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NRI トップ NRI JOURNAL デジタル技術によるサービス革新――高速PDCAの実現を通じて

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デジタル技術によるサービス革新――高速PDCAの実現を通じて

産業ITコンサルティング二部 第一グループ グループマネージャー 根岸 正州

経営

DX

ビジネスモデル変革

2021/04/09

「お客さまは神様」という言葉に代表される日本企業の良質な接客は、優秀な人材が持つ豊富な経験とスキルに支えられてきました。しかし、少子高齢化の進行による労働力不足を背景に、これまでの接客方法を続けることは難しくなってきています。全ての拠点で全ての顧客に同質のサービスを提供するためには、サービスの標準化を避けては通れません。それはまた、縮小する国内市場から海外市場に打って出る際にも必要な取り組みだといえるでしょう。そのための手段の一つが、デジタル技術を使ってPDCAサイクルを速め、顧客満足と従業員満足を両立させるサービス革新です。さまざまな顧客企業でデジタルを活用したビジネスモデル変革の支援をしてきた野村総合研究所(NRI)の根岸正州に話を聞きました。

CX戦略起点のサービス革新

サービス革新の起点として近年、「CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客経験価値)」というキーワードが、顧客満足度(CS)に代わって市民権を得るようになってきました。従来はWebサイト上で行うマーケティング施策として取り組まれてきたものですが、IoTやAIなどの技術革新に伴い、CXはリアル空間にまで広がっています。
一方で、深刻化する人手不足を背景に、CXを高めるための顧客接点である従業員に着目した「EX(エンプロイーエクスペリエンス:従業員経験価値)」というキーワードにも注目が集まっています。EXが高い職場には優秀な人材が集まり、高いパフォーマンスを発揮し、ベテランになっても長く働き続けるとされるためです。EXを高めると共にCXを向上させる。そのためには、顧客を迎える表側だけでなく、裏側にいる従業員の立場にも立ってサービスを作りこむ必要があります。
これまで、品質管理などの継続的改善手法であるPDCAサイクルは、サービスの分野においてはトラッキングが難しいことから「C(Check:評価)」の部分がうまく機能しないことがありました。アナログなホスピタリティを起点とするサービスやアクションの評価は、店長クラスの従業員が恣意的に行わざるを得なかったり、各拠点の大きさや間取りに依存して各業務の標準時間が設定できなかったりしたためです。しかし今では、AIカメラやセンサーなどのIT機器を活用することで、サービスの提供や消費の状況をデータとして取得できるようになり、サービスを見直すためのPDCAを回せるようになってきています。
このとき、CXとEXのどちらかに比重が傾き過ぎないようにバランスをとり、全体最適の視点で優先順位をつけるために必要となるのが、「MX(マネジメントエクスペリエンス:経営者経験価値)」です。サービス革新の実現のためには、顧客の声、現場の声を踏まえて、経営陣が適切に意思決定することが求められます。

先進事例の紹介

デジタル技術を活用することで、これまで一部の従業員にしかできなかった「評価」や「見通し」を標準化し、サービス革新に結びつける例が生まれています。そのいくつかを紹介します。

先進事例1(従業員行動評価の自動化)

A社はコールセンター代行業であり、オペレーターの電話対応の評価は、録音した音声を人が実際に聞いて行っていた。そのため、評価する側も経験やスキルが必要であるという課題を抱えていたほか、評価できる会話数も限定的であり、評価の客観性を担保することが困難だった。
そこで、AI技術を使った音声認識や自然言語処理技術を活用し、オペレーターの評価を自動化。会話データをテキスト化し、感謝の言葉の利用、挨拶、名乗り、復唱、敬語など、決められたルールに沿っているかを確認し、また、顧客からの要望を正確に捉えられているかに重みを置いてスコアリングできるようにした。

先進事例2(人員配置ツールの高度活用)

B社はレジャー施設を運営しており、季節や天候による客数の変動が大きいという特性がある。そこで、「レイバー(人員)スケジューリングプログラム」(LSP)と呼ばれる、シフト管理のためのITツールを導入した。
これにより、これまでは店長クラスの従業員の経験値に頼るしかなかった時間帯や配置エリアごとの過不足人員の見通しを数値的に把握し、15分刻みで適切なシフトを組むことができるようになった。

先進事例3(介護施設におけるAIの導入)

介護施設は慢性的な人手不足に悩まされており、介護者の離職率は日本の全体平均が10%程度なのに対して20%程度と、約2倍に達している。そのような状況のなか、ロボットやデジタル技術を活用する取り組みが一定程度始まっている。
例えば、介護サービスのレベル向上を図り、各スタッフのオペレーションスキル改善のヒントにするため、AIカメラとディープラーニングを活用して良いケアと悪いケアを判別し、スタッフにレポートを上げるような事例がある。

自己診断ツールから始めるサービス革新

サービス革新の発展ステップには、大きく3つの段階があります。自社流を模索する「サービス化1.0」、実績を積み上げ企業収益への貢献が認められる「サービス化2.0」、自社ならではのサービスが企業収益に貢献し続ける「サービス化3.0」です。サービス革新に取り組むにあたっては、最初に自社のサービス化がどの段階にあるのかを知る必要があります。
そこで、まず自社のサービス化レベルを判定できる「簡易自己診断ツール」を紹介します。4カテゴリ全20問の設問に回答した後、カテゴリごとの平均点、4カテゴリ全体の平均点(総合平均点)を算出することで、自社の全体としてのサービス化レベルと、どのカテゴリに強み、弱みがあるのかを明らかにすることが可能です。
この診断で、総合平均点が3点満点中1.5点未満であれば「サービス化1.0」、1.5点以上2.4点未満であれば「サービス化2.0」、2.5点以上であれば「サービス化3.0」に位置していると考えられます。

  • (注)

    この診断表は、短時間で診断できるように平易で簡潔なものになっているため、あくまで目安とお考えください。本格的な診断には第三者の専門家によるチェックを受けることが必要になります。

「サービス化1.0」は、サービス革新の必要性が経営陣に理解されていない段階です。まず現場レベルでCXやEXの取り組みを始める時期で、このフェーズで小さな成功を積み重ね、その必要性と有効性を経営陣に認識させ、コミットメントを得る努力が必要となります。
「サービス化2.0」は、現場のサービス革新が企業収益につながっていることが経営陣に理解されている状態です。この時期に重要なのは、今後の中期的な戦略策定と、ITの仕組みづくりです。次のステップを目指して、サービスを継続的に革新する必要があります。
「サービス化3.0」は、経営陣、推進スタッフ、現場が有機的に連携し、CX、EX、MXが全社レベルで機能している状態です。ここに至るには相当の時間と努力を要しますが、ここに至って初めて、自社ならではの模倣困難なサービスを創造できるようになります。

サービス革新を実現し機能させるための要素は多岐にわたり、一朝一夕に実現できるものではありません。私たちNRIは、スモールスタートのトライアルから伴走し、CX起点のサービス革新からシステムづくりまで、企業収益に貢献する経営改革の支援をしていきたいと考えています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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