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NRI トップ NRI JOURNAL 5000日後の世界 これからのテクノロジーの進化とその役割――NRI未来創発フォーラム2022 Part2

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5000日後の世界 これからのテクノロジーの進化とその役割――NRI未来創発フォーラム2022 Part2

#DX

#政策提言

2022/12/23

2022年10月17日に開催された「NRI未来創発フォーラム2022」。これまでの集大成としてデジタルが拓く未来社会像を総括して描き、デジタル化によるウェルビーイングの向上、日本企業の戦略、そして日本のとるべき方向性などを提言しました。Part2では、テクノロジーの潮流を長年見つめてきた論客を招き、これからのテクノロジーの進化とその役割、我々がいかにしてそれに向き合っていくかについて考察した特別講演、および特別対談の内容を報告します。

前のページ:デジタルの先にある日本の未来――NRI未来創発フォーラム2022 Part1

これからの5000日で、テクノロジーのフロンティアではあらゆるものが変化する

『WIRED』創刊編集長のケヴィン・ケリー氏が登壇し、「5000日後の世界」と題して特別講演を行いました。

「これからの5000日間、テクノロジーのフロンティア(最前線)では、デジタル、エネルギー、食、医療、金融など、あらゆるものが変化していく」と述べたケリー氏は、「これらの変化の基礎となるのは世界中のグローバリズムの加速だ。経済圏も文化圏も1つになり、世界中のコンピュータが1つの大型コンピュータにつながるだろう」と予測しました。

そして、テクノロジーの大きな変化として「メタバース」を挙げ、「これはスマホの次に来る大きな変化だ。初めにインターネットが情報をデジタル化し、次にSNSが人間の行動や関係をデジタル化した。そして3つめとしてメタバースが物理的な世界をデジタル化する。あらゆるモノや場所がデジタル化され、検索や操作が可能になる」と説明。「スマートグラスをかけると、現実世界に重なってバーチャルの世界が見える。実物と同サイズのこのデジタルツインには物理的には存在しない映像や文字が見え、自らのアバターがその世界に入ることもできる。この拡張現実の世界 “ミラーワールド”では、あたかもそこに人がいるように感じられ、SNSの中で最もソーシャルな場所になるだろう」と語りました。

また、5000日にとどまらず、50年後でも大きなトレンドとして予想されるものとして「AI(人工知能)」を挙げました。「リアルタイム自動翻訳によって、どこにいても、どんな言語でも互いに話ができ、世界中の優秀な人が自らの専門性を活かして活躍できる。AIはサービス化が進み、電気のように好きなだけ使える。AIが搭載されたロボットの医師や弁護士も登場し、人間とAIはパートナーとしてベストな成果を出せるようになる。まさに“デュエット”だ」と続けました。

最後にケリー氏は、「今は、行動を起こす最高の時だ。5000日後にはメタバースやAIのエキスパートが生まれているかもしれないが、今はまだいない。誰でも新しい分野、フロンティアに参入できる。これは日本企業や日本にとって大きなチャンスだ」と強調しました。

テクノロジーを受け入れ、使ってみることで初めて舵取りできる

世界情勢が不安定で先が見えない今、デジタルをはじめとしたテクノロジーは我々の生活にどんな役割をもたらし、我々はそれにどう向き合っていくべきなのか。特別対談では『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏をモデレーターとして、野村総合研究所(NRI)代表取締役会長 兼 社長の此本臣吾とケヴィン・ケリー氏が意見を交わしました。

ケリー氏が「テクノロジーの価値は実際の生活の中でまだ正確に測れていないが、私が言えることはテクノロジーによっていろいろな選択肢が生まれるということだ」と述べると、「日本ではデジタル化が成長戦略として語られることが多いが、GDPを増やすためにデジタル化を使うという考え方には違和感がある。デジタル化は人々の生活に密着したツールの利便性を高めるために進めるものだと思う」と此本。
これを受けてケリー氏は、「ウェルビーイングはある意味で非効率を意味する。喜びを感じるもの――夕食での会話も、アートの制作も、効率的な作業ではない。創造性や想像力を駆使するものであり、生産性では測れない。逆にAIは生産性に長けているので、機械に効率的に仕事をしてもらうことで人間には時間が増え、やりたいことを選択できるようになる」と語りました。

さらに此本は「最も関心があるのは、AIを今後どう活用していくのか、AIでどんなことができるようになるのかということだ。AIは単独で何かを成し遂げるものではなく、それを入れたシステムを使う“人”と協調して初めて能力が発揮される。『人間とAIのデュエット』という話は、とりわけ印象的だった」と述べました。
ケリー氏は「AIはすでに意識しない存在になっている。今後、特定のタスクに特化した何百種類ものAIが世に出るだろう。我々に必要なのは、テクノロジーに進化が生まれ、選択肢が増えるように、エネルギーを投入して努力していくことだ」と続けました。

松島氏が「人間は今後どういうスタンスでテクノロジーと向き合っていくべきか」と意見を求めると、ケリー氏は「歴史を振り返ると、テクノロジーは人間に大きな影響をもたらした。必ず到来するAIの時代に、人間はテクノロジーとエンゲージしていくべきだ。受け入れて、利活用して初めて操作でき、舵取りして、影響を与えることができる。拒絶や規制をすると操作することはできない」と強調。
此本もビジネス経営の面から「テクノロジーにエンゲージしていくには、経営側が意識的に実行環境を用意することが必要だ。そうしないとイノベーションを起こすのは難しい」と述べました。

最後に、「近い将来、メタバースのツールを活用することで、100万人が1つのプロジェクトをリアルタイムにコラボレーションすることも可能になるだろう」とケリー氏。
此本は「テクノロジーの最前線にはまだ専門家はいない。10年後に振り返って『あのときやっておけば』とならないよう、個人も企業も早く着手することが必要だ」と締めくくり、フォーラムは幕を閉じました。

登壇者プロフィール

ケヴィン・ケリー氏(Kevin Kelly) 『WIRED』の創刊編集長で、現在は同誌の“シニア・マーヴェリック”。 ウェブサイトCool Tools創設者で、『ホールアースカタログ』の元編集者。主な著書に『〈インターネット〉の次にくるもの 未来を決める12の法則』(NHK出版 2016)、『テクニウム テクノロジーはどこに向かうのか』(みすず書房 2014)、『5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる』(PHP新書 2021)など。

松島 倫明 氏(まつしま・みちあき) 『WIRED』日本版編集長。雑誌『WIRED』の他、SZメンバーシップ、WIREDカンファレンス、Sci-Fiプロトタイピング研究所、WIRED特区などを手がける。NHK出版を経て、2018年より現職。内閣府ムーンショットアンバサダー。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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