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「高齢化」と「デジタル化」の共存から見えてくる日本のデジタルデバイドの現在地

NRI社会情報システム株式会社 代表取締役社長 小松 隆

2021/09/10

NRI社会情報システムでは、シニア世代(50~79歳の層)を対象に就業意識や行動に関する調査を毎年実施しています。今回は「シニア×デジタル」をテーマにインターネット調査を行い、社会的な課題としても注目されているデジタルデバイド(情報格差)にフォーカスを当てました。シニア世代は急速に進む社会のデジタル化をどのように感じているか、すべてのシニア世代がデジタル化の恩恵を受けるにはどうすればいいのか。調査にあたったNRI社会情報システムの小松隆に聞きました。

シニア世代が国のデジタル競争力の鍵を握る

世界の主要国の状況を見ると、デジタル化が進展している国ほど、シニア世代と若手世代のスマートフォン保有率の世代間格差は小さいという傾向があります。「高齢化」と「デジタル化」が同時に進行するという特徴をもつ日本社会においては、デジタル化進展の鍵はシニア世代が握ると考えられます。
デジタル化の目的は「すべての人が幸福(Well-being、生活満足度、QOLの向上)になる」ことであり、シニア世代に対しては、健康を維持する、社会との接点を作る、生活の安全を守る、といった点で重要な役割を果たします。
しかし、デジタルを活用できる人は満足度を向上させる一方で、デジタルをうまく活用できない人はその恩恵にあずかる機会を逸するという二極化が進行し、シニア世代の中のデジタルデバイドが拡大することが懸念されます。

シニア世代特有の「多様性」が生み出す「社会のデジタル化」に対する期待と不安

全国の50歳から79歳の男女個人3,000人から回答があった今回の調査からは、「社会のデジタル化」にシニア世代の6割弱が期待する一方で、3割強は「期待していない(「あまり期待していない」と「全く期待していない」の回答計)」と回答、「わからない」も1割近くいることが調査で明らかになりました。
年齢別に見ると、男性は年齢が高いほど「期待する(「非常に期待している」と「多少期待している」の回答計)」人の割合が高く、50代前半男性では、「全く期待しない」人が12.2%と目立っていました。また、競争意識が強いと言われる70代前半の団塊世代の男性は、デジタル化に期待する人が少ないことも確認されました。女性は男性に比べて1割ほど期待は低く、「わからない」とする回答が多いことも特徴です。
世帯の貯蓄額との関係では、貯蓄額が多いほどデジタル化に期待する傾向が強いことから、裕福な人ほどデジタル化の恩恵を多くあずかり、格差が拡大する可能性が読み取れます。

デジタル化の最大のハードルは「個人情報漏えい」のリスク

調査では、マイナンバーカード、SNSなどの利用実態についても質問しました。その結果、マイナンバーカードに関しては、半数以上がすでに取得しているものの、約3割は取得する予定がありませんでした。その理由は、「個人情報の漏えいが心配」との回答が多く、「マイナンバーカードのメリットがわからない」や「申請手続きが面倒」を上回りました。男性より女性、さらに年齢が上がるほどその傾向が強く表れていました。
情報源に関する質問では、「テレビ番組」「Webサイト」「新聞」がシニア世代の3大情報源で、それに続く「行政の広報誌」「知人からの口コミ」「家族からの口コミ」は、男性より女性の利用が多いことがわかりました。また、新聞などが、経済的な余裕の有無による利用率の差が大きいのと比べると、Webサイトの利用は(口コミを含む)他の情報源と比べて、経済的な余裕の有無による差が相対的に小さいことがわかります。
LINEの利用の伸びは他のSNS等と比較して顕著で、70歳代でも利用率は既に50%を超えており、年代間格差は小さくなっています。SNSは単なる双方向コミュニケーションツールの域を超え、シニア世代にとって情報収集や各種手続きなどデジタル社会と生活をつなぐ「接点」として、極めて重要な存在となっています。
シニア世代のスマートフォンの保有率は堅調に伸びており、特に70歳代の伸びは著しいものがあります。スマートフォンを持たない理由としては、女性は男性に比べ「携帯電話で十分」と感じる人が多く、「操作が難しそう」「初期設定が難しそう」との回答も比較的多くありました。
キャッシュレス決済に関しては、男性は年齢が上がるとともに利用は減少し、逆に女性は増加しています。キャッシュレス決済を利用しない理由としては、特に男性で「現金が一番信用できる」と感じる人が多く、女性では「使いすぎが心配」、「個人情報の漏洩が心配」が目立ちます。

デジタル化の先のWell-beingのある社会へ

シニア世代が抱く「社会のデジタル化」への期待は、性別、年齢、居住地域、就業状況、家計や健康状態などの影響を受け、多様な様相を見せています。その中で、デジタル化の恩恵にあずかれる人とそうでない人の格差を小さくすることは、今後ますます重要な社会課題となります。
シニア世代に個人情報漏えいに対する不安が根強く残る中、「誰一人取り残されない社会」の実現のためには、一人ひとりにとってのデジタル化の効果が実感できる社会つくりは勿論のこと、個人情報に関する丁寧な意識啓蒙を行うことも必要となります。
また、「いまの生活に不自由がない」ためにデジタルに期待しない、「現金が一番信頼できる」からキャッシュレス決済を利用しないなど、日本の各種サービスの充実や成熟、国への信用の高さがシニア世代のデジタル化への意識変化を遅らせているのも事実です。日本ならではの「良さ」を損なうことなくデジタル化を進めることが日本社会の課題となります。
日本社会では「デジタル化」は効率化のための「目的」であるかのような論じられる風潮がありますが、本来目指すべきは「デジタル化」の先にある「Well-beingが達成される世界観」が人々の間で共有されている社会です。
デジタルを十分に活用できないシニアは、将来にわたりゼロにはならないと考えられる中、シニア世代のデジタルリテラシー向上をサポートする社会の仕組みは必須となり、またシニアに優しいユニバーサルデザインな社会が強く望まれます。これらに関しては、北欧諸国など海外で先行する取り組みを参考にしながら、日本ならではの「超高齢化デジタル社会」をつくることが重要となります。

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