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2040年の住宅市場の展望と、2030年政策目標達成に向けたZEH普及上の課題

コンサルティング事業本部
アーバンイノベーションコンサルティング部 大道 亮、大西 直彌、青木 笙悟
社会システムコンサルティング部 出口 満、大江 秀明
ヘルスケア・サービスコンサルティング部 山本 実侑

サステナビリティ

住宅・建設・不動産

2021/07/30

野村総合研究所(NRI)では、日本における「2021〜2040年度の新設住宅着工戸数」、「2020~2040年のリフォーム市場規模」、および「2020〜2030年度のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)着工戸数・ストック戸数」を予測しました。
新設住宅着工戸数は中長期的にどう変化していくのか、2050年のカーボンニュートラルに向けて重要な意味をもつZEHはどのように普及していくのか、予測にあたったコンサルティング事業本部のメンバーに聞きました。

2020年度の新設住宅着工戸数はNRI予測を大幅に上回る結果に

NRI の昨年度予測では、2020年度の新設住宅着工戸数をリーマンショック時(2009年度、77.5万戸)より少ない、72.8万戸としていましたが、実績値は81.2万戸と予測を約8.5万戸上回る結果となりました。利用関係別の実績値をみても、持家、分譲住宅、貸家のすべてで予測を2~3万戸上回るという結果でした。
昨年度実績がNRI予測を上回った要因の一つとしては、経済の悪化が予測よりも抑えられたことが考えられますが、実績値と予測値の乖離幅はこの経済要因のみでは説明しきれません。
この説明できない差分については、単なる統計誤差の可能性もありますが、これまでのNRIの予測モデルでは説明できないような変化(経済指標や移動世帯数には表れない変化)が原因である可能性もあります。一つの仮説としては、テレワーク普及による職住一体化や外出自粛による「おうち時間」の増加によって、消費者が住宅に求めるものが変化し、新たなニーズと既存の住宅ストックとの間にギャップが生まれたことで新設住宅着工戸数が押し上げられた可能性もあると考えています。「住宅に求めるもの」がビフォアコロナ/アフターコロナで大きく変化し、それが定着したと仮定すれば、その変化によって中期的に新設住宅着工戸数が押し上げられる可能性も考えられます。

新設住宅着工戸数は中長期的には減少傾向、リフォーム市場は微増ないし横ばい

NRIの新設住宅着工戸数の予測モデルでは、移動世帯数、平均築年数、名目GDP成長率という3つの因子が着工に大きく影響を与えるとしています。
それぞれの指標について、2021〜2040年度の予測を見ていくと、移動世帯数は2020年の418万世帯から2030年には386万世帯、2040年には343 万世帯へと減少していく見通しであり、住宅ストックの平均築年数は、2013年度の「22年」から、2030年度には「29年」、2040年度には「33年」近くに延びる見通しです。また、名目GDP成長率は、新型コロナウイルスの影響で短期的には大きく変動するものの、中長期的に成長は鈍化し、2035年度には0.1%まで落ち込む見通しです。
移動世帯数の減少、平均築年数の伸長、そして名目GDPの成長減速等から、NRIの今年度予測では、新設住宅着工戸数は2030年度には65万戸、2040年度には46万戸に減少すると見込んでいます。また、リフォーム市場規模は、2040年にかけて6〜7兆円台で微増ないし横ばいで推移すると予測しています。

2030年度時点でのZEHストック数の政策目標は313万戸

2020年10月、菅内閣総理大臣は2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。これまでも、脱炭素に係る取り組みは官民連携して行われてきましたが、国のトップによる宣言で、より一層の取り組み強化が必要となりました。
ZEHとはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称であり、「躯体強化」「省エネ」「創エネ」により「年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅」を意味します。エネルギーベースでネット・ゼロを実現する住宅として、2050年のカーボンニュートラルに大きく貢献するものと私たちは認識しています。一方で、ZEHの概念が確立されて日が浅く、将来予測に関しての見通しが立っていない状況でしたので、今後の方向性を明確にするためにZEHの将来予測を行いました。
仮にZEH が住宅用PV(太陽光発電)やエネファーム、電気自動車などと同様の速度で普及していくと仮定すると、2030年度時点でのZEHストック数(ZEH 累積着工戸数)は約159万戸まで積み上がると予測できます。しかし、政策目標達成に必要なZEHストック数313万戸には遠く及ばない結果となりました。

政策目標の達成に向けて求められるZEHのさらなる普及拡大策とは

2030年の政策目標達成に向けて、2016年度以降、環境省および経済産業省が中心となり、ZEH の普及を後押しする補助金政策を実施してきました。補助金の後押しも受けて、ZEH全体としての着工戸数は着実に伸びてきていますが、住宅種別の内訳を見ると、持家戸建がその大部分を占めていることが分かります。
言い換えれば、分譲戸建や集合住宅におけるZEH化が比較的進んでいないという解釈もできます。背景には、ZEH化に必要な分のPVが載せられない、全住戸をZEH化するにはコストが膨らみすぎるなどの課題があることが考えられます。
こうした背景を踏まえると、政策目標を達成するためには、官民連携のもと、既成概念にとらわれない思い切った施策が求められます。例えば、ZEHが高く評価される不動産鑑定の仕組みづくりや、自家だけでなく隣家にも余剰エネルギーを供給できるZEHに対しての優遇措置などは、一考に値すると思われます。また、特にZEHポテンシャルの大きい分譲戸建に焦点を当てた施策や、環境性能が劣る老朽化住宅のZEHへの建て替え促進も検討すべき論点だと思われます。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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