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NRI トップ NRI JOURNAL 『ITナビゲーター2022年版』――2027年度までのIT市場トレンド予測

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『ITナビゲーター2022年版』――2027年度までのIT市場トレンド予測

ICTメディアコンサルティング部 部長 三宅 洋一郎、山口 毅、光谷 好貴、澤田 和志、須山 祐介

#情報・通信

2022/02/10

野村総合研究所(NRI)では毎年、IT市場を展望し、これからのビジネスモデルの可能性を洞察する『ITナビゲーター』を出版しています。2022年版では、24分野の市場規模予測に加え、ニューノーマルに関連する7つのトピックを解説しました。今回、特に注目される分野の最新動向と今後の見通しについて、ICTメディアコンサルティング部の三宅洋一郎、山口毅、光谷好貴、澤田和志、須山祐介が紹介します。

リアルの代替から、デジタルでしか実現できない価値の提供へ――三宅 洋一郎

NRIは、2000年からIT市場の動向を分析・予測する『ITナビゲーター』を制作しており、2021年12月17日に発刊した『ITナビゲーター2022年版』で21冊目となりました。

2021年は、変異株の流行などコロナ禍が終息の兆しを見せず、ウィズコロナ状態が続くことで消費者の行動変容も継続しています。NRIが行ったアンケート調査(「情報通信サービスに関するアンケート調査」2021年7月)によると、1年前と比較して「繁華街に行くのが怖くなった」「外での買い物を避けるようになった」と回答した人の割合は減少しましたが、それでも半数以上を占めています。一方で、「オンラインで済む買い物や手続きはオンラインで済ませるようになった」「新しいインターネットサービスを利用することへの抵抗感がなくなった」と回答した人の割合は増えており、IT産業への追い風はやんでいません。

コロナ禍によるデジタル化の加速は、スマートフォンの登場に次ぐ、10年に一度の大変革をICTメディア産業に及ぼしています。感染拡大直後はリアルをインターネット上で代替するサービスが目立ちましたが、コロナが継続していく中でデジタルでしか実現できない価値の提供をめざす企業も登場しています。

今後は、このようなデジタルならではの価値実現に向けた取り組みを進める企業が、各産業を牽引していくと考えられます。

ニューノーマル時代に向けて真の変革が求められる「放送・メディア市場」――山口 毅

地上波放送と動画配信サービスを中心として、「放送」と「通信」の両輪展開が当たり前になる、放送・メディアのニューノーマル時代に突入しました。

動画サービスの契約者は無料有料を問わず増加しており、一人あたりの利用サービス数も増えてきています。これによる注目すべき変化は、視聴するデバイスにテレビの割合が増えてきていることです。従来は受動的に視聴するものだったテレビが、ネットにつないで能動的に視聴するものに変わってきています。今後は広告枠を得るために、テレビ画面の獲得競争がいよいよ本格化するでしょう。テレビ広告費とインターネット広告費の境界があいまいになり、効率的・効果的な広告出稿へと変化することが予想されます。

動画配信サービスは、コンテンツ獲得競争が続きますが、さらに非コンテンツ分野での付加価値競争が今後のキーポイントになります。利便性の向上やコミュニケーションの活性化など、視聴の体験価値を向上させる仕組みのさらなる高度化が今後は重要になるでしょう。

コロナ禍で再び注目される「3Dプリンター市場」――光谷 好貴

コロナ禍によって既存のサプライチェーンが分断される中、人工呼吸器の部品や医療用マスク、綿棒状の検体採取キットなど、医療現場で緊急に入手が必要となったアイテムの生産に3Dプリンターが活用されました。これは、3Dプリンターが持つ「多品種生産対応」「オンデマンド生産対応」「新形状・新機能の実現」という3つの特性が発揮された一例といえます。

今後の「不確実な」時代においてデジタル化が進んでいく中、エンジニアリング、サプライチェーンで変化が生じてくると考えられます。3Dプリンターは、その変化に対して、柔軟な生産体制という観点から、重要な要素となります。エンジニアリングチェーンにおいては、市場から発生したデータをもとに研究開発や企画、設計が最適化され、柔軟な生産体制の構築や部品共通化などの取り組みが行われることになりますが、その際、3Dプリンターの活用がこれを促進すると考えられます。また、サプライチェーンでは、市場から発生したデータをもとに需要予測が高度化され、調達方法の複線化、供給量の柔軟な変更などが実施される際に、3Dプリンターの存在が大きな役割を果たします。

将来予測が困難なVUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)時代を背景にフレキシブルな生産手段に注目が集まる中、3Dプリンターへの投資は今後も堅調に推移するものとみられます。

コロナ禍のオンライン化を下支えし、 今後も社会全体のデジタル化を推進する「通信市場」――澤田 和志

通信市場における大きなトピックは、各携帯電話事業者(MNO:移動体通信事業者)が提供を開始した新料金プランです。NTTドコモが2021年3月に提供を開始した低廉な料金プランは大きな話題を集め、KDDIとソフトバンクもメインブランドおよびサブブランドで新たな料金プランをほぼ同時期にスタートさせました。これにより、2020年3月時点では諸外国と比較して高い水準にあった料金が大きく引き下げられました。

この影響を最も大きく受けるのは、仮想移動体通信事業者(MVNO)であるといえるでしょう。市場がすでに飽和状態であり、契約回線数全体が微減のトレンドに入っていく中、MNOは既存の料金プランに加えて低廉な料金プランとサブブランドを活用することで利用者の囲い込みを図っています。MVNOにとっては厳しい競争環境であり、2027年度の回線数は現在から半減すると予測しています。

5Gの契約回線数は大幅に増加していますが、現時点では多くのユーザーが4G対応端末で利用しており、実際に5Gを活用できているユーザーの数は、5G契約回線数とは乖離があります。2021年10月に、5G SA(Stand Alone)方式の5Gサービスが開始されましたが、その最大の特徴は、仮想的にネットワークを分割するネットワークスライシングを可能とすることです。今後は、5G SAによって5Gのスペックを完全に活用できるようになることから、5Gは社会全体のDX化を推進する重要なインフラとしてオンライン化を下支えすることが期待されています。

外部環境変化を追い風に伸長が期待される「HR Tech市場」――須山 祐介

複雑化する人事業務を支援するHR Techサービスの市場は拡大を続け、2027年には現在の3倍を超える6600億円の規模になると予測されます。

その背景には、通年採用の導入加速や女性雇用の推進などの「政治的要因」、採用形態の多様化やオンライン面接の導入加速などの「経済的要因」、労働人口の減少やグローバル化の推進などの「社会的要因」、スマートフォンの普及やAIを始めとした最新技術の発展などの「技術的要因」という外部環境の変化があります。こういった働き方や採用形態の多様化は今後も加速し、HR Techサービスの需要を押し上げる効果を果たします。

HR Techサービスの普及は、人材業務に自由化をもたらします。単純で工数がかかる業務をデジタルで代替してリソースを創出することで、採用候補者との面談や社員とのコミュニケーションなど、コア業務や企業としてより注力したい分野にリソースを振り向けることが可能になります。また、アンケート調査などを通じて定量化したデータをもとに、個々人の特性に応じた分析や打ち手の検討を行うことも可能になります。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp