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本当に必要とされるDXを実現させるデータ“活用”マネジメント

ITマネジメントコンサルティング部 村上 真一

#DX

2021/11/12

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためにデータ活用に乗り出したものの、収集するデータの質をどう向上させるか、データを処理するための基盤の整備をどうするか、といった「データマネジメント」を課題に挙げる企業が増えています。しかし、データを効果的に活用するためには、基盤などハード面や素材となる情報以外にも重視すべきことがあると、企業のデータ活用事例に詳しい野村総合研究所(NRI)の村上真一は考えています。

データ活用で成果を出せていない企業にみられる2つのパターン

日本情報システムユーザー協会(JUAS)が2021年に実施した「企業IT動向調査報告書 2021」によると、何らかのデータ活用に取り組む企業は回答企業1,137社のうち、8割以上にのぼります。その一方で、「期待する成果が得られている」と答えた企業は取り組む企業のうち、3割に満たないのが現状です。DXやデータマネジメントが企業IT動向のキーワードとなる中で、何か手を打たないと取り残される、競合他社に負けてしまうという危機感からDX関連投資を行う。しかし、やるべきことの難易度は高く、効果がすぐに見えづらい。そうした悩みを抱える企業からデータマネジメントのあり方を再検討したいという相談が増えています。

こうした課題を持つ企業の特徴は大きく2つのパターンに分かれます。1つは、まずはデータを集めて分析し、「こんなことができたらいい」という個別テーマの検討を進めているけれども、データの取得や管理の運用整備が進まない「利用先行型」。もう1つがその逆で、社内のデータを集めて基盤の構築を進めたものの、活用方針が課題となる「基盤先行型」です。どちらもスピードを優先させてデータの活用に取り組んでいますが、全社への本格展開や、別の事例への応用を求められた際などに大きな壁に直面することがあります。

3つの観点でデータ活用課題を総合的に整理する

DXで求められる要素は多岐にわたるので、データ基盤など提供周りだけをマネジメントしようという考え方ではうまくいきません。より包括的に課題を捉えた「データ“活用”マネジメント」が必要だと、私たちは考えています。具体的には、「利用」「提供」「取得」という3つの観点で論点を整理していきます。

「データ利用マネジメント」はデータ分析活動に関するもので、活用テーマの創出・選定、分析プロジェクトの計画・管理、データ分析人材の育成・採用などを扱います。「データ提供マネジメント」では、全社/グループのデータ活用方針や基盤利用規約の策定・配布、リスク対策などデータ基盤を管理。「データ取得マネジメント」は、個人情報の扱いや、マスタ統合、データ品質改善など、基幹システムに関する部分を扱います。

この3つの視点で自社の課題を整理した上で、個別の対応ではなく全体を俯瞰し、優先順位をつけてどのように解決していくかを計画します。特に、データ取得に関わる基幹システムの整備には一番時間がかかるので、時間軸も念頭に置きながらロードマップを引き、具体的なステップを考えていきます。たとえば全社DXでは、1年後に分析プロジェクトを3つ成功させる、3年後に利用現場の対象範囲を増やしてデータを使える人材も増やす、5年後には全社員がデータ活用できるようにする、といったレベル感で全体像を描きます。そのうえで、優先順位をつけて、具体的な課題の解決に取り組みます。

全体計画に沿ってワンストップでマネジメントする

ここで問題になるのが、誰が旗振り役となって、こうした活動を推進していくかということです。データ活用の初期段階にある組織では通常、顧客情報や工場関連情報などを格納した基幹システムの管理者、基盤上でデータ利用に向けたアーキテクチャや仕組みを開発・運用する担当者、データを分析し活用するデータ・サイエンティストや事業部の担当者がバラバラに活動しがちです。それを統括するためCDO(最高デジタル責任者)を置くのですが、配下のメンバーは別の方向を見て仕事を行い、それぞれが孤軍奮闘しているケースが少なくありません。

このような状況を打破するためにお奨めしたいのが、CDO直下のデータ“活用”マネジメント推進チームを設置することです。従来のように各機能を寄せ集めた形で活動するのではなく、チームとして成功に至るための道筋を描き、やるべきことを体系的に理解します。そのうえでデータ戦略から全体計画を策定し、PoC(概念実証)、PoV(価値実証)を進めていきます。データの利用、提供、取得の全側面をワンストップでマネジメントすれば、ロードマップと現状・課題の確認ができるようになり、データ活用の着実な実現が可能になります。

3つの観点(利用、提供、取得)からバランスの取れた全体計画を策定できるように、私自身もデータ・サイエンティストやシステム基盤整備のバックグラウンドを活かして、CDOや現場のメンバーとの橋渡し役となり、チームをサポートしたいと考えています。また、ロードマップを描くこと自体は簡単ですが、実行が難しいので、他社事例の紹介、ペースメイキング、人材育成などNRIの総合力を活かして、変革ステップを前進させるための側面支援にも力を入れたいと思っています。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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