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NRI トップ NRI JOURNAL 新規事業開発における外部人材の活用実態と課題――先行企業にみる外部人材活躍の3つのポイント

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新規事業開発における外部人材の活用実態と課題――先行企業にみる外部人材活躍の3つのポイント

経営DXコンサルティング部 チーフコンサルタント 柳沢 樹里、清瀬 一善

#働き方改革

#DX

2022/06/30

企業の間で新規事業開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが加速していますが、素晴らしい成果につながったという話はあまり聞こえてきません。その背景には、自社に不足している新規事業開発のスキルや経験を補うため積極的に外部人材を登用したものの、その活用の仕方などに大きな課題があるのではないかと、NRIでは考えました。それを検証するため、大企業で新規事業開発に携わった人材に対するアンケート調査を実施した上で、新規事業開発の先行企業へのヒアリング調査を行いました。その結果、外部人材活躍のためのいくつかのポイントが分かりました。今回は調査を担当した清瀬一善と柳沢樹里に、アンケート調査の分析結果について聞きました。

先行企業では、マネジメント層の採用・定着が課題に

新規事業開発のために「出島」と言われる専門組織を作る動きが加速してから、数年が経ちます。その中で、外部からデジタル人材や幹部人材を鳴り物入りで登用したにもかかわらず、目立ったプロダクトやサービスが生み出されないなど、期待した成果を生み出せていない企業が少なくありません。成果を出せる企業とそれ以外の企業では、どこに違いがあるのでしょうか。そこでNRIでは、外部人材の活用実態や課題を探るため、2022年2月に大企業で新規事業開発に携わったことのある人材を対象にインターネットアンケート調査を行い、982人から回答を得ました。

その結果、外部人材活用を推進するためには、中途採用した新規事業のメンバー(一般社員)の活躍を促進し、その成果をどのように適切に評価するか、が重要な課題であることが分かりました。一方、新規事業開発に成功した先行企業とその他企業との間で課題認識に差が見られたのが、チームを束ねるミドル層や全体を統括するトップ層の採用・定着についてです。先行企業は、ミドル層やトップ層の採用・定着について強い問題意識を持っています。実際に、CDO(最高デジタル責任者)やCTO(最高テクノロジー責任者)などを好待遇で招聘しても、十分に活躍できずに短期で離職するなど、先行企業でも悩みの種となっています。

先行企業にみる外部人材活躍の3つのポイントと特徴的な取り組み

この調査結果をもとに、外部人材活躍のための取り組みを分析していくと、先行企業は①社内のしがらみに縛られず意思決定を行う、②外部人材と内部人材からなるチームで新規事業を推進する、③チャレンジしやすくする、という3つのポイントのもと、5つの特徴的な取り組みを進めていることが分かりました。
1)新規事業の専門組織のトップに外部人材を登用する、2)意思決定の仕組みを本社から独立させる、3)トップとメンバーで共通体験を積み、ゴール・目的を共有する、4)社員に社外業務を経験させる、5)社員のチャレンジを加点評価する。この5つをうまく組み合わせることが、外部人材活躍を促進する有効な打ち手となります。

このうち最初に検討したいのが、新規事業専門組織のトップの人選です。通常、新設する組織のトップには内部人材が就くことが多いのですが、先行企業では外部で経験を積んだ人材を登用しています。中には、DXに向けて海外の巨大テック企業で最先端分野のR&Dに携わった外国人をトップに迎えて、海外在住のままリモートでマネジメントしてもらうなど、大胆な人材活用を試みている企業もあります。
さらに、専門組織のトップに権限委譲し、既存組織に縛られずに意思決定できる仕組みを作ることも欠かせません。先行企業では、新規事業のプロセスや投資の面での自由度だけでなく、人事権も与えて新規事業に必要な人材を自由に採用できるようにしています。「本社から離れた場所に拠点を置き、出向者の数を極力抑えている企業もあります。いくら権限を与えても、出向者が増えれば、本社の文化や考え方がマジョリティになるからです」と、清瀬はさまざまな配慮の必要性を指摘します。「処遇に関しても、外部人材は金銭面だけを重視するわけではありません。裁量や自由度、企業のビジョンに共感できるか、どのような社会課題に向き合えるかなども重視しているのです」。

外部人材を活かすサポート体制

どれほど実績や経験があっても、孤軍奮闘が続けば燃え尽きてしまうため、外部人材を孤立させないサポート体制が重要になります。例えば、外部から採用した人材に対しては、階層を問わずメンターをつけて、社内の仕事の進め方や働き方の特徴、注意すべき点などを細かく伝え、うまく馴染めるように支えるのも1つの方法です。また、内部人材が自社のやり方に固執すると、外部人材の受け入れや協業の妨げになります。先行企業では、新規事業を託したい内部人材をベンチャー企業に送って自社と異なる考え方や価値観に触れる機会を作るなど、内部人材の意識変革も同時に進めています。

ところで、先行企業のやり方はハードルが高いと感じる企業でも導入しやすいのが共通体験を通じたゴールの共有だと、柳沢は考えています。「通常はトップが目標を決めて、メンバーはそれに取り組む形が多いのですが、ある先行企業では、チーム全員で新しい動きの起こっている海外市場に行き、現地で課題を見ながら、自分たちはこれから何をすべきかを考え、トップとメンバーが一緒にゴールを描くステップを入れていました。これは阿吽の呼吸では通じない外部人材と方向性を合わせるのに役立ちます。私たちも新規事業のビジョン策定やチームビルディングなど、各社に適したサポート体制づくりのご支援に力を入れたいと思っています」

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