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NRI トップ NRI JOURNAL 「ゴール志向」の技術獲得 、挑戦の先に見据える未来とは

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

「ゴール志向」の技術獲得 、挑戦の先に見据える未来とは

IT基盤技術戦略室 室長 小澤 良男

2023/03/30

AIやブロックチェーン、量子コンピュータなど日々進化する技術。NRIは社会課題解決や企業価値向上の手段として、こうした先進的な技術の獲得に注力しています。なぜ先進的な技術の獲得が必要なのか。未知の技術を安全・安心に実用化するまでには、どのようなことに注意すべきなのか。本テーマに詳しいIT基盤技術戦略室の小澤 良男に聞きました。

なぜ先進的な技術の獲得が必要なのか

AIやブロックチェーン、量子コンピュータなど新しく登場してくる技術は、 気候変動やフードロス、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、地域格差の拡大といった様々な社会課題の解決にも貢献していくものと考えています。

各企業の活動に目を向けると、先進的な技術はこれまでのサービスにはない新たな価値をもたらし、企業のイノベーションや経営改善をも支えます。こうした新たな価値の獲得は、顧客企業へのご提案においても強い効果を発揮します。

とはいえ「先進的な技術ならなんでも獲得しよう」という姿勢ではありません。なぜなら、技術は活かしてはじめて価値が出るものです。その技術は社会やお客様にどのような効果をもたらすのか、新しい付加価値を提供できるのか、こうしたゴールを常に意識しながら技術獲得を進めていくのがNRIのこだわりです。

技術獲得戦略のステップ

こうした考えを具体し、確実に先進技術を獲得していくために、毎年度、技術戦略を策定しています。技術戦略は大きく2つのステップで構成しています。

ステップ1ではどの領域に注力して技術獲得を行うのか、その領域を定義します。注力すべき技術領域の定義にあたっては、事業戦略と先進的な技術の両方を考慮に入れながら検討を進めていきます。

ステップ2は、注力すべき技術領域ごとに、どの程度の時間をかけて、どのような事項について技術獲得していくのかを改めて定義するためのステップになります。 「向こう3年ぐらいでこのような技術が登場してくるので、NRIとしてはこういう動きをしていきます」といった内容をロードマップとして描くのです。その技術がどのように世の中に浸透していくのか、という未来を推し量る“目利き”は非常に難しいものです。しかし、諸々の戦略や計画を作る過程を繰り返し経験していくことで “目利き”の精度を上げ、着実かつ体系的な技術獲得が可能になると考えています。

技術獲得の3つのフェーズ

技術獲得は3つのフェーズで構成されています。1つめのフェーズは「探索・調査」です。国内外の技術理論や方式、その実装を提供するベンダーやソリューションを持つスタートアップ企業などを探索・調査します。事業ニーズからは「〇〇事業では〇〇の機能をもつ必要があることから、そこに資する技術はないか」といった視点で探索にいきます。一方、技術シーズからは「この技術は〇〇の分野で、〇〇という価値を提供できるのではないか」という仮説を立てていきます。

2つめのフェーズは「評価・検証」です。探索・調査を通じて評価・検証すべきと判断した技術について、実際に手を動かすことによって要件を充足するか、想定通りの価値を提供できそうか評価・検証します。そして技術の成熟度や適用可能な分野について洞察を加えたり、実装ノウハウの蓄積を図ったりしていきます。

3つめのステップは「適用・応用」です。探索や評価を経て、なお「この技術であれば自信を持って提供できる」というものが見つかれば、いよいよ実用化を進めます。具体的には、実際に利用するにあたって要求されるであろう実装要件を設定し、それに耐えうる実装が行えるのか、また行うにはどのような工夫が必要となるかを検証していきます。また検証を通じて得られた判断ポイントをガイドラインとして整備し、手順書に落とし込むなどして、いつでも実装できる状態としていきます。

技術の未来を先駆ける

NRIが重視するのは、その技術が本当に安定して、社会やお客様の安全・安心に使えるものなのかどうかということが第一です。そのために技術を深く知り、実装の中で発生しうる落とし穴を確認する手間を惜しみません。常に実利用を想定した形で技術獲得を進めていることも、他社にない強みだと思います。

新しい技術の獲得は挑戦の連続であり、適用実績がないだけにそれ相応のリスクが伴います。社会インフラの提供を担う立場からすると、勝算のある技術だけを用いてシステムを構築したくなるものです。しかし社会課題解決や顧客企業の競争力強化、さらにその先にいるお客様への更なる価値提供を実現しようとすると、これまでにない技術を活用した挑戦が必要になってくると考えています。

私は、技術獲得に「失敗」はないと思っています。探索・調査や評価・検証を通じて、技術成熟度を把握し知見を得ることができます。また、適用先や適用方法を工夫することで限定的であっても効果を得ることはできると考えています。 日本では、なかなかイノベーションが生まれないと言われて久しいです。大きな跳躍は難しくても、こうした取り組みの実績を一つひとつ積み重ねると共に、社会全体の機運を高めることにも貢献していきたいと思います。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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