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コラム 神宮健のFocus on 中国金融経済

中国における最近の金融・財政政策について

2015/06/02

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中国景気が鈍化する中で、過去半年間、様々なマクロ調整政策が打たれている。ここでは、これらの政策の意図と特徴を探ることにする。

過去半年余りの主なマクロ調整政策は以下の通りである。

(金融政策)
・2014年11月22日利下げ(下げ幅は1年物貸出金利0.4%、同預金金利0.25%)
・2015年2月5日預金準備率引下げ(0.5%引下げ。零細企業向け貸出の割合が一定基準を超えた都市商業銀行・農村商業銀行は1.0%引下げ。中国農業発展銀行は4.5%引下げ
・3月1日利下げ(貸出・預金金利とも0.25%)
・4月20日預金準備率引下げ(1.0%引下げ。農業・零細企業向け貸出の優遇措置有り)
・5月11日利下げ(貸出・預金金利とも0.25%)
(財政面の政策)
・2014年10月「地方性債務の管理強化に関する意見」(43号文)発表
・2015年3月(全人代)2015年の地方債の新規発行6000億元、借換債1兆元(上限)
・5月8日既存地方債の債権者に対する地方債の割当発行についての政策(102号文)
・5月25日発展改革委員会、PPP(官民協力モデル)のプロジェクトデータベース発表
この間、2015年4月12日には政策性銀行の改革深化案の発表があった。

中国の経済成長が鈍化する中、中国政府としては不動産部門の調整が経済全体に広がって悪循環に陥らないよう一定の経済成長率は保ちたいところである。ここで、金融政策の有効性の確保が重要となる。また、政策の即効性の点では、やはり固定資産投資、特にインフラ投資に頼らざるを得ず、インフラ投資の主体である地方政府の財源確保もポイントとなる。

「定向」緩和を続ける金融政策

金融政策を見ると、数度にわたる利下げは、人民銀行発表の額面通り、企業の資金調達コスト引下げが主目的と見られる。生産者物価は、前年同月比ベースでは38月間連続で低下し、今年4月も4.6%下落している。期待インフレ率もマイナスになっていると見られ、このため実質金利が高くなっていることから、利下げには実質金利引下げの狙いがある。

一方、預金準備率引下げの背景には、テクニカルな要因がある。最近、人民元為替レートの水準についてIMFが過小評価でないとの見方を示したことに表れているように、人民元先高期待が弱まる中で資本流出が続いている。その結果、中国の外貨準備は昨年後半と今年の第1四半期に減少した。人民銀行は、外貨準備増加に伴う市中への資金供給ルート(人民銀行の外貨購入とその見返りとしての人民元の放出)が使えなくなったため、預金準備率の引上げによって資金を供給している。

預金準備率操作等を通してマクロレベルで適切な量の流動性を供給しても、中国金融の長年の問題として、中小企業や農業関連に資金が回り難いことがある。このため、これらの分野への貸出が多い銀行について預金準備率引下げ幅を優遇するといった措置を採らざるを得ない。昨年以降のターゲットを絞ったいわゆる「定向」緩和が依然として継続している。

リスク軽減と新たな方式を模索する財政政策

財政政策については、第一に、マクロレベルでの地方債務リスクを軽減する必要がある。

国務院の「地方性債務の管理強化に関する意見」(43号、2014年10月発表)は、(1)地方政府は地方債により資金調達できるようにする一方、(2)地方政府が企業を通して借入れることを禁止し、また、融資平台も新たに政府債務を増やしてはならないとした。これまで実態が不明であった地方債務を予算管理に含め透明化する意図である。また、(3)既存債務については、地方債発行により借換えるとした。金利負担の軽減が意図される。

借換債が市中で消化し難いとの懸念がある中で、既存債務(銀行貸出、融資平台発行の都市開発債)の債権者に地方政府が直接、借換債を割当発行できるようになった。また、条件に合う地方債を、人民銀行の商業銀行抵当貸出の担保品に含めるといった消化促進と見られる措置も採られている(5月102号文)。

第二に、中国政府は、2008~09年の4兆元の超大型景気刺激策の後遺症(不動産バブル)が残る中で、マクロレベルの直接的な財政出動に慎重である。地方政府レベルでは、新規の地方債発行は6000億元であり、不動産不況で土地財政も期待できないため、以前に比べ財源不足の感は否めない(従来は、融資平台の都市開発債だけでも年間1兆元以上発行されていたと見られる)。

43号文の地方政府融資平台による新たな借入れ禁止等の措置は厳しすぎるため、当初から実行が難しいのではと思われていたが、最近になって実態的に緩和され始めたと報じられている。

新たな資金源が注目されるが、43号文で促進するとされたPPP(官民協力モデル)は、これまで動きが鈍く、5月25日に発展改革委員会がようやくプロジェクトデータベース(計1043プロジェクト、投資総額1.97兆元)を発表したところであり、効果は未知数である。

そうした中で、政策性銀行の役割が、インフラ建設等で高まると予想される。4月の政策性銀行の改革深化案(4月12日)では、開発銀行は開発性金融機関、輸出入銀行・農業発展銀行は政策性金融機関と位置づけられ、一時期目指した商業化方針は後退した。地方債発行が議論されていた時期から、経済発展が遅れている地方政府の地方債発行が難しいことが予想されたため、政策性銀行の役割拡大の声があった。また、政策性銀行への増資(国家開発銀行320億ドル、輸出入銀行300億ドル、農業発展銀行1500億元)がなされたとも報道されている。

加えて、人民銀行は、国家開発銀行向けに昨年実施したと言われるPSL(Pledged Supplementary Lending、担保補充貸出)を今年さらに利用するのではないかとの予想もある。PSLは人民銀行の金融機関向け中長期の担保貸出で、インフラ建設等に利用されるものである。

いずれにしても政策性銀行の利用は、金融機関を通じて財政政策の目的を達成するものと位置づけられる。

中国は「新常態」の下で、経済発展モデルの転換や市場メカニズムの発揮を目指しているが、市場メカニズムが未だ整備されない中で、足元では、「定向」緩和にしても政策性銀行の利用にしても行政色の強い経済運営に頼らざるを得ない状況が現れている。

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