フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ NRI JOURNAL ワークスタイルを変える電子契約サービス――生産性の向上からSDGsまで

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

ワークスタイルを変える電子契約サービス――生産性の向上からSDGsまで

社会ITコンサルティング部 中條 康一 堀崎 修一 乙黒 栄太

2022/07/29

コロナ禍をきっかけに、ワークスタイルの変革が進み、電子契約サービスの導入を検討する企業が急速に増加しています。電子契約サービスには事務コストの削減や契約の時短化などさまざまなメリットがありますが、導入の際に気を付けるべき課題も存在します。その解決策について、多くの企業へ電子契約サービスの導入をサポートしてきた、野村総合研究所(NRI)の中條康一、堀崎修一、乙黒栄太に話を聞きました。

コスト削減や生産性向上にとどまらない電子契約の利点

――最初に、電子契約サービスを利用するメリットについて教えてください。

中條:大きく、コスト削減と生産性向上の2点があげられます。電子契約の場合は印紙が不要ですし、契約書の印刷費や、書類のやり取りに必要な郵送費も削減できます。契約書の印刷や製本、封筒の準備や宛名書き、発送などの手間をなくすことができるので、スタッフはその時間を他の業務に充てることができるようになります。
紙の契約の場合は合意してから実際に契約を締結するまで、契約書のやり取りのための時間が必要ですが、電子契約であれば、合意したその場で契約を締結することも可能です。契約締結までのリードタイムが短くなれば、契約によって双方が得られるメリットを早期に享受できることにつながります。

また、保管・管理の効率化も見逃せません。紙の契約書の場合は、ファイリングして書庫などに保管しておくことが一般的ですが、そのための作業やスペースの確保が必要になりますし、過去の契約書を探すのにも一苦労です。
クラウド型の電子契約サービスであれば、検索性が高い上に紛失のリスクは低く、自然災害などによってオフィスが被災しても契約書が失われる心配はありません。ペーパーレスであることから、最近ではSDGsやESGの観点からも評価されるようになっています。

――利用企業は増えているのでしょうか?

乙黒:ここ2年ほどで利用する企業が急速に増えてきており、2022年の時点では従業員数2名以上の企業の約85%が利用に前向きな状況となっています。
背景の1つは、コロナ禍によってワークスタイル変革が必要になり、オフィスに出社しなくても契約ができる電子契約サービスへのニーズが高まったことです。

もう1つ大きな背景としてあるのが2020年に政府が発表した、電子署名法第2条、3条のQ&Aによる見解です。電子契約サービスには複数の署名方式があり、方式によって本人による署名であることの担保性が変わります。
これまで主流だった当事者型署名方式は、秘密鍵と電子証明書を自ら管理して電子署名を生成するため本人性が高かったものの煩雑な手続きが必要だったのですが、政府の見解により、ある一定の条件の下では第三者が関与する立会人型署名方式のサービスでも適法性があるとの方針が示されたことです。処理がシンプルで導入しやすく、料金も安い立会人型署名方式に国からのお墨付きが出たことで、利用を検討する企業が急速に増え始めました。

検討事項の多さやサービス選定の難しさが導入前の課題

――とても便利に聞こえますが、導入するときに気を付けるべきことはありますか?

乙黒:サービスの法的適合性の確認や取引先への周知など、電子契約サービス特有の検討事項が多くあることです。電子契約サービスに関わる主な法律には「電子署名法」「電子帳簿保存法」「e-文書法」などがありますが、いずれも法律に準拠した技術等の要件を定めているわけではないため、サービスの適法性についての解釈は提供事業者やユーザの判断に委ねられています。そのため、自分たちが利用するサービスについては事前の十分な調査が必要です。

もう1つは、サービスの種類が非常に多いため、最適なサービスを選定するのに時間がかかることです。あらゆる契約に広く対応できるサービスがある一方で、金融業界や不動産業界等の業界固有の契約にも細かく対応しているサービスもあります。法制度の移り変わりも激しく、それらへの対応も含めた機能のアップデートが頻繁になされているため、電子契約サービスの比較サイトにも最新の情報が掲載されているとは限りません。法的に電子化が許容されていない契約書が存在することにも留意した上で、自社の業務と合致するサービスを選定するのは手間がかかります。

導入にあたって留意すべき3つのポイント

――その他、企業の担当者がサービスを選択するときに留意すべき点について教えてください。

乙黒:3つのポイントがあります。1つ目は「企業特性や業務に応じて検討事項を抜け漏れなく抽出する」ことです。契約時のミスがあると、法的トラブル、ひいては企業の信頼性の棄損に発展しかねません。そのため、導入の構想段階で法的適合性やセキュリティ面に関する検討事項を抽出し、対応することが必要です。懸念がある場合は、事前に適法性を照会するなど国のグレーゾーン解消制度も活用しながら検討事項を一つひとつクリアしていくことが重要と考えます。

堀崎:2つ目は「法務部門や取引先を含めた関係者と協力して進める」ことです。企業によっては契約に関する業務フローが厳格に定められていて、少しの変更でも大変な労力がかかる場合があります。
そのような時、変えられない部分と変えられる部分を調整しながら、サービス導入後の契約に関する業務フローを検討するためには、社内の各方面との折衝や協力がとても大切になります。これはある意味、契約書のデジタル化に伴う業務改革とも言えます。

中條:3つ目は「最適なサービス選定のプロセスを策定する」ことです。電子契約サービスは数多くありますが、自社にとって必須の要件を定め、その部分に絞ってベンダーに確認すれば手間はあまりかかりません。その上で、最後に残った2、3社に対して細かな要件を聞いていく。そのような進め方をすれば比較的手戻りなく効率的に進むのではないでしょうか。
企業が行う契約にはオフィスを借りるための契約、融資を受けるための契約、社員との労働契約、お客様との売買契約やサービス提供契約など、さまざまなものがあります。それらを一気に電子化しようとするのではなく、導入しやすいところから手を付けることも1つのポイントだと考えています。

――最後に、電子契約サービスの普及に向けて、ご意見をお聞かせください。

中條:電子契約サービスの導入は、利便性の向上や事務負担の削減だけでなく、非常時リスクの低減やSDGsへの貢献など副次的なメリットも享受することができます。導入までの過程が少し面倒に感じるかもしれませんが、長い目で見た時のメリットは非常に大きいため、より便利な未来を作るという観点からも電子契約サービスを導入する企業のサポートを続けていきたいと思います。

堀崎:NRIは製品としての電子契約サービスを持っていない立場で、顧客の企業特性を鑑み、第三者の立場で公平な観点で顧客にふさわしいサービスを判断できます。また、SaaSをはじめとしたシステム導入に関する数多くの経験やノウハウがあります。それらの知見も活かして電子契約サービスに関連する企業の課題を共に解決していきたいと考えています。

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn
NRIジャーナルの更新情報はFacebookページでもお知らせしています

お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

NRI JOURNAL新着

Keyword