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木内登英の経済の潮流――「中間選挙後の米国経済政策と為替市場の転換点」

金融ITイノベーション事業本部  エグゼクティブ・エコノミスト  木内 登英

#木内 登英

#時事解説

2022/11/11

11月8日に投開票された2022年米国中間選挙は、その最終結果が確定するまでに、なお時間を要する状況です。ジョージア州の上院選は、いずれの候補者も過半数の得票に至らなかったため、12月6日の決選投票に持ち越されることになりました。上院選全体では、民主・共和両党が拮抗している状況です。他方、下院選では直前の予想と比べて与党・民主党が思いのほか善戦していますが、比較的僅差で野党・共和党に過半数の議席を奪われる見通しとなっています。

注目は早くも2024年大統領選挙に

民主党が下院で過半数の議席を失い、いわゆる「ねじれ状態」に陥れば、バイデン大統領の残り2年の政権運営は一段と困難さを増すことが避けられません。
今回の中間選挙は、バイデン政権1期目の政策運営に対する有権者の審判、という性格が強いものです。歴史的物価高騰という強い逆風の下でも、民主主義を守る、人工中絶の権利を守るというバイデン政権の訴えは、一定程度有権者に届いたようです。しかし、バイデン政権の支持率は低迷を続けている一方、高齢・健康問題などから、2024年の大統領選挙にバイデン大統領が再出馬することを支持しない声が、今後民主党内で高まる可能性があります。
党内の反対で2期目に再出馬を断念した米国大統領は、過去にも存在します。近年では、民主党のジョンソン大統領が、党内のベトナム戦争反対派に突き上げられる形で、1968年3月に突然、同年秋の大統領選に出馬しないと表明したことがあります。バイデン大統領の去就に注目が集まります。
他方、今回の中間選挙には、共和党のトランプ元大統領の人気を測る場、という側面もあり、2024年大統領選挙の前哨戦との性格を帯びています。トランプ元大統領は、自らが支持した共和党議員、州知事らが多く当選したことを自身の影響力の証しであると訴え、近いうちに大統領選挙への出馬の意向を正式に表明する可能性があります。 
中間選挙を終えたばかりではありますが、人々の関心は早くも2024年の大統領選挙に移っているのです。

外交・安全保障政策には大きな変化は生じないか

仮にねじれ状態に陥っても、バイデン政権の外交・安全保障政策には大きな変化は生じないとみられます。この分野でバイデン政権の政策姿勢を大きく特徴づけてきたのは、同盟国と連携した対中国政策です。議会で共和党の勢力が強まっても、中国強硬姿勢は共和党も民主党と同様であるため、現在の対中国政策は維持されやすいとみられます。その結果、日本が米国等と連携して中国の軍事的脅威に対峙し、中国を意識して経済安全保障政策を推進する姿勢にも大きな変化は生じないでしょう。また、米国の北朝鮮政策については、選挙後も膠着した状況は変わらないと考えられます。
他方、変化が生じる可能性があるのは、ウクライナ問題への対応です。共和党内には、戦争終結の見通しが立たない中、バイデン政権によるウクライナへの軍事支援の長期化を批判する声があります。バイデン政権は、軍事支援から停戦合意の模索へと、対ウクライナ政策の軌道修正を共和党から求められる可能性が考えられます。

無党派層取り込みを意識した経済政策も

バイデン政権の経済政策については、中間選挙の結果に直ぐに大きく影響を受けることはないでしょう。国民の関心が高い歴史的物価高騰への対応が、引き続き最優先課題となります。
しかしバイデン政権は、次の大統領選挙に向けて、この先、無党派層の取り込みをより意識し始める可能性が考えられます。その場合、今までの左派色の強い経済政策を中道寄りに幾分シフトさせるかもしれません。具体的には、企業や富裕者層にも一定程度配慮する政策運営です。
この点から、バイデン政権が為替政策を修正する可能性に注目しておきたいと思います。それは、世界経済や金融市場に非常に大きな影響を与え得るものです。今までバイデン政権は、物価高を抑制する効果が期待できるドル高を容認する姿勢が強かったのですが、この先、ドル高によって米国の輸出企業の国際競争力低下が明確になっていけば、行き過ぎたドル高を抑制する姿勢を見せ始める可能性があります。
ただし、ドル高の背景にあるFRB(米連邦準備制度理事会)の大幅利上げ(政策金利引き上げ)の姿勢は直ぐには変わらないため、金融政策と為替政策を巡って、バイデン政権とFRBとの間に一時的に軋轢が生じる可能性があるでしょう。

12月のFOMCで利上げ幅は0.5%へ

11月2日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBは、金融市場の事前予想通りに0.75%の利上げを決定しました。0.75%の大幅利上げの実施は4会合連続で、政策金利の水準は3.75%~4.0%にまで引き上げられました。これは2008年1月以来、約14年半ぶりの高い水準です。
今回のFOMCの声明文には、「将来の利上げのペースを決める際に、委員会は金融政策が経済活動、物価、経済・金融環境に与える影響について、金融引き締めの累積的効果、時間差を考慮する」との文言が新たに加えられました。これは、先行き、利上げペースを縮小させる可能性を示唆したものと考えられます。
FRBは、利上げが行き過ぎて、それが遅れて景気を著しく悪化させてしまう、いわゆる「オーバーキル」のリスクを強く意識し始めたのでしょう。次回12月のFOMCでは、利上げ幅は0.5%へと縮小する可能性が高まったと言えます。

ドル高円安も終盤戦に入ったか

今回のFOMCの声明文を踏まえると、FRBの利上げ局面もいよいよ終盤戦に入ってきたと言えるのではないでしょうか。FRBの利上げ姿勢に強い影響を受けてきた為替市場でのドル高円安も、終盤戦に入ってきたと考えられます。 金融市場は現在、12月のFOMCで0.5%幅の利上げの実施をほぼ織り込んだ状況です。ただし、12月のFOMCで利上げ幅が0.75%から0.5%に縮小することは、今回のFOMC以前から金融市場で予想されていたことでもあります。世界の金融市場の流れを大きく変えるような転換点となる、いわゆるマジックナンバーとなる利上げ幅は、0.5%ではなく0.25%でしょう。FRBが利上げ幅を0.25%まで縮小させる可能性を金融市場が強く意識した時点で、米国長期金利の上昇傾向は一巡、ドル高円安傾向も一巡するものと考えられます。
そして、既に述べたバイデン政権のドル高容認姿勢の修正が、こうしたFRBの利上げ姿勢の変化と重なれば、ドル高円安局面が一巡するだけにとどまらず、ドル安円高方向に大きく巻き戻される可能性もでてきます。
依然として先行きの不確実性は強い状況ですが、その転換点のタイミングを敢えて予想すれば、12月のFOMC後から来年1-3月期となります。その場合、ドル円レートは1ドル160円に達する前に、ドル高円安からドル安円高へと大きく方向を転じていくことになるでしょう。

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プロフィール

木内登英

エグゼクティブ・エコノミスト

木内 登英

経歴

1987年 野村総合研究所に入社
経済研究部・日本経済調査室に配属され、以降、エコノミストとして職歴を重ねる。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の政策委員会審議委員に就任。5年の任期の後、2017年より現職。
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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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