フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ NRI JOURNAL これからの働き方をデジタル視点で分析する

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

これからの働き方をデジタル視点で分析する

執行役員 DX基盤事業本部長 斉藤 英紀

#DX

2022/04/19

コロナ禍を契機に、日本のホワイトカラーの間にも急速にテレワークが普及した。野村総合研究所(NRI)の調査※1によると、2021年9月時点でテレワークを実施している正社員の割合は全国で約32%であり、大都市の多い関東地方に限定するとこの割合は約45%に上昇する。
21年10月末に緊急事態宣言などが全面的に解除されてからというもの、ポストコロナに向けた各種の動きが日本でも加速し始め、朝晩の通勤電車に乗客が戻ってきている実感がある(2021年12月執筆当時)。これまで感染予防のためテレワーク中心だった勤務形態が変わり始め、人々がオフィスに出社するようになってきたのに相違ない。日本企業としては、ホワイトカラーの働き方をオフィスワーク中心に戻すところから経済正常化の道を模索している姿がうかがわれる。

変わっていくテレワークの目的と本質

日本より一足先に経済正常化の道を歩き始めた米国の状況はどうか。東海岸の企業ゴールドマン・サックスのCEOは、仏紙のインタビューに「われわれはオフィスが引き続き仕事の中心だと考えている。創造的な業界であり、チームが協力して働くことが前提だ。若手バンカーは先輩諸氏を見ることで仕事を学ぶ」※2と語った。ここにはBtoB企業ではOJTが絶対に必要であり、テレワーク一辺倒ではノウハウ継承が困難との認識がある。他方、西海岸の企業グーグルは、社員の一部に恒久的な在宅勤務を認める一方、オフィスも増設し、オンラインと対面のハイブリッドワークにしようとしている。
このように、海外でも新しい働き方は模索中であるのだが、ポストコロナの時代を展望したときに、日本のホワイトカラーの働き方というのは果たしてどうなるのだろうか。
これまでのテレワークは、オフライン空間でやってきたことをオンラインで再現しようとしていたに過ぎず、それでは現在の生産性を超えられない。生産性が変わらないならテレワークを止めてしまうという判断はあるだろうが、それではES(従業員満足度)は確実に下がる。
冒頭に紹介したNRIの調査結果では、テレワーク経験者の9 割が今後もテレワークの継続を希望しているからだ。テレワークを実施していないと、優秀な人材が流出しかねない。
こうした事情から、日本企業はいったん始めたテレワークを止めることはないだろう。しかし、その目的や本質は変わっていく。これまでの感染予防対策という意味でのテレワークは、今以上にデジタル技術を活用して、社員の生産性をより高めるためのものになるだろう。
テレワークが普及したことにより働き方の中で何が一番変わったかというと、会議の仕方である。Zoomなどを活用した非対面の会議が一般化した。さらにこれからは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術も活用して、非対面でありながら立体的な会議も可能になるだろう。
そして、会議データがすべてデジタル化された。いつ、誰と、何人で会議をしたのかがデジタルデータとして残るので、働き方が可視化できる。会議内容も自動的に記録することができるだろう。すると、とかく無駄を指摘されることの多い会議というタスクに対しKPIを設定することが可能になるので、生産性の測定や個人パフォーマンスとの相関分析もできるようになる。こうしてデジタル技術を活用することで、より生産性の高いテレワークが実現していく。

デジタル技術を活用した働き方に求められるもの

しかし、デジタル技術を活用した働き方にも問題はある。テレワークやZoomなどを中心とした非対面コミュニケーションばかり行っていると、新たな人間関係の構築が困難になり、特に入社して間もない社員のメンタルに影響が出てくるという現実がある。一番重要なことは、働き方の実態を把握して、それを改革していくことである。対面と非対面のバランスを考えた働き方改革が、今こそ必要になっている。
ただ、こうした問題もここ数年内のことで、10年先を見据えていくと様相が変わってくる。 たとえば、今の小中学生は既にオンライン授業を経験している。ソーシャルゲームなどで、顔を合わせたことのない離れた空間にいる人と、平気で対戦ゲームなどをしている。この世代は、最初からオンラインとオフラインをミックスした環境での人間関係を形成できるのだ。今の人たちが気にしている対面と非対面のバランスというような心配も杞憂に終わるかもしれない。
また、デジタル技術により働く場所の制約が少なくなるということは、日本社会がさらにボーダレスになることも意味する。日本は先進国の中では所得も生活コストも低い。安全で生活コストの安い日本に居住しながら所得の高い国の企業で働くことが可能になると、日本企業の人材不足がさらに深刻化してしまう。そうならないためにも、生産性を高める道具としてデジタル技術をもっと活用していくべきである。
デジタル技術を活用した未来の働き方というのは、現在からは想像もつかないほど様変わりしていることだろう。

  • 1 野村総合研究所「コロナ禍のテレワーク実施状況に関する調査」2021年9月
  • 2 「ブルームバーグ」2021年7月2日の記事
  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn
NRIジャーナルの更新情報はFacebookページでもお知らせしています

お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

NRI JOURNAL新着

Keyword