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NRI トップ NRI JOURNAL 「この街に行く理由」をDXで実現する

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

「この街に行く理由」をDXで実現する

~より便利で豊かな体験価値で選ばれる街づくり~

三菱地所株式会社 DX推進部主事 春日 慶一氏 
株式会社プレイド カスタマーエクスペリエンス・デザイナー 大畑 充史氏
NRIデジタル株式会社 萩村 卓也

#DX

#CX

#イノベーション

#デジタルマーケティング

#新型コロナ

#価値共創

2021/07/22

三菱地所が手掛けるオフィスや住宅、商業施設、ホテル、空港などの幅広いアセット、プレイドの顧客体験(CX)プラットフォーム「KARTE」、NRIデジタルの持つデジタルトランスフォーメーション(DX)のノウハウを掛け合わせて、3社はオンラインとオフラインを融合させた、新しい出会いで街を進化させる施策を打ち出してきました。

その場所に行く『意味』をつくる

コロナ禍でリモートワークが浸透し、オフィスの位置づけが変化するなど、この1年間で街づくりの前提は大きく変わっています。「これまでは人が来ることを前提に『何を提供するか』を考えてきましたが、なぜその場所に来るのかという『意味』を考えるようになりました」と語るのは、三菱地所の春日慶一さん。「これだけ個人の生活スタイルが多様化する中では、建物や施設を利用する個人に注目し、そのニーズや考えを捉えなければ、適切なプロダクトはつくれません。B2B事業であっても、デジタルを活用して個人と直接的に関係性をつくり、それをプロダクトに反映させ、スピード感を上げて変化に合わせることが大切になっています」

2021年春に大丸有(大手町、丸の内、有楽町)エリアで実施した三菱一号館美術館スタンプラリー・イベントでも、そこに行く理由の創出を軸に、個人が保有する端末を使ってスタンプを集めながら、美術館と大手町・丸の内エリアの書店をめぐるという、リアルとデジタルを横断させた体験をデザインしました。

街レベルでホワイトスペースを埋めていく

NRIデジタルの萩村卓也は、従来の紙ベースのスタンプラリーでは見えなかった参加者の行動がつかめたことが収穫だと振り返ります。「データを分析すると、当初の予想と違って、周辺オフィスのワーカーよりも、他のエリアから参加した人のほうがゴールに到達する割合が高かったのです。ラリーの未完走者にもっとアートに触れてもらう余地があるなど、いろいろな示唆が得られました」

「個々の商品や店ではなく、街という単位で1人の行動を捉えていく状況を作り出せることは、すごく可能性が大きいと思います」と、プレイドの大畑充史さんも手応えを感じています。例えば、データ分析により「周辺ワーカーはこの店の前を素通りしている」などのホワイトスペースを突き止め、それを埋める打ち手が考え、特定イベントに来る顧客層の特性を踏まえて「こんな商品を打ち出したらどうか」と提案することで、店も街も魅力が増し、スケールの大きなマーケティング活動が可能になります。

しかし、その実現のためには、ユーザーが積極的に自分の情報を開示してメリットを享受できる関係性をつくっていくことが欠かせません。また、データベースなどの裏側の仕組みはクラウドの進化によってスケーラブルで高速処理が可能になっているのに対し、リアルをデジタル化するIoT機器などハード面の課題が明らかになってきました。例えば、過去に丸の内エリア全体に数百個のビーコンを設置しましたが、どのように正確な設置場所を記録し、今後、誰が保守や管理を行うのか。本格展開に移行する際には、細部まで作り込んでいく必要があります。

街に根差したアプリでしかできない体験を目指す

3社では今後も、データ基盤をしっかり作りながら、リアルとデジタルの接点を適切に融合させてCXを高める取り組みを次々と展開していく予定です。最近リリースされた「丸の内ポイントアプリ」は、お買い物に関する情報を提供する機能にとどまらず、今後はリアルな施設への入館や、人やサービスとのマッチング、エリア内のお店のデリバリーや取り置き注文の窓口として使えるなど、新しい体験づくりに挑んでいます。「単なる既存のポイントカードのアプリ化ではなく、このアプリがあるからこそ、大丸有エリアがさらに楽しめる、そんな接点にしていくつもりです。多くの方に利用していただきたいですし、今後のアプリの進化にはご期待ください」と、萩村は意気込みを語ります。

2021年6月30日には、東京駅前の新たなランドマークとなるTOKYO TORCH 常盤橋タワーが竣工しました。「これまではデジタルによるユーザー体験を作り出すことに注力してきましたが、常盤橋タワーなどの取り組みは、リアルも含めたお客さまの体験のアップデートにも踏み込むものです。難易度はとても高いのですが、みんなで知恵を絞りながら、全力で新しい体験を生み出したいです」と、大畑さんも意欲的です。ポストコロナを見据え、東京の新しい顔として、この場所でしかできない体験価値の創出が期待されます。

「三菱地所が保有するリアルの接点、アプリなど街に対応したデジタル接点から、お客さまから好意的な形でフレッシュなデータが常に入ってくる状態をつくり、将来的には、得られた分析データ、顧客接点をオープンにして街で活動するいろいろな企業に使ってもらえる『Mitsubishi Estate Local Open Network』(MELON)にしていく構想を打ち出しました。働き方、楽しみ方が多様化する中で、企業としてもこれまでの枠組みを超えた領域で連携し、面白いもの、新しいものを生み出す循環を作りたい。そんな街づくりを目指しています」と、春日さんは展望します。

今後、大丸有エリアがどのように魅力的な街に変わっていくのか。ますます目が離せません。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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