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日本のサーキュラーエコノミー転換、実現には何が必要か

サステナビリティ事業コンサルティング部 樹 世中

#時事解説

#サーキュラーエコノミー

#サステナビリティ

2022/12/28

野村総合研究所(NRI)は、コンサルティング部門が着目する社会課題とその解決方向についての情報提供を目的として、日々現場で顧客とともに社会課題解決に取り組むコンサルタントを発表者とした全8回の発信活動を実施しています。 今回のテーマは、カーボンニュートラルと親和性があり、持続可能な経済システムとして注目されている「サーキュラーエコノミー」です。世界では今、どのようなサーキュラーエコノミー政策が採られているのか。日本がサーキュラーエコノミーへの転換を実現するためには、何が必要なのか。本テーマに詳しいサステナビリティ事業コンサルティング部の樹世中に聞きました。

今、なぜサーキュラーエコノミーが求められるのか

サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、これまでのリニアエコノミー(一方通行型の線形経済)では廃棄されていた使用済みの製品や原材料などを、最大限に利用した上で、「資源」として循環させる新しい経済システムです。気候変動リスクの高まり、資源枯渇・汚染への対応が急務となった近年、持続可能な経済・産業への転換を可能とする経済形態として注目が集まるようになりました。

サーキュラーエコノミーが求められる背景には、4つの要因があります。1つめは、リニアエコノミーの限界です。脱炭素の追い風を受けたEVの普及によるリチウム需要の増加、人権問題に絡む紛争鉱物の調達の問題など、サステナビリティを取り巻く諸問題には原料調達リスクを加速させる側面があります。大量生産・大量消費型のリニアエコノミーでは、こうした原料調達リスクに対して十分に備えられなくなったのです。

2つめは、脱炭素への要求です。カーボンニュートラルの実現が国をあげての目標となる中で、単に生産工程における熱利用削減などだけでなく、「より省エネで使える」「より長持ちする」「よりリサイクルしやすい」材料を用い、それを「効率よく使う」といったさまざまな要素を考慮する必要が出てきました。その結果、以前に増して資源の最適利用、ひいてはサーキュラーエコノミーへの転換が求められるようになりました。

3つめは、消費者の変化です。若い世代を中心にサステナブルな製品・サービスを求める人が増える中で、こうした需要に応えるサービスデザインが必要になっています。そして4つめは、欧州の思惑・圧力です。欧州では世界に先駆けてサーキュラーエコノミーへの取り組みが進んでおり、日本もこうした動きに対応しなければいけなくなってきているのです。

「サーキュラーエコノミー先進国」である欧州・中国の取り組み

こうした背景のもと、主要国ではサーキュラーエコノミーへの転換を目指すさまざまな政策を打ち出しています。

EU(欧州連合)では、欧州委員会が2019年に「欧州グリーンディール」を発表しました。これは、本質的にはカーボンニュートラルを目指す政策ですが、そのための産業政策として設定された8つの優先課題のひとつとしてサーキュラーエコノミーが位置付けられています。翌年、サーキュラーエコノミーに関する基本方針「New Circular Economy Action Plan(新サーキュラーエコノミー・アクションプラン)」が発表されており、これに基づいて、蓄電池をサーキュラー型にも対応させていくという「バッテリー規則」など、各種規制案が検討されます。続いてエコデザインに関する新規則案も発表され、対象となるすべての製品に「デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)」の導入が求めています。

欧州と並行して、中国も速い動きを見せており、早期からサーキュラーエコノミーを国家戦略として重要視しています。2016年からの第13次5ヶ年計画では「循環型発展リーディングアクションプラン」という、欧州のサーキュラーエコノミーパッケージに近い内容の計画の策定がはじまりました。さらに2020年からの第14次5ヶ年計画では、資源循環産業の産業規模を102兆円に拡大していくとの方針も示されるなど、サーキュラーエコノミーへの積極的な取り組み姿勢が見て取れます。

一方日本では、事業者に対してサーキュラーエコノミーを前提としたビジネスモデルへの転換を促す「循環経済ビジョン2020」が発表されました。これに準拠した形でESG投資促進に向けた情報開示ガイダンスも公表され、サーキュラーエコノミーに取り組む企業に対して投融資を呼び込む仕組み作りが進んでいます。

日本でサーキュラーエコノミーを実現する「3つのアプローチ」

日本でサーキュラーエコノミーを実現させるためには、3つのアプローチが考えられます。1つめは、製品の製造や販売を担う動脈産業の変革です。バイオ・再生資源の使用や製造技術の向上によって、より循環しやすい製品を製造する「素材・製品のエコデザイン」と同時に、製造履歴や使用履歴を記録して製品のメンテナンスや回収・再利用を促し、素材・製品を最大限利用することを促す「ビジネスモデルのエコデザイン」を行うことが必要になるでしょう。

2つめは、使い終わった製品の回収・処理や再資源化を担う静脈産業の変革です。静脈産業でも動脈産業と同様に、デジタル技術の活用によって個々の処理プロセスを高度化させる必要があります。日本では静脈企業は地域密着型であるため、1社1社の「企業力」向上とともに、静脈産業全体の連携による「産業力」向上も必要不可欠だと考えます。

3つめは、消費者の行動変容です。サーキュラーエコノミーをうまく機能させるためには、消費者が社会基盤に進んで関わっていく必要があります。サステナビリティの高い製品を購入するとポイントがもらえるといった消費者にとってのインセンティブの創出や、購入製品のCO2排出量がわかるカーボンフットプリントなどのサステナビリティの可視化は、そのための有力なしかけになりえます。こうした仕掛けを活用して、消費行動やライフスタイルの転換を促していくことが大切です。

サーキュラーエコノミーへの転換は、一朝一夕では成しえません。サーキュラーエコノミーを前提としたビジネスモデルを早期に具現化し、サーキュラーエコノミー型社会基盤を構築していくことが必要です。デジタル技術の活用は、動脈産業・静脈産業・消費者という三者の相互連携を促し、3つのアプローチの効果を最大化するための鍵となるでしょう。

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E-mail: kouhou@nri.co.jp

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