など、注文された商品を間違いなくチョイスするには高度な画像処理に基づく正確な認識能力が必要です。
また、狭い通路を効率よく移動し、棚にぎっしりと並んだ商品の中から目的のものだけをピックアップするためには高い制御技術も必要です。私たちはこのチャレンジに対し、最新のAIを駆使し、NRIがこれまでに培ってきた技術と、この取り組みで得た新たな知見を取り入れることで、実用化への道を着実に歩んでいます。
すでに、汎用的な課題の多くは解決のめどが立ちつつあります。そのため、次のステップはパートナーと具体的なターゲットを定めて、個別にチューニングしていくフェーズとなります。実際にお店に導入するためには、99%の成功確率を限りなく100%に近づけなくてはなりません。同時に、扱う商品の数と種類をある程度のところで割り切ってでも、まずは現場で使ってみることが重要ではないかとも考えています。現在、私たちは、一緒に実験をおこなっていただけるパートナーを探しており、3月9日から始まるリテールテックへの出展を予定しています
最初は店員が伴走する形での導入になるかもしれませんが、その中でさらに技術を磨いて本当の無人化を実現したい。いずれはそれを横展開することで、日本の小売業を支えていきたい。そのようなビジョンを描いています。

  •   今回、研究開発した小売業ロボットを、2021年3月9日(火)~12日(金)に開催されるリテールテックJAPANに出展予定です。現地では、小売店での活用をイメージして、利用者によるオーダーから、ロボットによる店頭の受け渡しまでをご体験いただけます。ご興味のある方は、ぜひご来場いただければと思います。詳細は、下記をご参照ください。

AI tech lab. 小売業ロボットの研究開発をリテールテックに出展(3月9日~12日)

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お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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