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非常時のテレワーク、日常のテレワーク

コンサルティング事業本部 副本部長 桑津 浩太郎

#時事解説

#新型コロナ

2022/08/19

コロナ禍がもたらした社会変化のうち最も大きなものの一つは、テレワークの普及であろう。さまざまな調査結果から、この三年間で大手企業での導入はかなりの水準に達しており、とりわけ通信やIT、出版などの業種では積極的である。このように、業種差こそあれテレワークは身の回りにありふれたものとなっているといえよう。特に日本においては、女性のテレワークに対する肯定的な見方が男性のそれを上回っている。これは家事、子育てといった負荷が相対的に重い女性層にメリットがより高く評価されたためと推測される。

欧米に比べテレワークに消極的な日本

一方、欧米諸国でのテレワーク比率はコロナ禍でさらに上昇している。特に米国における転職市場では、ジョブ定義書に「テレワーク可」と記述しないと採用できないようになっている。
確かに諸外国との差は縮まったとはいうものの、日本の現在のテレワーク比率はコロナ禍以前の米国と同程度と目されており、依然としてテレワークに消極的であることを否定できない。
あらためて日本の取り組みを見ると、中小企業における導入の遅れや、テレワークと親和性の高い職種を限定しがちな物言いは、依然として無視できない。代表的な問題点として、「生産性が低下する」「重要な意思決定を支えるには力不足」、さらには「エッセンシャルワーカーにはそもそも無理」といったものが挙げられている。実際問題、日本では今もテレワークをめぐるコンフリクトは解消していない。テレワークは非常時のみ・非エッセンシャルワーカーのみに限定されるべきで「働き方の例外」とする見方と、職住近接の「働き方のデフォルト」とすべきという見方が真っ向から対立している。帝国データバンクのアンケート結果注を見ると、乱暴にいって前向き評価4 割、やや否定的が5 割超といった印象である。議論がスタート地点に戻ってしまっている感がある。
ただ導入先進国の米国においても、テレワークをめぐる各種のコンフリクトが見られる。代表的なものとしては、パーマネント(恒久的)テレワークとテンポラリー(一時的)テレワークをめぐるGAFAの取り組み、そしてシティバンクグループにおける「Zoom Free Fridays」が挙げられる。
前者はコロナ禍対応で大がかりなテレワークに移行していたGAFAにおいて、経営陣からの対面・接触モードへの復帰要請と、一部労働者によるパーマネントテレワークへの高い評価と定着への提言である。これらの企業における経営陣の主張は、程度の差こそあれ、日本企業の経営陣と同じ問題意識にあると思われる。意思決定やその前提となるコミュニケーション・検討に際して、対面・接触をなくすことは不可能ということである。これに対して、パーマネントテレワークを主張する立場は、ここ2~3年で十分な成果、高い生産性を実現しており、テレワークが劣位の働き方という見方は間違っていると要約される。「生産性は高まっている」「十分な成果を上げている」と力強く断言している点に、日本のテレワーク支持層の主張とは若干の相違があるかもしれない。
同じく米国で注目されたのは、シティバンクグループにおける「Zoom Free Fridays」で、毎週金曜日は社内での打ち合わせには原則としてZoomを使うことを禁止する、というものだ。報道によると、コミュニケーションの質を高めることと同時に、テレワークにありがちな経営層の負担増(短いサイクルでたくさんの非接触面談が詰め込まれて疲弊する)も理由の一つと思われる。このZoom Free Fridaysはテレワークの否定ではなく、テレワークの実装・利活用を高度化する一手段ともいえる。線引きは難しいが、過度なテレワークに対する負担軽減効果を期待するものと見るべきであろう。
いずれもテレワークを全面的に排して、コロナ禍以前に戻そうという動きではない。そこが日本とは大きく異なっており、テレワークと対面・接触の働き方の線引きを模索する動きと見るべきであろう。

日本におけるテレワークの一層の普及に向けて

非常時のテレワークは、先進国企業の基準ほど高くはないが、日本でも一応認知・許容されたといえる。次に検討すべきは、現時点で導入できていない企業への導入推進、テレワークをよりよくすることを目的とした上で、Zoom FreeFridaysのような取り組み、さらには対面・接触アプローチをどう組み合わせるかといった議論であろう。
その前提条件として、日本の産業界は決して「テレワークを進めすぎたことの弊害」を語る水準にはない。むしろ、子育て・介護と働き方をめぐる労働環境改善につながる現状、最も有力なアプローチであること、この三年間で単身赴任をなくそうとする動きにまでつながっていること、これらすべてが極めて大きな成果と期待であり、さらなる成果を上げる余地がまだ多く残っているという前提で前向きに取り組むべきと考える。

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