THE STAR(総合証券バックオフィスシステム)――先人の想いを受け継いだ継続と変革の50年
2024/09/30
インターネットや携帯・スマホアプリの進化、NISA(少額投資非課税制度)の登場などで投資が身近になっていますが、その背後では金融商品の売買や決済、投資家の資産管理、報告書の作成・配送など、さまざまな関連業務が行われています。そうしたバックオフィス業務を支えているのが、NRIの総合証券バックオフィスシステム「THE STAR」です。その「THE STAR」は2024年5月で、サービスを開始してから50周年を迎えました。技術革新や制度改革などの環境変化にどのように対応し、サービス提供を続けてきたのか、NRIの平松理生、林田樹人、竹中大祐、根本聡宏にSTARの歴史や開発への想いを聞きました。
時代を先取りしたビジネスモデル
THE STARは野村證券の系列会社9社向けに、野村證券のシステムを共同利用化し提供することからスタートしました。STAR-Ⅰと呼ばれる時代です。その後、幅広い顧客に展開し、システム利用料をもとにシステム改修や運用を担う、今で言うSaaS(Software as a Service)型プラットフォームへと発展。現在は、大手・準大手・中堅・地場・ネット専業の証券会社など80社以上に導入され、国内の個人証券口座管理の約5割を担っています。
サービスが開始された1970~80年代は電話、手書き伝票、専用端末を使って証券業務が行われており、STAR-ⅠとⅡはそれに対応したものでした。1990年代にWindows搭載のパソコンが普及し、3世代目のSTAR-Ⅲで画面や操作性が改善されました。その後、金融ビッグバンによる手数料の自由化、インターネットの普及によるネット証券の台頭や決済制度改革によるリアルタイム処理への対応に加え、銀行の統廃合、証券会社の合併など業界再編が進みました。その結果、ホストコンピューターで集中管理し、バッチベースで処理する旧来型の仕組みでは対応しきれない部分が増え、競合他社のサービスに劣後する状況も出始めました。そこでNRIは2000年にこれまでにない大規模投資を行い、STAR-Ⅳをゼロから内製する決断に踏み切ったのです。
「証券の共同システム事業は、会社にとって大きな柱であり、野村證券のコンピュータ部門がルーツであるNRIにとって、祖業に近い事業だという自負もありました。このサービスで負けるわけにはいかない、と経営陣も社員も奮起しました」と、平松理生は当時の英断に思いを馳せます。
リスクをとって非連続型の開発に挑む
STAR-ⅠからⅢまでは改善型リニューアルでしたが、STAR-Ⅳの開発はお手本のない非連続的なチャレンジとなりました。「演算処理を1カ所で行う集中密結合から分散疎結合にするコンセプトで、ホスト基盤からサーバー基盤へと変えました。当時としては画期的なモデルでした」と、根本聡宏は振り返ります。
入力結果が翌日までわからないバッチ処理ではなく、徹底したリアル処理にもこだわりました。「結果としてシステムは良くなったのですが、翌日の作業が当日にできるので、業務が大幅に変わります。お客様の混乱を招くことは必至だったため、NRIスタッフが各社に張り付いて支援し、1年かけて徐々に移行を進めました」と、林田樹人は当時の苦労を語ります。
STAR-Ⅳに進化して以降、STAR-Ⅲの20社からユーザー企業が大幅に増えた理由を平松は次のように分析しています。「ヒューマンテクノロジーを考慮した入力画面など、エンジニア魂で高い品質を目指したこと。また、頻繁に行われる制度改正にきちんと対応しつつ、新しい機能を拡張してお客様のニーズに応え続けていることが大きな要因だと思います。お客様が増えるたびに、新機能を載せて、また頑張ってお客様を獲得し、さらに投資をして機能を載せていきました。STARはお客様に大きくしていただいたと感じています」
「証券業務は一定の制度要件があるので、業務フローは標準化できますが、さらに差別化要素を加えたいというお客様もいます。公約数を押さえて標準化しつつ、お客様によっていろいろな使い方ができる自由度のあるシステムを目指してきました」と、林田はSTARの特徴を挙げます。
「通常のSI(システムインテグレーション)の業務はお客様から依頼に沿って進めますが、THE STARは自主事業なので、世の中の新技術を吸収しながら、お客様に言われるより先に自発的にいろいろな試みができます」と、根本はSIとの開発姿勢の違いを指摘します。
社会インフラとしての責務を果たす
そうした自発的な取り組みの1例が、災害復旧バックアップサービスの「STAR-Ⅳ DR(ディザスターリカバリー)」です。大規模な自然災害が激増する中、BCP(事業継続計画)の観点から有事にも止まらないシステムにしようと、2014年に大阪に活動拠点を、2016年に同じく大阪にDRサイトを新設しました。また、東京と大阪でシステムを二重化しただけでなく、顧客対応や開発などができる人材の採用や育成も行っています。
「ミッションクリティカルなシステムにおいて、我々が堅持する“止まらない”というのは最大の価値です。他方、人口減少や高齢化により、証券業界ではバックオフィスの担い手不足がすでに顕在化しています。証券業の垣根が低くなり、お客様の顔ぶれ、業務内容、ビジネス自体も大きく変わろうとしています。お客様に寄り添いながら、システムをさらに効率化して人手不足を軽減させる、オペレーション自体をNRIが支援するなど、社会課題の解決に資するサービスはまだまだ可能です。そういう包括的なサービスを目指していければと思っています」と、竹中大祐は展望します。
「お客様が増えていく中で、社会インフラとしての責務を強く意識するようになりました。だからこそ、お客様とNRI、また、お客様同士の横のつながりも大切にして、この業界をさらに発展させることに貢献したいです。私たちは、今後も、自主的に情報を取り、改善し、制度改正にも着実に対応し、安心してご利用いただけるサービスにしていくつもりです。50年繋げてきた歴史のバトンを次の世代に渡せたらと思います」と、林田は今後のさらなる成長に気持ちを新たにしていました。
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