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シニア世代はアフターコロナの就労をどう考えているのか

NRI社会情報システム株式会社 高齢化社会インサイト担当 高田 伸朗

#時事解説

#政策提言

#価値共創

#新型コロナ

2021/09/08

NRI社会情報システムでは、50歳代から70歳代までのシニア世代を対象に就業意識・行動に関する調査を毎年実施しています。本年度はコロナ禍がもたらした影響を把握するとともに、2021年4月から企業に対して努力義務が課された「70歳までの就業機会確保」についての認知度や賛否、さらに兼業・副業への関心や、夫婦間における配偶者の就労への意識等に関して調査を行いました。調査にあたったNRI社会情報システムの高田伸朗に聞きました。

コロナ禍はシニア世代の働き方にどのような影響を与えたのか

コロナ禍がシニア世代に与えた生活への影響についてたずねたところ、「健康や体力増進に関する意識が強まった」「テレビを見る時間が増えた」「高額な商品やサービスの利用を控えるようになった」「家族との会話やコミュニケーションが増加した」などの回答が多く見られました。
健康への影響では、「体力が低下した」「足腰が弱くなった」「体重が増加した」という回答が多く、「やる気がなくなった」「寝つきが悪くなった」など、メンタル面の回答も少なくありませんでした。その中で、テレワークや在宅勤務が増加した人の「体力が低下した」「足腰が弱くなった」の回答比率は、そうでない人の約2倍と際立っていました。 また、健康への影響を家計の状況別に見ると、家計に余裕のない人の方がより大きな影響を受けていることがわかりました。
就労活動の変化に関する質問では、「収入が減少した」との回答が最も多く、「家庭や自分のために時間を割くようになった」「外出する機会が減少した」「労働時間が減少した」が続きました。労働時間が減少した人が約32%だったのに対し、収入の減少が生じている人が約37%と、労働時間の減少以上に収入減少が生じていることも浮かび上がりました。

70歳雇用延長制度でシニア世代の働き方はどう変化するのか

改正高年齢者雇用安定法が2021年4月から施行され、高年齢者就業確保措置を講じることが努力義務として企業に課せられることになりました。調査では「70歳雇用延長制度」という表現を用いて、今年度も制度の認知度や就労意向などの質問を行いました。
制度の認知度は、全体としては昨年よりわずかに上昇しましたが、女性では逆に低下傾向が見られました。制度について全体の6割強がプラスの評価をし、男女・年齢を問わずプラスの評価をする人の割合は昨年よりも増加しています。
何歳まで働きたいかという質問の回答は、男女ともに回答者の年齢とともに働きたい年齢が上昇しますが、60歳代前半までの人は男女ともに70歳まで働きたいとは考えていないことがわかりました。その理由も回答者の年齢によって異なりますが、「趣味や娯楽など好きなことに時間を使いたい」「年金や貯金を取り崩せば生活できる」「定年で一区切りついた/十分働いた」のほか、「体力的に働く自信がない」も多く見られました。
今後の兼業・副業については、「行いたい」と「関心がある」を合わせると約45%にのぼり、関心の高さがうかがえます。理由としては、「より多くの収入を得たい」の回答が7割以上と最も高く、「自分のやりたいことができる」「自分のスキルを役立てる場がほしい」「時間にゆとりがあるため」も比較的多く見られました。

配偶者は相手の就労をどのように考えているのか

夫が働いていることによる女性の生活満足度は、50歳代において平均より高く、60歳代〜70歳代においては、夫の就労・非就労による生活満足度の差は見られなくなりました。
配偶者の就労に対する満足度は、就労者本人の就労満足度に比較して高く、特に50歳代〜60歳代前半の就労する夫に対する妻の満足度は、男性本人の満足度と比較して非常に高いことがわかりました。
配偶者にいつまで働いてほしいかという質問では、50〜64歳の夫に対して、妻は男性本人が考える年齢よりも4歳ほど長く働いてほしいと考えているのに対し、夫が妻に対して希望する年齢は女性本人が考える年齢にほぼ等しいという結果でした。
一方で、配偶者に働いてほしくない理由は「年金や貯金を取り崩せば生活できる」が多く、妻が夫に対して「十分働いた」「体力的に厳しいと思う」とする指摘も多く見られました。

シニア世代の就労促進には何が求められるのか

コロナ禍がシニア層に与える影響は非常に大きいため、企業・行政はシニア世代の生活・健康・就労への影響を踏まえた対策を講じる必要があります。収入の減少や健康への影響は、女性や収入の少ない世帯など、社会的弱者により強く表れており、対応が求められます。
また、シニア世代にとってテレワーク等の在宅勤務の増加は、健康面での負の影響が極めて大きいことも明らかになりました。そのため、健康面に配慮した働き方を推進することが望まれます。
70歳雇用延長制度の知名度や評価は高まっていますが、働き方の選択肢として十分に位置づけられていないことに加え、企業等における制度活用の動きは必ずしも速くないことから、制度の迅速な普及促進が期待されます。シニア世代においても、自分のスキル・能力を再整理し、自分に相応しい就労のあり方を構想することが求められます。
また、兼業・副業への関心は高く、今後シニア就労の一形態として普及が進むと考えられることから、70歳雇用延長と組み合わせ、継続雇用終了後を見据えた「シニア版パラレルワーカー」を推進することが望まれます。
これに関連して、シニア世代の夫婦間では、配偶者に対して長く働き続けてほしいと考えていますが、その背景には経済的な面だけではなく、健康面や生きがいなど、シニア世代ならではの思いがあります。そのため、老後の働き方セミナーなどの意識啓発を行う際には、夫婦での参加を求めることが有効だと考えます。

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株式会社野村総合研究所
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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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