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NRI トップ NRI JOURNAL スマートビル時代に乗り遅れるな! 日本らしいMaster System Integratorの開発・育成を

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未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

スマートビル時代に乗り遅れるな! 日本らしいMaster System Integratorの開発・育成を

独立行政法人 情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC) 粕谷 貴司氏
独立行政法人 情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター 岡田 拓郎氏
NRIアーバンイノベーションコンサルティング部 又木 毅正
NRIアーバンイノベーションコンサルティング部 小林 直弘

#IoT

#DX

#スマートシティ

2022/09/08

経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)は、Society 5.0の実現に向けてデジタルアーキテクチャの検討や社会実装の支援をミッションとして活動しています。 Society 5.0とは、内閣府が提唱する「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」です。
2022年4月から、Society 5.0の主要な構成要素であるスマートビルのアーキテクチャ検討プロジェクトがスタートし、NRIは海外先進事例に関する事前調査を支援しました。調査をきっかけに、意見交換を続けてきたIPAとNRIの関係者が、スマートビルの現状や課題について話し合いました。

協調領域をつくって標準化を進める

デジタル化の進展を背景に、カーボンニュートラルや省エネルギーの観点からも、スマートビルが現在、注目されています。米国、欧州、中国などでは、数十棟から百桁台のビルのスマート化が進行中です。「さまざまなテクノロジーが使われつつ、それを意識することなく、人が快適に過ごせるヒューマン・セントリックなスマートビルが理想的です。ただし、いわゆるインテリジェント・ビルを増やすだけでは、Society 5.0は実現しません」と、IPAの岡田拓郎さんは指摘します。

「ビル単位でスマート化に役立つアプリやサービスを開発しても、様式が異なって使い回しができず、価格が高止まりし、投資対効果が得にくいという声をよく聞きます。各社が独自にスマート化を進めるのではなく、ビル間でデータ連携ができる基盤を作って、街全体で効率化や最適化を図る必要があります。企業が集まって協調領域で連携しつつ、それ以外の領域で競争するような世界を作っていかないと、日本はガラパゴス化しかねません」と、岡田さんは危機意識を持っています。

海外事例を見ると、ビルに関する各設備の標準化までも視野にいれて、どのビルも同じ形で運営できることを目指している企業があると、NRIの又木毅正は分析します。「先進企業は、自社標準でスマート化されたビルが数百棟~千棟以上になれば、プラットフォームやビルOSが収益化できると見越して、戦略的に動いています。その先にあるのは事実上の標準化なので、日本企業も見過ごすわけにはいきません。標準化に乗り遅れれば、空調やエレベーターなどグローバルで強みを持つ日本の設備会社が、日本のプロトコルのままで戦えなくなる可能性が出てくるなど、産業競争力や企業の魅力度にも影響してきます」

MSI機能の確保・拡充が急務

標準化と並んでスマート化の鍵となるのが、設備、システム、ビル業務、アプリを理解して、さまざまなステークホルダーをまとめながら、ビルプラットフォーム・システムのアーキテクチャ設計ができるマスター・システム・インテグレーター(MSI)の存在です。これまで建築・不動産業界はデジタルとは遠い分野とされてきたため、MSIの確保は急務となっています。「欧米では、シュナイダーやハニウェルなど計装企業が母体となって、パートナー企業などを巻き込みながら、MSI機能を担おうとしています。設備、システム、アプリを統合できる人材の採用や育成も組織的に進めています」と、又木はこうした企業がゲームチェンジャーになりうると考えています。

しかし日本では現在、MSI機能を一社で担える企業はほとんどないと、NRIの小林直弘は指摘します。「スマートソリューションの受益者はビルオーナーやテナントなど多岐にわたり、対価が回収しにくいことが、MSIの事業に足を踏み出しにくい一つの要因です。さらに、デジタル人材と建設業界では給与体系に乖離があり、海外企業もその点では苦労していると聞きます。その中で、ある計装会社はICTに強みを持つコンサルティングファームと連携して、スマートソリューションをつくるセンターを共同で作って事業展開をしています。こうしたやり方は、人材面で悩む企業の参考になるかもしれません」

ICT企業の地位と収益を向上させる

MSI機能を確保する際には、ビル作りにおけるSIer(システムインテグレーター)の立場や関わり方を見直すことも必要だと、IPAの粕谷貴司さんは考えています。「発注仕様書にSIerと記載されていても、電気工事などの下請けにすぎず、設計者からは遠い存在です。目指すべきは、SIerの地位を上げて、オーナーに近い上流の設計段階から入れて、全体のシステムをしっかりとマネジメントができるようにすること。それから、ICT企業は営業の一環として無料でシステム関連の提案を行い、そこでは対価を得ないことが多いのですが、建設MSIを1つの業態として収益を獲得できるように変えていく必要があります」

その一方で、粕谷さんは日本企業の競争力について前向きに捉えています。「日本のデザインビルドは、設計と施工が分かれていても、丁寧にプロトコルをつなげて調整し、完璧に仕上げられるところが、海外から高く評価されています。ゼネコンや設計会社にはバラバラな機能をマネジメントできる文化があるので、企業連携を通じて日本ならではのMSIの形がつくれるかもしれません。関係者とそうした議論も重ねながら、我々のプロジェクトでは認証や教育などの仕組みづくりを粛々と進め、スマート化の実装支援をしていきたいと思っています」

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株式会社野村総合研究所
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