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NRI トップ NRI JOURNAL 「共創」を通じて地方のデジタル資本を整備し、社会課題を解決する~鶴岡市からの挑戦~

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

「共創」を通じて地方のデジタル資本を整備し、社会課題を解決する~鶴岡市からの挑戦~

システムコンサルティング事業本部 社会ITコンサルティング部 シニアコンサルタント 神林優太

#価値共創

#サステナビリティ

#イノベーション

2022/09/30

2022年6月7日に閣議決定されたデジタル田園都市国家構想基本方針をうけ、人口減少等に起因した様々な地域課題に悩む地方都市では、デジタルを活用した社会課題解決への取組が一層活発化しています。NRIは新たな地方創生の第1弾のモデルケースとして、2019年から山形県鶴岡市と連携し、デジタル化による構造改革を推進しています。2021年4月に、地域全体のデジタル化を推進するために市に発足した、鶴岡市企画部デジタル化戦略推進室にCDOを補佐する立場で常駐し、地場の関係者と都市部の企業等との窓口を担う神林優太に、デジタルを活用した地方創生の現状や課題を聞きました。

地方都市がデジタル化で目ざす姿は“ミニ東京”とは限らない

地方都市が抱える多くの地域課題の背景には、人口減少により企業等のサービスが縮小し、そのことが更なる人口減少の要因となる「悪循環」が存在します。この「悪循環」を断ち切れない限り、一時的な国の交付金や企業の持ち出しによるデジタルサービス導入だけは、本質的な地域課題の解決になっているとは限りません。「人口減少が続いている環境でも持続可能な、地域の“自立的な成長力を確保できる仕組みづくり“が本来必要とされている」と神林は指摘します。地方自治体や地域の企業が主体性を持って課題解決の検討に参画しないで、都市部の企業が推奨する地域課題解決サービスをそのまま導入してしまうと、地方都市は、サービス利用料の流出だけでなく、自力で課題に取り組めば得られたはずのノウハウ蓄積や人材育成の機会も失う恐れがあります。
デジタル化で地方創生のモデルを作ると意気込んで赴任した神林が最初に感じたのは、デジタル化に対する東京との意識の違いでした。当時の国のスマートシティ関連の検討会などで用いられる資料には、高層ビルが立ち並ぶ街にドローンや地下鉄が走るようなイメージ図が描かれており、それを市民に見せたところ「こんな景色は鶴岡にはないし、なりたくもない」「こちらから都会の大企業に”支援”を求めたこともない」と伝えられたこともありました。それぞれの地域には歴史があり、風土があり、地元の方々はそれに対する誇りを持っています。東京と比較した場合の地方都市の不便さを「課題」として設定し、東京の視点から「解決」するアプローチは必ずしも市民に受け入れられるとは限らないのです。

図出所)スマートシティ官民連携プラットフォーム

システムをつなぐ前に人をつなぎ、地域での共創を生み出す

次々と顕在化する地域課題を解決するには、地方自治体が旗振り役となって、地場の企業や市民と共創することが重要です。そのためには、共創を先導する自治体職員がデジタル化の恩恵を実感し、その良さを自分の言葉で伝える必要があります。
神林がこれまで携わってきた国や企業、大規模自治体のデジタル化予算と比較すると、地方自治体のデジタル関連予算は数十分の1程度と非常に限られていました。その中で、どうしたら職員自身にデジタル化の恩恵を実感してもらえるだろうか。そう考えた神林はまず、小さな取り組みに注力しました。たとえば、ノーコードツールを導入し、市民の生活に密接に関わる情報の発信機能や電子手続き機能を、職員自ら開発できる環境を整備することで、県外在住の学生に市内で採れた食材を送る「つるおか食の応援便」など鶴岡市独自の取組への登録を安価に素早く新たな市民サービスを市役所内で作ることができるようになりました。こうした小さな成功体験を積み重ねるうちに、デジタル化に対する職員の意識が次第に変わっていきました。

「デジタル化されていなくても日々の業務は非効率ながら回っている中、今のやり方を変えるため業務時間を割くことに、抵抗感を示されることも少なくありませんでした。しかし、市の職員がデジタルの恩恵を実感した後は、実体験をとおし、自分の言葉で利便性を伝えることができるようになります。地域課題の解決に必要な人的・経済的資源を確保するためには、自治体自身によるデジタル活用が不可欠だったのです」と、神林は振り返ります。

都市部のプレイヤー間で企画や開発を行い、それを現地に持ち込む「頭越し」のやり方ではなく、地元の人々と一緒に企画段階から作り上げていく「共創型」で社会課題に取り組むことにも、神林はこだわりました。地元商工団体、医療機関、各種公共団体、金融機関、学術機関、地場企業やベンチャーなど、400人以上の関係者に会ったほか、若手起業家の集まり、講演会、勉強会などにも積極的に参加し、対話を続けました。特に社会課題解決を目指すサービスを導入するだけではなく、地域が自立的に運用することまでを見据えた場合は、その地域独自の状況を把握することが大切だと、神林は実感しています。

デジタルの地産地消に挑戦する

鶴岡市には広大な中山間地域が含まれます。それを踏まえて、地元の工業高等専門学校と共同で鳥獣追払いシステムや防災用河川水位センサーの開発に取組んでいます。この取り組みは、技術開発だけではなく、学生に地元への理解を促すことで、地域に根差したサービスを作れる人材の育成・定着や、学生による新たな起業を見据えています。デジタルスキル教育を受けた学生が地元に定着することで、地元で運用やメンテナンスができる状態を目指しています。また、地場のバイオ関連企業と連携して、見守りサービスやスマートトイレなどで取得・分析したデータを体調管理や生活指導に活かす実証実験が始動しています。「日々の生活の中で負荷なく計測されるデータを、地場の企業に連携し、サービスを向上させ、それを市民が享受する。そうした 『データの地産地消』モデルによって地場企業の競争力が自立して継続的に高まるよう、活動を続けていきたいと考えています」

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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