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加速するDX時代のあるべきチーム・リーダーシップとは

タイガースパイク 代表執行役員 根岸 慶氏
野村総合研究所 執行役員マルチクラウドインテグレーション事業本部長 大元 成和

#DX

2021/11/16

2017年に野村総合研究所(NRI)の新しいブランド「bit Labs(ビットラボ)」を立ち上げた頃から、タイガースパイクの根岸慶さんとNRIの大元成和は互いにビジネス・パートナーとして信頼関係を築いてきました。大企業からキャリアをスタートさせ、ICT領域の新規事業や変革、組織運営に携わってきた共通点を持つ2人に、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に求められるリーダーシップについて聞きました。

現状の延長線上に未来はない

近年、DXが流行語のようになっていますが、インターネットが登場して以降、20年にわたって大きな変化が継続してきたと、根岸さんは指摘します。その特徴として「まず、多様性が大きく広がりました。ずっと固定化して画一的だった価値観や働き方や生き方が個別化して多面的になっていった。もう1つは展開のスピードです。米国で飛行機やテレビのユーザーが5000万人になるまでに数十年かかりましたが、iPodは4年、Twitterは2年、ポケモンGOは19日です(出典:steemit/@johnnywingston)。こうした不連続な変化に追いつけない人も出てきていますし、至る所に綻びが生じています。しかも、この状態はこれからも変わらないのです」

さらに、コロナ禍前と後では見える景色が変わってきたと、大元は感じています。「インターネット革命以降、これだけテクノロジーが発達したのに、先進国のGDPが伸びていません。これからは株主資本主義ではなく、社会資本主義など新しい資本主義や、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルを絡めた解決策が求めています。そのようにすでに限界に達していた諸問題がコロナ禍を契機に明らかになる中で、これまでデジタル導入が半ば目的化していたような企業でも、トランスフォーメーションに向き合わざるをえなくなっています」

ビジョンの周りに多様なメンバーが集まる時代

このように新たな局面でDXを進めていくリーダーは、新しいことに挑戦しつつ、古いものも守らないといけないという矛盾に直面します。大元自身も試行錯誤をしながら、レガシー事業とデジタル系事業を同じ組織内で舵取りをしてきました。「特に難しさを感じるのが、ウォーターフォール型からアジャイル型へという仕事のやり方に関する障壁と、レガシー側がDX側を羨ましく思う感情面での障壁があることです。また、新卒社員はデータサイエンスの基礎を身につけたデジタルネイティブが多く、世代間の違いもあります。その中で、目的の異なる事業に携わる人たちが互いを理解し認め合う関係になるように矛盾を解消していく必要があります」

働き方が多様化し、環境変化が激しくなる中で、ビジョンの周りに人が集まる新たな状況も生まれています。特に若い人は敏感で、企業に入ってお金を稼ぐ意味や、そこで何ができるのかを問うようになっています。

「昔はビジョンといっても企業理念を掲げて、みんなが合意した方向にゆっくり進めばゴールにたどり着けました。しかし、これだけ変化が速くて正解がない世の中になると、論理的、合理的に答えが出せません。だからこそ、リーダーが世界観を描き、自分の信じるところをしっかり伝える必要があります。多様性の中で育ったデジタルネイティブは、ここは違うと思えば、すぐに別の会社を移っていきます。逆に、納得すれば、すごく強くつながることができる。そうしたものをどれだけ見せられるか、私自身いつもドキドキしています」と、根岸さんは環境とともにリーダーに求められる要素が変化していることを感じています。

自らが自己研鑽して常に変化しながら価値観を伝えられるリーダーになる

「上から降りてくる数値目標を達成するために効率化を繰り返すだけでは、多様性豊かなメンバーに見放されてしまいます。リーダー自身が思いやビジョンをはっきりさせて、部下やステークホルダーに話せているか。そこが最初に取り組むべきことかもしれません」と言う大元は、どういう人生観で仕事をしているかを語れるように、本を読んで先人の言葉を借用したり、部下と一緒に宗教や哲学などリベラルアーツを学んだりしてきました。悪戦苦闘中のリーダーに向けて、「複雑なことを複雑に考えるのではなく、1つ1つ紐解いて、まずは行動する」ところからスタートしてほしいと語ります。

「リーダーは言葉や思いを鍛錬しなければなりません。周りの多様性が増せば増すほど、違う角度から違うことを言われます。その中で、自分がきちんとブレなく話ができるか。文脈に応じて話し方は変わっても、同じ軸の中で話すことが大事です」という根岸さんは、日頃から自分の熱源となる好き嫌いの感情に向き合い、周囲にも伝えることで、考えの揺れや本心かどうかを意識しているそうです。完璧さや上に立って指揮することよりも、「勇気を奮って弱さをさらけ出す」ことで、周りとの関係性が変わり、自分の本心を語れるようになる。そこから地続きでビジョンにつながり、共感を軸に人々を引っ張っていく一歩になると考えています。

  • 本記事は「bit Labs TALK SESSION Vol.1加速するDX時代のあるべきチーム・リーダーシップとは(前編)(後編)」を要約して転載。

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