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東京2020オリンピックは日本国民に何をもたらし、企業活動にどんな影響を与えたのか

マーケティングサイエンスコンサルティング部 川上 貴大
グループマネージャー 高橋 弓子
部長 松本 崇雄
コンサルティング事業本部シニアパートナー 三崎 冨査雄

2021/10/29

新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、史上初の延期・無観客という環境下での開催となった東京2020オリンピックが幕を閉じました。
野村総合研究所(NRI)では、独自に取得している生活者データからオリンピックに関わる項目を抽出し、今回のオリンピックに対し国民がどう感じ、どう行動したのかを分析しました。オリンピックは国民に何をもたらし、企業活動にどんな影響を与えたのか、調査・分析に関わったメンバーに聞きました。

東京2020オリンピックの開催を、国民は比較的肯定的に受け入れていた

東京2020オリンピックのテレビやインターネットを含む観戦率は、全体では73.1%で、高年層ほど高く60代では80.0%でした。「観戦した競技・種目の中で盛り上がったものをお知らせください」という問いに対しては、「野球」という回答が52%を得たように、日本人がメダルを獲得した競技が上位の回答を占めました。
「コロナ禍でなければ、どのように観戦したかったですか」という質問では、「現地で観戦してみたかった」と回答した割合は開催前で44.2%、開催後でもほぼ横ばいの水準で44.6%でした。
開催の是非に関する質問では、38.8%が「開催して大変良かった」「開催して良かった」と回答し、高年層ほど開催したことに対する肯定的な回答割合が高く、60代では44.5%でした。また、開催前にオリンピックに対して「期待していない」「まったく期待していない」とした人は38.9%に上ったものの、開催後に「開催すべきではなかった」「絶対開催すべきではなかった」と回答した人は32.8%にとどまったことが分かりました。
開催して良かった理由としては「スポーツ選手の笑顔や姿勢に共感した」(63.8%)や「日本人選手がメダルをたくさん取れた」(58.5%)が多く、開催すべきではなかった理由としては「新型コロナウイルス感染が拡大した」が最も多い86.1%となりました。 また、日本で再びオリンピックを開催してほしいと回答した人は36.3%で、その割合は若年層ほど高いことが分かりました。札幌市が2030年冬季オリンピック・パラリンピック大会の招致・開催を目指していることについては、札幌での開催を「楽しみにしている」と答えた人は約38%と、「楽しみでない」とする人の約31%を上回りました。

開催前の「不安含みの期待」から、開催後の「感動や安堵の声」へ

東京2020に限らず、オリンピックに対する国民の関心は元々高く、開催前は横ばいで推移し開催後に上昇する傾向がありました。東京2020オリンピックについては、「非常に関心がある」「関心がある」とする人の割合は長らく50%を超えて推移していましたが、2020年3月の延期決定後に関心度は徐々に下降し、コロナ感染拡大の影響もあり開催直前は約39%まで低下しました。しかし、開催後には約54%まで上昇しました。
オリンピックに対する意見としては、開催前は期待の声はあるものの不安の声が大きかったのに対し、開催後では選手に対する感動や安堵の声がきかれました。
また、大会ボランティアについては、「感謝している」とする回答が高年層ほど多く、「参加したかった」とする回答は若年層ほど多いことが分かりました。

東京2020スポンサー認知は、平均値としては伸び悩むものの上昇傾向に

東京2020オリンピック・パラリンピック関連の広告について、出稿量の推移をみると、スポンサー企業のテレビCMが増え始めたのは大会本番直前でした。このタイミングでも、積極的に出稿する企業と予定よりも控える企業とで対応が分かれました。大会本番期に出稿量が最も多かったCMは「アサヒビール」で、「日本サムスン」、「日本コカ・コーラ」、「三井不動産」と続きました。一方で、東京2020オリンピック・パラリンピック関連CMの中で、最も印象に残ったとの回答を集めたのは「日本コカ・コーラ」でした。 東京2020オリンピックにおけるスポンサー企業に対する好感度については、大会の開催前後で大きな差はみられませんでした。また、オリンピックを機に購入したものについては、大型テレビなどの購入に若干の影響があったと推計できますが、「東京2020オリンピック大会を機に購入した商品はない」とする回答が91.7%に上りました。大会延期、無観客開催とイレギュラーな開催であったため、一概にスポンサーにメリットがあったとは判断しにくいと言えます。
しかし、東京2020スポンサー認知の効果を多面的に考察すると、コロナ感染拡大を境に認知が減少した企業と持ち直した企業に分かれ、平均値としては伸び悩みましたが、全体的には上昇傾向にあったことが分かります。
また、大会開催中にオリンピック・パラリンピック関連のテレビCMを出稿した金融E社やインフラJ社では、テレビCMへの接触によってスポンサー認知がそれぞれ+5.7%と+8.0%、高まっていたことも分かりました。
さらに、スポンサー認知者は非認知者に比べ、当該企業の好感度や購入意向、および「社会にとって重要である」とのイメージ保有率も高く、スポンサー企業のカテゴリ内での第一想起率が高いことが明らかになりました。

スポンサー企業であることによる商品購入やサービス利用の高まりについては、継続観察が必要

史上初の延期、史上初の無観客というこれまでにない環境下での開催となった東京2020オリンピックに対しては、マスメディアやSNSなどを通じ、肯定的な意見や否定的な意見など、さまざまな声が挙がっています。
しかし、東京2020オリンピックが無観客開催となったことについて、開催前では「無観客にするべきである」と回答した人は33.0%、開催後に「無観客にするべきで、正しかった」と回答した人は44.9%と、11.9ポイント増加するなど国民は一定の理解を示しています。
一方、大会終了時点で、東京2020オリンピックのスポンサー企業であることによる商品購入やサービス利用の高まりはみられない傾向にありました。オリンピックに対する国民の反応や、オリンピックのスポンサー企業への効果は、短期的にはみえない影響があると想定されるため、今後も継続的にウォッチしていきたいと考えています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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