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再び動き出す証券業界の革新

2014/05/20

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証券業界の創新(革新あるいはイノベーション)が再び動き出した。

国務院は5月8日付で『資本市場の健全な発展の更なる促進に関する若干の意見』(「新9条意見」)を発表した。これを受け、証券監督管理委員会(証監会)は5月13日付で、より具体的な『証券経営機関の革新発展の更なる促進に関する意見』を発表、続いて16日には毎年この時期に開かれる「証券会社革新大会」が開催された。

証券市場の改革を振り返ると、2004年に『資本市場の改革開放と安定的発展の推進に関する若干の意見』(旧9条意見)が発表された。これは、証券市場全体(上場会社、投資家、市場インフラ、対外開放、非流通株改革等)に関わる改革の青写真であり、その後の証券市場の改革は旧9条意見に沿って行われた。そして2010年頃までには、旧9条意見で提起された諸項目は少なくとも着手された。

その後、2012年5月の「創新大会」で、証監会は証券会社が驚くほどの規制緩和を打ち出した。しかし、その後、インサイダー取引等の不祥事が発生し、2013年の「創新大会」ではリスク重視が前面に打ち出されたこともあり、革新の動きはスピードダウンしていた。証券会社が急な規制緩和に対して消化不良気味になったこともある。

そうした中で、今回、新9条意見と証監会の意見が発表された。2012年の規制緩和を含め、これら3つに一貫している方針は、証券会社の業務の多様化である。ブローカレッジ業務への依存が大きく、業績が株式相場に左右されやすい経営体質からの脱却が叫ばれて久しいことが背景にある。

新9条意見を見ると、冒頭の「全体要求」を除く8つの意見のうち半分は、「多層的な株式市場の発展」・「債券市場の発展の規範化」・「私募市場の育成」・「先物市場の構築推進」と各種市場の発展・育成に関するものである。足元では、株式発行の登録制改革が注目度が高い。

「証券先物サービス業の競争力引上げ」では、業務の参入制限緩和、商品の自主開発等のイノベーションの促進、インターネット業務の発展等が挙げられている。「資本市場の対外開放」では、対内外証券投資の促進、証券・先物業界の対外開放等がある。「金融リスクの防止・解消」「資本市場の良好な発展環境」は、リスク防止・投資家保護等についてである。なお、「全体的要求」では、以上の内容を含む多層的な資本市場体系構築のメドを2020年としており、新9条意見が、今後5~6年を見通した改革のプランであることがわかる。

証監会の意見は、3つの主要任務、計15項目からなる。主要任務は、(1)現代的な投資銀行の構築、(2)業務商品の革新の支援、(3)監督管理方式の転換の推進である。

(1)では、「国際的競争力とブランド影響力・システム上重要な現代的投資銀行の形成を促進する」とあり、言い方は悪いが「株屋」からの脱却が目標であることが確認できる。

(2)では、具体的に、アセットマネジメントにおける商品の多様化(不動産投資信託基金REITsの研究を含む)、固定収益・外貨・国際商品業務、資産証券化業務、企業に対する融資(レポ等による)業務、デリバティブ業務、店頭取引業務、私募商品の開発等、様々な業務が今後も拡大・導入されることがわかる。これは、2012年の創新大会の流れを引き継いでいる。

(3)では、規制の重点が、これまでの事前審査から事中・事後監督に移るとしている。また、法律で認可事項と定められているもの以外では、実質的な認可制を実施することを禁止する。一部で噂のあったネガティブリストによる規制までは踏み込まなかったものの、今後、さらに規制が緩和され、逆に市場の自律が求められることが予想される。また、外資の参入・ライセンスの条件緩和、他の金融機関の参入への支持も打ち出されている。

今回の一連の発表により、証券業界の規制緩和の方向に変化のないことが確認され、またこれを機に再び業務革新等の動きが加速することが期待される。

執筆者情報

  • 神宮健

    神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    金融デジタルビジネスリサーチ部

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