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ポストコロナの未来と日本企業の戦略

未来創発センター グローバル産業・経営研究室 室長 森 健

#DX

#価値共創

#新型コロナ

2021/08/16

「NRI未来創発フォーラム2021」のテーマは「ポストコロナの未来と日本企業の戦略」で、NRI代表取締役会長兼社長の此本臣吾が基調講演に登壇します。本講演の注目ポイントについて、デジタルが拓く近未来の姿についての研究成果をまとめた森建が紹介します。

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ポストコロナ時代における新たな課題と、解決に向けた提言を予定

基調講演は、4つの柱からなっています。「2020年を振り返る」「カーボンニュートラルと日本が目指すべき経済社会」「デジタルによる共有化経済の萌芽」「日本企業に求められる戦略」です。
新型コロナウイルス感染拡大がもたらしたさまざまな制約により、私たちの生活は大きく様変わりしました。特に社会の様々な領域にデジタルが浸透し、我々が提唱している「デジタル資本主義」が本格的に起動しましたが、その影響は社会・経済のみならず、人びとのものの見方や考え方、これからの行動様式にも及ぶと考えられます。コロナ禍が終息すれば日常は完全にコロナ前の状態に戻る、そのように思っている人は今や少ないのではないでしょうか。
基調講演では、NRIがまとめたデータを紹介しながら、ポストコロナ時代の人びとの意識の変化と、それによって変わらざるを得ない企業や自治体の未来について探っていきます。

人びとの意識の変化が、これからの企業戦略や働き方を方向づける

2020年は新型コロナウイルスによって世界経済が大きく停滞した一年となりました。日本だけではなく世界全体を見渡しても同様です。しかしそれ以上に、人びとの価値観、政府や企業に対する信頼感、生活満足度、そのような精神的あるいは心理的な部分には大きな変化が生じていると考えられます。それらは、ポストコロナ時代の経営環境にどのような影響を与えるのでしょうか。
NRIでは、コロナ禍が終息した後の「消費」と「働き方」の2点に着目し、1万8千人を対象としたアンケートを実施しました。消費に関しては、消費者マインドのリバウンドについて、例えば我慢していた旅行や外食などは元の水準まで戻るのか、もう元にまでは戻らないのか、あるいは反動で一時的には以前の水準を超えるのかなどを質問しています。またコロナ禍を通じて、オンラインでの消費活動がどのくらい定着したのかも調べています。働き方に関しては、コロナが終わった後の働き方のあり方について検討します。ワークライフバランスが高まる、通勤のつらさから解放されるといったテレワークのメリットを生かしつつ、コミュニケーションが疎遠になるなどのデメリットをどう抑えてデジタルとリアルのベストミックスをつくるのか、これからのスタンダードとなりえる働き方について議論を進めます。

ソフトウェアファーストと、カーボンニュートラルへの挑戦

コロナ禍の中で話題になったニュースの一つに、CO2排出量の世界的な減少があります。戦後最大規模の落ち込み幅となり、人の移動が環境に与えていた影響が図らずも明白になりました。そんなコロナ禍の間にも気象変動に原因があると推測される記録的な豪雨や異常な熱波・寒波は頻発しており、気候変動対策は待ったなしの課題です。2021年4月の気候変動サミットでは各国の温室効果ガス削減目標が大幅に引き上げられ、日本も2030年までに2013年比で46%を削減することを公約しました。カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させることは、すべての組織に課せられた責務といえます。
キーワードの一つは「インプットの削減」です。人口が増え続け、規模の拡大が求められてきた時代は、アウトプットの量を増やすことに主眼が置かれてきました。アウトプットを増やすためには、そのために必要な分だけインプットを投入するというマインドです。しかしサステナビリティを考えると、同じアウトプットを出すためのインプットをいかに少なく抑えるかという発想の転換が必要になります。これまで100を作り出すために50が必要だったとしたら、それをどうやって40に、さらに30にと減らしていけばよいか。例えば、シェアリングも解決策の一つでしょう。簡単なことではありませんが、それぞれの企業が持っている設備を融通し合ったり、個別に所有するのではなく共同利用できる設備を共有したりすることで、社会全体としてのCO2排出量を減らすことができるようになります。
同時に進むのが、ハードウェアよりソフトウェアが価値創出の中心になる「ソフトウェアファースト社会」の到来です。例えば、電気自動車メーカーであるテスラの車は、アメリカでは毎週のようにソフトウェアのアップデートが実行され、燃費(電費)や乗り心地の向上が図られています。言うなれば、モノ(ハードウェア)自体は変わらないのに、性能は購入から時間が経つほど上がるという、産業資本主義の時代には考えられない世界が実現されているのです。私たちはこれを「増価蓄積社会」の到来と呼んでいます。
ハードウェアは新品の価値が最も高く時間とともに減価していきますので、いかに品質を落とさないよう維持できるかが供給者にとって成功のカギになります。しかし、そのような従来のパラダイムを大きく転換し、ソフトウェアのアップデートや新サービスの提供などを通じて、ユーザーに提供する価値を増やしていくことがこれからは求められます。増価することが品質向上だと言えますが、そこでの品質の定義は、ユーザー満足度、あるいはユーザーの成長や成功度合いなど、供給者目線ではなくユーザー目線ではかられる必要があります。そのような動きはソフトウェア産業では既に進んでいますが、今後はほかの業界でも生まれてくるでしょうし、産業の再編につながると考えています。

いまこそ有事のリーダーシップが求められるとき

このように社会が大きく変化し続ける時代には、企業の意思決定の仕方や組織の作り方も見直す必要があるかもしれません。異業種を含む他社との有機的なつながりを持ったり、お互いにサービスを提供し合ったりするような関係を構築するためには、これまでとは違う能力や組織の形が求められます。
平時の経営、有事の経営という言葉がありますが、これまでは有事のリーダーシップと思われていたものが常に必要とされるかもしれない。そんなマネジメントも含めた日本企業の戦略について、皆さんとともに考えたいと思います。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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